【声明】ネパール大洪水ー警告があったにもかかわらず、国際社会は対応せず
2026年8月26日、中国チベット自治区とネパールの国境を流れる河川で大規模な土石流が発生し、9月1日時点で1000人近くの死亡が確認されています。4,000名近くが行方不明とされていますが、被害の全貌はわかっておらず、影響を受ける人の数はそれよりはるかに多いとも指摘されています。
FoE Japanは犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、今も被害に遭われている方や救助に当たっている方々への連帯を表明します。ネパールにおける氷河湖崩壊のリスクは長年警鐘がならされており、被害対策への支援の要請があったにもかかわらず、国際社会はこれに応えることができていませんでした。
以下はFoEアジア太平洋によるプレスリリースです(原文はこちら)
ボテコシ2026:緊急の対応が求められた場面で、「緑の気候基金」はネパールの地域社会の期待に応えられなかったーヒマラヤの洪水対策プロジェクトが7年遅延、国際的な気候資金の課題を浮き彫りに
2026年8月28日 カトマンズ発 — FoEアジア太平洋は、緑の気候基金が、危険性を増す氷河湖決壊洪水(Glacial Lake Outburst Floods; GLOF)からネパールの地域社会を守る事業の承認に7年もの歳月を費やしたことを非難し、この遅れは国際的な気候資金システムにおける重大な欠陥を露呈するものだと警告した。
(注:緑の気候基金は、気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定の下に設置された、途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への対処を支援するための基金。2010年のCOP16で設立が決定された。緑の気候基金は途上国における気候変動対策に資金供与を行なう最大の基金である)
8月26日に発生したボテコシ川の壊滅的な鉄砲水は、ヒマラヤ地域で増大する気候変動・氷圏リスクへの対応が遅れた場合にどのような結果を招くかを、改めて浮き彫りにした。
ネパールにおける氷河湖決壊洪水のリスクと被害の軽減を目的とした緑の気候基金のプロジェクトは、2018年時点で基金の検討に入っていたと報じられているが、承認されたのは2025年7月になってからだった。
FoEアジア太平洋は、ヒマラヤ地域の住民が直面するリスクが急速に高まっている状況を踏まえれば、この遅れは容認できないとしている。
「人為的な気候変動によって高まる氷河湖決壊洪水のリスクから地域社会、インフラ、生態系を守るための事業の承認に、緑の気候基金が7年もかけたというのは、まったくもって衝撃的です」と、FoEアジア太平洋のミーナ・ラマン氏は語った。
「この事業は2018年の時点で緑の気候基金の検討案件に入っていましたが、承認されたのは2025年7月になってからでした。もっと早く承認されていれば、少なくとも早期警戒システムなどの対策を整え、壊滅的な被害を最小限に抑えられたはずです。このようなことは二度と繰り返してはなりません。人命を救うための気候資金において、時間は何よりも重要なのです」
同団体は、今回の悲劇は、気候危機の進行スピードと気候資金の拠出のスピードがかけ離れたままではいけないことを示していると述べた。
FoEアジア太平洋は、国際的な気候資金機関を統治・出資する立場にある緑の気候基金と先進国政府に対し、脆弱な国々における気候適応、災害への備え、そしてレジリエンス強化への資金提供を早急に加速させるよう求めている。
緑の気候基金は、この遅れについて説明責任を果たさなければならない
緑の気候基金は、開発途上国の排出削減と気候変動への適応を支援するため、国連気候変動枠組条約のもとで設立された世界最大の多国間気候基金である。
