【COP25 vol.1】COP25マドリード開幕 - 気候危機を乗り越えるために今システムチェンジを

気候変動2024.7.10

12月2日から13日までの2週間にわたり、スペイン・マドリードで国連気候変動枠組条約締結国会議(COP25)が開かれます。今回の会議の注目すべき点、市民社会の視点についてまとめました。

声を上げる若者たち

2018年に続き2019年も、世界各地で猛暑や大雨・洪水が起こっています。フランスやパキスタンでは記録的な熱波、アマゾンやインドネシアでの森林火災、日本でも昨年の西日本豪雨に引き続き、今年10月は連続して上陸した巨大台風によって大きな被害がありました。年々脅威を増す気候変動はもはや「気候危機」と表現されています。にもかかわらず、なぜ大人たちはすぐに行動しないのか。そう訴え、2018年8月にスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、たった一人でスウェーデン国会前で座り込みを始めました。その行動は世界中の若者を動かし「未来のための金曜日(Fridays For Future)」と呼ばれるムーブメントに発展しています。

日本でも若者たちが声をあげ、これまでに4回「気候マーチ」を開催。9月と11月のグローバルアクションデーには日本全国各地でマーチやスタンディングなどのアクションが行われました。

やはり一番大事な目標の引き上げと行動

これ以上の気候危機を防ぐためには、今すぐ行動することが必要です。私たちに残された時間は残念ながらあまり長くはありません。

パリ協定のもとで、各国はNDC(National Determined Contribution)とよばれる国別の目標を提出することになっています。11月末時点で184 カ国が国連事務局にそれぞれの国の目標を提出しています。しかし各国が提出した計画をそのまま実行すると、今世紀末に3℃以上温度上昇してしまうと計算されています。つまり、各国がNDCを引き上げなければ、1.5℃目標は達成できません。そのため、各国は目標を引き上げて再提出することが求められています。

昨年のCOP24は、IPCCが1.5℃レポートを発表した直後に開かれたこともあり、気候変動への緊急性への認識が高まり、各国が目標を強化することが期待されていました。しかし、COP24での先進国による抜本的な目標の引き上げはみられませんでした。

今年9月にはアントニオ・グレーテス国連事務総長の呼びかけにより国連気候アクションサミットが開催され、気候変動対策への機運が盛り上げられましたが、日本は目標を引き上げていません。COP25では、日本を含む先進国による目標の引き上げと具体的な行動をとることが強く求められます。

石炭火力発電は最も温室効果ガスを排出する発電方法であることから、すでに少なくない数の国々が石炭火力発電事業からの撤退を表明しています。また、パリ協定の1.5℃目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許されず、既存のものも、順次閉鎖していく必要があります。そんな中、日本は国内外で石炭火力発電を推進し、その姿勢が国際的にも批判されています。行動強化の観点からも、日本には国内外で進めている石炭火力発電所の新設中止・撤退がもとめられます。

市場メカニズムの動向

先進国にとって注目されるのが、市場メカニズム(パリ協定6条)のルールづくりです。気候変動における国際市場メカニズムとは、削減努力をして得られた削減分を排出権やクレジットとして金銭的な価値を付加し、市場で売買するメカニズムです。6条のルールづくりは、昨年のルールブックの議論で積み残された議題の一つでした。

いくつかある論点としては、例えば、排出量を「排出権を売却した国(削減努力を行なった国)」と「排出量を買い取った国(買い取って排出分を相殺した国)」の両方で削減としてカウントしてしまうと、重複して削減量をカウントしてしまうことになります。これを避けるため、調整を行う方法やどの範囲で調整を行うのかなどが議論になっています。

また、これまでに発生しているクレジットを2020年以降にも使えるようにしたいという国も存在します。これまでに発生しているクレジットは数十億トン分に相当し、これを許せばさらなる大型排出が可能になってしまいます。

市場メカニズムは結局、排出削減努力を行った分どこか別のところでの排出を許してしまうため、絶対的な削減が達成されるわけではありません。

また、森林保全を行い、二酸化炭素吸収源を確保した分に見合う金銭的付加価値をつけるというREDD+というスキームも行われていますが、そのために先住民族が住む土地の囲い込みが発生するなどの問題も発生しています

上記等の理由から、FoEグループはこれまでも国際市場メカニズムに反対しています

日々大きくなる損失と被害

別の注目議題が、「損失と被害」です。特に途上国で深刻になっている気候変動により生じた損失と被害について、COP19でワルシャワ国際メカニズム(Warsaw International Mechanism, WIM)とよばれるメカニズムが設立されました。

国連気候変動枠組条約のもとには、緩和(温室効果ガスの排出量を削減すること)や適応(すでに起きつつある気候変動に対応していくこと)のための資金メカニズムはありますが、損失と被害へのサポートや支援メカニズムがありません。ワルシャワ国際メカニズムはこれまで、損失と被害に関する知見の蓄積やその共有、気候変動に起因する人口移動(Displacement)に関する助言などを行うなど、小規模な活動にとどまっていましたが、具体的な損失と被害に対するアクションや資金支援についても議論が求められます。

突然変更された開催地

もともとCOP25は南米チリで開催される予定でした。しかし、首都サンティアゴでチリ現政権に対する抗議行動が続いていることを理由に、チリでの開催は急遽中止されました。しかし、即座にスペインが代替地として名乗りでたことから、議長国はチリのまま、開催地をマドリードに移し開催されることになりました。

サンティアゴではすでに市民社会サミットも計画されていました。開催1ヶ月前の突然の開催地変更は、参加を予定していた市民参加者、経済的に制約の大きい途上国の参加者に追加的なコストと手間を強いることになりました。

また、一昨年のCOP23はフィジーを議長国としてドイツのボンで開催され、昨年のCOP24はポーランドで開催されました。来年はグラスゴーで開催することが決まっており、4年連続でヨーロッパでCOPが開催されることになります。COPの開催地は毎年大陸持ち回りで、多様な地域の市民社会の参加を確保してきましたが、物価の高いヨーロッパでの開催は、途上国の参加者にさらなる経済的負担を強いることになります。

私たちのメッセージ:FoEグループとして

FoEグループが考える気候危機への解決策は、多国籍企業等の利益や経済成長を優先する社会から、自然やそれとともに生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会への抜本的な変革(System Change)です。

化石燃料事業、環境破壊を引き起こす原発や大規模バイオマス発電等の誤った気候変動対策、カーボンオフセットなど市場原理を利用した「解決策」、損失と被害への資金支援としての保険の導入は、気候変動対策にならないだけではなく、大企業や多国籍企業の力を強め、さらなる経済的な格差の拡大につながります。

これ以上の気候危機を防ぐためには、エネルギーの自治権を人々に取り戻し、経済活動においても遠くの資源を使うのではなく身近な資源を活用すること、森林を奪うのではなく先住民族の知恵による森林管理(コミュニティフォレストマネジメント)や森林農業(アグロエコロジー)を見直すこと、そして、気候変動への責任の公平性に基づいた目標の設定と利益に左右されない公的資金による途上国への支援することが必要です。

社会の公平性を取り戻すことが気候危機対策につながり、また、適切な気候危機対策は公平な社会の実現につながります。社会の公平性と気候危機対策はお互いに切り離せない関係です。この”Climate Justice for ALL”というFoE グループのメッセージを、このCOP25期間を通じ、会場内外で強く訴えていきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

 

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