事業者はもっと住民と真摯に向き合い、説明を-蘇我火力発電所に関する住民説明会

脱化石燃料2024.7.24

インターンの富塚です。先日、千葉市で計画されている蘇我火力発電所に関する事業者による説明会が開かれ、参加しました。その様子を報告します。

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千葉市中央区蘇我地区に建設が予定されている蘇我火力発電所。環境への影響調査の方法が記された環境影響評価方法書が1月22日に提出された。この方法書は3月8日まで公開されているが450ページ以上あり、内容も大変専門的で理解するのが困難だ。このことも踏まえ、事業者である千葉パワー株式会社による住民説明会が2月7、9、10日と蘇我と市原で行われた。地域住民や数多くの環境団体は近辺への影響、そして地球温暖化への影響を懸念し、建設計画に強く反対している。

新しく建設予定の石炭火力発電所は、石炭と副生ガスよる超々臨界圧発電方式で出力約107万kWになると見込まれている。千葉パワーは建設を2020年開始とし、24年からの稼働を目指している。

千葉パワーは中国電力とJFE スチールが共同出資をして昨年4月に立ち上げられた。(蘇我火力発電所が共同会社として初のプロジェクトとなるということだが、説明会は淡々と慣れた様子で行われた。)今回の説明会は「環境影響評価方法書のあらまし」ということで、建設によって懸念される周辺地域や環境への悪影響をどのように調べ、対策をするかという説明が主だった。環境調査は昨年5月に始まり、今年4月まで行われるとのこと。

私が参加した2月7日の説明会には、地域住民、環境団体、そして報道関係者などおよそ80名が参加した。説明会は千葉パワー幹部であるJFEスチール東日本副社長などが登壇した。環境影響評価手続きやその方法についての説明が約45分間あったのちに30分の休憩を経て質疑応答に入ったが、参加者には休憩時間中前半の15分と短い質問提出の時間が与えられた。質問用紙につき一問ずつとされていたため、十数枚の用紙に手を休めることなく意見する人も多くいたが、すべての意見を書き出すには全く時間が足りなかった様子だった。また、休憩時間後半の15分は事業者の解答準備の時間として設けられたため、質問にその場で答えることができないことにも疑問と不安が募った。第2、3回の説明会ではこの進行方針の見直しを参加者は要求したが、事業者側は全く対応しなかった。

質問については「そもそもなぜ」といった内容のものが多かった。なぜ石炭火力発電所なのか。そしてなぜ蘇我なのか。住民の健康被害や環境破壊が懸念される中で、どうしてこのような計画にいたったのか。JFE スチール東日本製鉄所が所有する建設予定地にはすでに火力発電所に必要な設備がもう備わっている上に冷却に必要とされる海水も豊富にあるという。しかし説明によると発電事業で使用された海水は7度ほど温度が上昇して海に戻されるという。これは国が定めた基準値に順ずるとしているが、温度の上がった海水が、大量に海へ放出された時の生物などへの影響、そして東京湾岸の他の火力発電所との複合的な影響も参加者の心配材料だった。

また千葉パワーは国の「エネルギー基本計画」に従い、日本は島国でありながら資源も少なく電力の輸入も難しいため、石炭火力発電所は必要なのだと説明。安価で安定した石炭火力発電は地政学的にも経済的にもリスクが低く、将来的にも地元の雇用増大、地域への納税などんメリットを示したが、パリ協定をはじめとした各国の脱石炭やCO2削減目標、そして国内でももうすでに電力は十分に足りていることなどを考慮すると、事業者が経済的利益と海外輸出を目論んでいることは明確だろう。

もう一つの論点は周囲への環境被害だ。粉塵や煤塵、そして二酸化硫黄や二酸化窒素をはじめとした大気汚染物質への対策についての質問も多く寄せられた。蘇我では過去にも公害訴訟がたたかわれた背景もあり、今も地域の大気の状態は良いものであるとは言えない。しかし千葉パワーはこのような環境被害拡大への懸念があるにもかかわらず、石炭粉塵の影響は全く環境影響評価の項目としていない。これは、すべて密閉容器内で処理をするためとし、その他の大気汚染物質に関しては散水や排煙脱硝装置などの設備による対策を進めると説明した。事業者側は最新鋭の技術を駆使し、被害を最小に抑える努力をすると繰り返したが、実際、磯子火力新2号機と比べると大気汚染物質量の比較によって最善策をとっているわけではないことがわかる。様々な環境被害への懸念に対して長期的には心配はいらないとしているが、短期的に基準に反しているのであれば問題なのではないか、独自に調査をするために測定地をもうけないのかという質問も寄せられていた。詳しくはこの先の準備書に明記し、改めて理解を得られるようにするとのことだった。市民への健康被害は国の規定に反していないため心配ないとのことだが、説明会後参加者の一人はこのような対策では不十分だと、明らかに納得のいかない表情を見せていた。また、国が定めている基準値も他国のものと比べると甘く(例えば水銀など)、見直すべきなのではないかと思われる。

第一回目の説明会で寄せられた質問は約60件、環境、健康、必要性、などが多く問われたが返答があったのは39。予定時間より質疑応答は30分延長したが、質問とは少し違った答えだったり、曖昧な解答が多かった印象を受けた。また、時間切れになることを理由に答えにくい質問は避けたのではないかという声も多く上がった。千葉パワーはこの第一回の説明会で社会貢献の資料などを配布し、地域住民の理解を得ようとしたが、悪影響しか及ぼさない石炭火力発電所建設計画にはとても賛同しがたい。地域住民は、既に問題である地域の大気の状態や環境破壊への影響をまずは対処するべきだという強い意思を持っている。これからさらに多くの地域の方々にこの計画と実情を知ってもらうことも今後の課題となる。
(インターン 富塚)

気候ネットワークが作成した蘇我火力に関する解説書はこちら→
環境影響評価方法書から読み解く(仮称)蘇我火力発電所建設計画~問題点と事業者に確認すべきポイント
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