ネパールの事例は、緑の気候基金が、気候危機の最前線に立つ地域社会が必要とする速度と規模で気候資金を届けられているのか、という根本的な疑問を投げかけている。
ネパールの氷河湖決壊洪水リスクに対処するために特別に設計されたプロジェクトは、承認されるまで7年間にわたり緑の気候基金の検討段階に留め置かれていた。
「気候変動は加速しているのに、気候資金の動きはあまりにも遅い」とミーナ・ラマン氏は語った。「不安定な氷河や氷河湖の直下に暮らす地域社会にとって、7年という歳月は単なる事務手続き上の遅れではありません。それは、早期警戒システムが整っているかどうか、十分な備えのないまま災害に直面するかどうかを分ける、決定的な違いになり得るのです」
同団体は、緑の気候基金に対し、重要な適応プロジェクトが何年も承認されずに留め置かれることを許してきたプロセスを早急に見直すとともに、差し迫った、かつ増大する気候リスクに対処するプロジェクトを優先する仕組みを構築すべきだと述べた。
また、ボテコシの災害を受け、「損失と被害」対応基金(FRLD)に対し、救助・復旧・復興に向けた資金支援を早急に実施するよう求めた。
「『損失と被害』対応基金もまた、救助と復旧に必要な資金援助をもって、早急に対応しなければなりません」とラマン氏は語った。
「これらの基金の理事を務める先進国は、人命を救い得る行動を遅らせてはなりません。適応と損失・被害の双方に対するリソースの即時拡充が不可欠です」
ネパールの地域社会は、これ以上の警告を待つ余裕はない
FoEアジア太平洋は、大切な人を失った家族、行方不明の親族を今も探し続けている人々、家や生計手段を失った被災者、そして救助・救援活動を続けるネパール軍、ネパール警察、地方当局、緊急対応要員、市民社会の関係者に、心からの哀悼の意を表した。
災害の全容はいまだ明らかになっておらず、数百人が行方不明と報じられているほか、ラスワ郡、ヌワコット郡、そして下流域一帯で集落や重要インフラが広範囲にわたって破壊された。道路、橋梁、水力発電施設、通信システム、送電線、車両、商店、国境インフラなどが損壊、あるいは流失した。
「私たちは犠牲となられた方々を悼むとともに、大切な人の帰りを今も待ち続けているご家族に寄り添います。しかし、この惨事は、国内外に対する警鐘ともならなければなりません」と、FoEアジア太平洋のプスパ・デウィ氏は語った。
8月26日の災害の正確な経緯は、独立した科学的調査によって明らかにされるべきだ。予備的な評価では、氷雪崩、落石、あるいは岩屑なだれがレンデ川を一時的にせき止め、水と土砂の急激な流出を引き起こした可能性が指摘されている。氷河湖決壊洪水についても調査が進められている。
発生直前にまとまった降雨がなかった(にもかかわらず大洪水が発生した)という指摘もあり、急速に変化するヒマラヤ氷圏において、複合的かつ連鎖的な災害リスクが増大していることが浮き彫りになった。
今回の災害に先立ち、2025年7月にはボテコシ川・レンデ川流域で洪水が発生しており、ネパール水文気象局はこれをネパール・中国国境付近における氷河湖決壊に起因するものとしていた。エベレスト地域で2024年に発生したターメの災害も、同様の危険性を示す事例だった。この時は、氷河湖に流入した岩なだれが変位波を発生させて湖を決壊させ、推定15万6,000立方メートルの水が流出した。
「山々は私たちに警告してきました。川も、科学者も、そして人々も、私たちに警告してきました」と、FoEネパールのプラカシュ・ダハル氏は語った。
「ネパールと国際社会は今こそ行動しなければなりません。次の警告が、また新たな大惨事に変わってしまう前に」
遅れた資金から恒久的な備えへ
FoEアジア太平洋は、ネパール政府に対し、恒久的な制度的地位を持ち、専用の資金を備えた、政府機関、科学機関、大学、治安機関、地方自治体の連携のもとで運営される「ヒマラヤ氷圏・氷河湖決壊洪水リスク監視早期警報国家ミッション」を設立するよう求めている。
