【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い
11月から蘇我石炭火力を考えるの会(以下、蘇我の会)の新メンバーとなった品田知美さん(以下、品田さん)。
品田さんのご家族は、大のサッカーファミリーだそうで、蘇我の石炭火力発電所建設予定地真横に立地するサッカースタジアムもよく訪れるそうです。そんな中、同サッカースタジアムのすぐ隣に石炭火力発電所ができると知り、いてもたってもいられなくなったとのこと。
サッカースタジアムの真横に石炭火力発電所が建てられようとする状況について、千葉に住む一人のサッカーファンとしてどのように感じるのか、お話しを伺いました。
(品田さん。JFEアクションにて)
“この蘇我の石炭火力発電所の建設計画は、時々寄付をしている環境団体さんの投稿で知りました。
私の住んでいるところは海沿いの空気のきれいなところなのですが、蘇我はいつも通るたびに空気汚れているなと思ったり、サッカー観戦に来た時には、サッカー選手はこんなところで練習したり試合したりしていて大丈夫かなあと心配していたんですね。そんなときに、今回の新しく石炭火力発電所ができるということを知って。これは絶対に反対しないと、と思ったんです。
色々調べていく中で、PM2.5の飛散するシミュレーションを見つけて、それをみたんです。そしたら、私の住んでいるところまでPM2.5がちゃんと飛んできてしまうんですね。自然が好きで、空気のきれいなところに住んでいるのに、ここまで空気が汚れてしまうのかって、思いました。そういう風に思う方は、蘇我の方だけでなくて、私みたいにたまたま知った人でもたくさんいると思うんですよ。もう少し遠くの人も巻き込んで、ぜひ積極的にやりたい。だって、遠くに住んでいても被害を受けるということは、この石炭火力発電所の関係者なんです。だから、私もその一人だと思って、もうこれは反対しようと思ってきました。”
(蘇我、袖ヶ浦、横須賀で建設が予定されている石炭火力発電所が稼働した場合のPM2.5の飛散シミュレーション)
サッカーが大好きという品田さん。この計画を知った時の気持ちを教えてくださいました。
“私の家族はサッカーファミリーで、本当にサッカーが好きなんです。
先日ちょうど建設計画のお話をきく機会があって、具体的な予定地を聞いたら本当に真横で。かえってショックで、眠れなくなるくらいショックで。地図を見たらそこなの?みたいな。本当に横だったのでがっくりきちゃって。
蘇我の発電所の建設予定地のすぐ横に、すごく大きなスタジアムがあるんですけど、その横にもいっぱい小さなスタジアムがあって、そこではいつもお子さんたちが、千葉中のお子さんたちが集まって、サッカーやっているところなんですね。そこにね、また空気を汚してしまうようなものをつくるというのは、本当に健康の被害を増やすだけだと思うんです。サッカーが好きな人は、このあたりには本当に多いと思うんです。だからこそ、この計画を知っている人を増やしていかないとまずいなって思っています。”
(建設予定地周辺図)
この計画を知っている人を増やしていきたいと、繰り返し語る品田さん。品田さんの考える今後の告知戦略をお聞きしたら、サッカー家族ならではのアイデアが。
“今、サッカーやっているお子さんは本当に多いので、小学生のサッカークラブに一斉メールとか、一斉チラシとか送ることが効果的なんじゃないかと思っています。若いお母さんたちだって子どもの健康にはすごく気を使うと思うんですね。
私は仕事上、環境問題が研究対象なので、石炭火力発電は温室効果ガスを排出して気候変動の問題を悪化させることや、石炭火力発電をつくっているのは先進国で日本くらいしかないのも知っているけれど、これは、健康も本当に大事な問題なんです。私自身、少し喘息気味というのもあるので、自分の健康も不安だけれど、実際、娘や息子の友達がこのスタジアムでプレーしているんです。選手だけじゃないんです。だから私が反対しないと。選手たちってなかなかそういう活動ってしにくいと思うんですよね。だからやっぱり、できる立場にいる自由な人間がやった方がいいのかなって。私はそういうことを言っても別に仕事上困ったりはしないので、私が代わりに言わないと、彼らの健康を守れないから。”
筆者が蘇我の石炭火力発電所の建設予定地の視察・インタビューに訪問したのは、ちょうど小学校の下校の時間でした。道々では多くの小学生が友人らと共に自宅へと向かい、また、これからサッカーの練習に向かうであろうお子さんの姿も多く見かけました。
自分の子ども、友人がサッカーをする場所の空気が汚れてしまったら?また、自分の応援するサッカー選手が空気の汚れのせいで病気になってしまったら?
サッカーに限りません。野球であっても、テニスであっても、サイクリングであっても、自分の好きなスポーツをする場所の環境・空気が汚れてしまったら?
一度、自分の身近なものに置き換えて、考えてみませんか?
(高橋英恵)
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