共同声明:柏崎刈羽原発の運転禁止措置の解除に抗議する-東電にも規制委にも適格性はない

原発

本日(12月27日)、原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の運転禁止措置の解除を決定しました。これを受けて、原子力規制を監視する市民の会と国際環境NGO FoE Japanの2団体は、以下の声明を発表しました。

2023年12月27日
原子力規制を監視する市民の会
国際環境NGO FoE Japan

共同声明:柏崎刈羽原発の運転禁止措置の解除に抗議する
東電にも規制委にも適格性はない

 原子力規制委員会は本日12月27日の会合において、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の運転禁止措置の解除を決定した。柏崎刈羽原発は、2020年に発覚したIDカードの不正利用及び2021年に発覚した核物質防護設備機能の一部喪失により、核燃料の移動禁止措置がとられ、これが事実上の運転禁止措置となっていた。

規制委は何を確認したのか

解除に際して規制委は、東電が実施した、大雪警報を模擬した訓練、核防護の監視を行うモニタリング室の設置、協力企業から状況報告があがるようにしたことといった「改善」をあげ、これを検査によって確認したという。

しかし、大雪警報を模擬した訓練が行われたのは今年9月の暑い時期である。本日の会合において規制委の委員から12月22日に柏崎市で大雪警報が発令されたときの対応について質問が出たが、規制庁職員による口頭の報告に留まった。モニタリング室の設置や協力企業からの状況報告については仕組みを確認しただけで実効性の判断はなく、今後も検査を行うという。解除の検討は、少なくとも冬の間に実際に大雪の状況を何度か経験したうえで、改善についての実効性を確認したうえで行うべきではないか。

トラブルに学ばず繰り返す体質

東電の適格性についての再確認も行われ、「適格性がないとはいえない」との判断を維持することとした。

再確認では、この間発生したトラブルについても検証したというが、例えば、今年10月25日に発生した福島第一原発サイトにおける多核種除去装置(ALPS)前処理施設で洗浄中の作業員の被ばく事故については、「検査中で暫定評価は軽微」として具体的な検討を避けた。

この事故は、高濃度の放射能と硝酸を含む洗浄廃液を、その都度、開口部のある仮設タンクにホースを突っ込んで流し込む際に発生した。ホースが外れて抜けて廃液が噴き出すおそれのあることは容易に想像された。

この事故について東電の説明は変遷している。東電は当初、現場にいた作業員を5人と発表していたが、記者の追及により実は10人であり、元請けの設計者もいたことがようやく明らかになった。なぜ設計者が呼ばれたのか、それでも事故が防げなかったのはなぜか、なぜこの事実を東電は隠していたのか、肝心なことは不明なままである。トラブルを隠し、トラブルに学ばず、トラブルを繰返す東電の体質は何ら変わっていない。

また、事故を軽微と決めつけ、検証も待たずに適格性を判断した規制委も問題だ。規制委に原子力の安全規制を行う「適格性」があるのか疑わしい。

廃炉の実績は示されたのか

2017年、柏崎刈羽原発の設置許可の際、東電の適格性について議論があり、規制委は、福島第一原発の廃炉について、「やりきる覚悟と実績を示すこと」を求めた。東電に「覚悟を示すこと」を求めること自体、意味不明だが、「実績」はあるのか。

デブリの取り出し開始は2回延長され、当初予定の「2021年中」から2年以上遅れている。最近では、2号機の原子炉に通じるフタの内側が堆積物で塞がれていることが判明し、せっかく開発したロボットアームが使えるのか怪しい雲行きとなっている。

規制委は今年8月24日からのALPS処理汚染水の海洋放出開始を「実績」とみているようだが、これで廃炉が進むわけではない。漁業者などが反対している中、集中管理すべき放射性物質を環境中に放出することに踏み切ったことは大きな問題だ。東電は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で約束していたが、これにも反する。止水もできておらず、増え続ける汚染水の元を断てていない。

すなわち、廃炉の「実績」は示されていない。  

東電に適格性はなく、柏崎刈羽原発を動かしてはならない。

 

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