このシステムには、以下を含めるべきである。
・氷河および氷河湖の継続的な衛星監視
・高解像度のハザードマッピング
・湖水位および河川水位の自動監視
・気象、地震、水文に関する観測
・地上センサーおよびカメラ
・モレーンダム、氷壁、不安定斜面の監視
・危険性のある氷河湖の包括的な特定とランク付け
・リスクが高まる期間における24時間体制の科学的監視
ネパールですでに行われている科学的評価によって、この課題の規模の大きさはすでに明白である。ICIMOD(国際総合山岳開発センター)とUNDP(国連開発計画)による調査目録によると、コシ、ガンダキ、カルナリの各流域にわたり、潜在的に危険と評価された湖を含む氷河湖がネパール国内に2,070存在することが確認された。
氷河湖決壊洪水および氷圏ハザードマップは、土地利用計画において法的拘束力を持つ手段として位置づけられるべきである。高リスクと特定された地域では、厳格な複合ハザード評価を経ない限り、大規模インフラの整備を承認すべきではない。一方、極度のリスクにさらされている既存の集落やインフラについては、強化、防護、あるいは段階的な移転に向けた評価を行う必要がある。
気候資金は、気候非常事態に見合ったものでなければならない
FoEアジア太平洋はまた、世界各国の政府、国連機関、人道支援団体、開発機関、気候基金、市民社会に対し、ネパールへの緊急人道支援と長期的な気候資金の提供を求めた。
これらの呼びかけは、FoEアジア太平洋とFoEネパールが2026年7月17日にナガルコットで開催した、「ネパールおよびアジア太平洋地域における氷圏変動、河川システム、若者の参加」会議を受けて行われたものである。
この会議には、アジア太平洋地域各地から科学者、政府関係者、研究者、環境保護活動家、弁護士、人権活動家、登山家、ジャーナリスト、若者、そしてFoEの代表者が集い、氷河湖決壊洪水のリスク増大を含む、ヒマラヤへの気候変動の影響について検討した。
会議で採択された「気候正義のためのナガルコット行動要請」は、ヒマラヤの氷の消失と不安定化が加速していると警鐘を鳴らした。
ボテコシの災害を機に、事後対応型の災害対策から、アクセスしやすく、予測可能で、迅速な国際資金に支えられた、積極的な気候変動適応策へと転換すべきだ。
ヒマラヤの災害リスクは国境を越えて及ぶものであるため、ネパールは中国との間で、氷圏・水文・気象情報をリアルタイムで共有する恒久的な枠組みを構築すべきである。この枠組みには、大規模な雪崩、地滑り、氷塊崩落、氷河湖の変化に関する即時通報、衛星画像の共有、緊急警報、共同科学調査、そして定期的な災害対応訓練を含めるべきである。
ネパールは、気候適応とレジリエンスの確保を国家開発計画の中核に据えるべきである。道路、橋梁、水力発電事業、送電線、集落、空港、観光インフラは、過去のリスクではなく、将来の気候・氷圏の条件を見据えて設計されなければならない。
氷河湖決壊洪水への備え――監視、早期警報システム、防護インフラ、移転、生態系の復元、緊急通信、地域社会の備え――についても、専用の資金が必要である。
「気候変動枠組条約(UNFCCC)およびパリ協定のもとでの義務を果たすにあたり、先進国にこれ以上の言い訳や遅延は許されません」とラマン氏は語った。
「氷河が不安定化し、気候災害が激化する中で、気候変動に最も脆弱な地域社会に、資金が届くまで何年も待てというわけにはいきません。危機の大半が歴史的排出によって引き起こされ、最も脆弱な人々がその代償を払わされている以上、予算の制約は言い訳にはならないのです」
我々は、地球規模の温室効果ガス排出について最大の歴史的責任を負う先進国に対し、気候正義への公約を、ネパールへの即時かつ具体的、そして大幅に拡充された支援として具体化するよう求める。
この声明に関する連絡先
Chloe Aldenhoven
chloe.aldenhoven@foe.org.au
+61432328107