気候変動における汚染者負担の原則「フェアシェア(公平な分担)」を考える

気候変動2024.7.10

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COP24の期間中、気候変動の排出目標に関する市民社会レビュー「パリ協定以降 – 格差、公平な分担、気候危機」(以下、市民社会レビュー)が発表されました。「市民社会レビュー」は研究者やNGOらのグループによって2015年から毎年発行されている研究レポートです。公平性の観点から、過去に遡って気候変動へどれだけ影響を及ぼしてきたかという歴史的責任を鑑みて、各国がどれだけ温室効果ガスの削減責任を負うべきなのかを計算したものです。今年の市民社会レビューは国別の削減責任を計算するだけでなく、それぞれの国の中でも貧富の格差が広がっていることも考慮に入れたレポートになっています。

10月に発表されたIPCCの1.5度特別報告書では、平均気温の上昇が2度の場合と1.5度の場合では気温上昇による被害に非常に大きな差があることがわかっています。同時に、必要な措置を行なえば1.5度に抑えることは可能であるということもわかっています。1.5度以下に抑えるためには「エネルギー、土地利用、都市、インフラ、そして工業システムを迅速に変えていく」必要があります。

地球規模で気候変動への責任を考えると、先進国により大きな責任があり、また先進国にはより多くの責任を果たすための金銭的・技術的能力があるのは明らかです。下のグラフは、世界の人口を収入で低い方から10等分して縦軸にとり、各階層の1人当たりの収入を横軸で表したものです(「貧困のシャンパングラス」)。最富裕層のトップ10%が、世界の富の50%を得ています。一方、たった10%の富が、世界人口の最下位50%に、そして40%の「中間層」が残り40%を占めています。中間層といっても、実際は非常に貧しいのが現状です。またこの10%の富裕層が、世界の温室効果ガスの50%を排出しています。
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レポートによると、温室効果ガスの歴史的排出量にもとづいて排出削減量を計算すると、先進国や一部の新興国は現在排出している以上の削減が必要になります。つまり、途上国における削減を支援しない限り、削減量における「公平な分担」を全うすることができません。すなわち先進国である日本は、国内排出ゼロを達成し、同時に途上国への削減支援(および適応、損失と被害への支援)を行わなくてはいけません。

先進国に歴史的責任がある一方、先進国内での貧困の格差も深刻になってきました。レポートは、国際的なレベルでの国家間の公平性を求める一方、気候変動対策のために必要な社会変革のあり方として、貧困層や、化石燃料企業の労働者などが必要以上にコストを支払うことなく、むしろ貧困層や労働者、脆弱なコミュニティーがトレーニングや社会的保護を得られる形で変革を起こしていくべきだと結論づけています。

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