【COP25 vol.3】Final Call? Sayonara Coal 再び

気候変動2024.7.10

  COPで気候変動に対する取り組みが議論される中、日本の石炭火力支援に抗議する声が再び会場の外で響きました。気候危機の影響を受ける途上国のメンバーを中心に、日本の石炭支援はこれまでもCOPの会場やその他の主要な国際会議の場等で批判されてきました。

 抗議に参加した途上国メンバーの一人は「このCOPが、私たちが“Sayonara coal”と声を上げる最後のCOPになるだろう」とコメント。日本に対する期待というよりは、もう後はない、このまま石炭を推進し続ければ、日本も気候変動によりさらなる影響を受けるだろうことを思ってのコメントでした。

 実際、日本にも気候危機が迫っています。今年も多くの災害が発生し、尊い命が失われました。

 そんな中、日本の梶山経産大臣は石炭温存を明言。「脱石炭」は国際的な常識となってきている中、この発言を受けCOP初日に日本は“化石賞”(気候変動に後ろ向きな国に対し、国際的な気候変動NGOのネットワークClimate Action Network,CANから贈られる賞)を受賞しています。

 日本の石炭支援が批判される理由は気候変動だけではありません。石炭火力発電所の開発が進む地元では、土地収奪や反対派住民のレッテル貼、ハラスメント、生計手段の喪失など様々な問題が報告されています

 日本の国際協力銀行(JBIC)による公的資金支援が行われているインドネシアのチレボン石炭火力発電事業では、地元で住民による環境許認可に係る法廷闘争が続いているなか、許認可発行に係る贈収賄事件が浮上しています。建設を請負う韓国・現代建設の元幹部が地元の前県知事に賄賂を渡したとして、インドネシアの捜査機関が両名をすでに容疑者認定しました。また、これに絡み、丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資する事業者の元取締役社長など上級幹部2名も、同贈収賄事件に絡んで、海外渡航禁止措置を受けています。 

 これまで、同事業の影響を受ける住民は、生計手段の喪失や健康被害を懸念し、同事業への融資を続けるJBICに異議申立てを行なってきました。また今般、JBICとともに融資を続ける3メガ銀行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行)が、同事業において国際CSR規範の66項目を遵守していないことが、日本NGO 「Fair Finance Guide Japan」が新しく発表した調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」でも明らかになっています。

 現在、日本が関わるものとしては、ベトナムで2つの石炭火力発電所(ブンアン2石炭火力発電所、ビンタン3石炭火力発電所)の計画が進んでいます。さらにインドネシアでは、インドラマユ石炭火力発電所が国際協力機構(JICA)の支援で進んでいます。

 フィリピンの市民団Philippines Movement for Climate JusticeのIan Riveraは、

「これまでも「さよなら石炭!」と声を上げてきたにも関わらず、日本政府は過去の過ちから学ぼうとしていない。台風は威力を増し、フィリピンだけでなく、日本、そしてアジア各国に甚大な被害を及ぼしている。“高効率石炭”を売り込み、日本は気候変動対策よりも利益を優先している。ただちにやめるべきだ。世界有数の経済大国としてリソースがあるのだから、日本はクリーンエネルギー中心社会へのシフトを牽引して欲しい。まずは化石燃料支援を止めることから始めて欲しい。」とコメント。

気候変動は、特に途上国や貧しい地域では、すでに生存の問題に差し掛かっています。交渉の場でも、気候変動への適応の限界を迎え生じ始めている損失と被害について議論が行われています。損失と被害は往々にして経済的損失として数値で表されがちですが、貧しい国々ではまさに日々の生存の問題です。生計手段や文化の喪失でもあります。

多くの国々が気候変動の緊急性と重要性を理解し、脱石炭を進めています。

日本には一刻も早い脱石炭と、社会の脱炭素化のためのロードマップづくりが求められます。(深草亜悠美・波多江秀枝)

 

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