インドネシア住民グループがJICAに要望書を提出「居住地、生産性の高い土地、慣習地、文化的施設を通る有料道路ルートへの支援は行わないで」

2023年2月6日、JICA本部(東京)で、WALHIがFORMAT 50 KOTAの要望書をJICAに提出

国際協力機構(JICA)が協力準備調査を実施しているインドネシア・西スマトラ州での有料道路トンネル建設事業に関しては、現地の5つの村の先住民族ミナンカバウのコミュニティが共有地や墓地、住居、農地を通らない道路ルートへの変更を強く求めてきました。しかし現在、リマプルコタ県政府が同ルートのまま事業を強行しようと、住民側への圧力を強めています。

5村の住民ネットワークであるFORMAT 50 KOTA(リマプルコタ有料道路影響住民フォーラム)は、こうした現地の緊迫した状況を伝え、5つの村を通る有料道路事業への調査支援を行わないようJICAに改めて求める要望書(2023年2月3日付)を作成。同要望書は同事業の影響を受ける5村の住民400名以上の署名とともに、2月6日、住民ネットワークを支援しているWALHI(インドネシア環境フォーラム:FoEインドネシア)によって、JICA本部(東京)に手渡されました。

以下、FORMAT 50 KOTAのJICAへの要望書(和訳)です。

居住地、生産性の高い土地、慣習地、文化的施設を通るルートを拒否する地域住民の要望の提出について(続報)

親愛なる東京の
国際協力機構(JICA)理事長 様

敬意を込めて。

インドネシア政府、特に西スマトラ州知事とリマプルコタ県知事が、リマプルコタ県を通るパヤクンブ-パンカラン区間のために行っている用地取得手続きは、2020年から説明会等の段階に入っていますが、説明会の結果、コト・バル・シマラガン村、コト・タガ・シマラガン村、タエ・バルア村、ルブアック・バティンコック村、グルン村の5 つのナガリ(訳者注:先住民族ミナンカバウの村組織)の住民は、人口密度の高い村、生産性の高い土地、先住民族の生活に社会的影響を与える伝統・文化施設を通過するルートに反対、拒否しています。

パヤクンブ〜パンカラン有料道路の通過予定ルートとして、住民たちの苦情や拒否の理由を考慮せず、また脆弱な地域住民の嘆きや苦しみに対する共感もなく、5つのナガリを通るルート1を推奨し続けているリマプルコタ県知事の方針に、私たちは非常に失望し残念に思っています。それだけでなく、県知事は5つのナガリの村長に対し、5つのナガリにおける国有企業フタマ・カルヤ及びJICAによる説明会等を促進するためのリマプルコタ県地域官房長(SEKDA)の要請を拒否する内容を含む2022年8月21日付の共同書簡(5つのナガリの各村長、各ナガリ議会(BAMUS)代表、各ナガリ慣習法会議(KAN)代表が署名)を撤回するよう強要しました。

村長による書簡の取り消しは、地域住民とニニク・ママク(ミナンカバウの慣習リーダー)の要望には影響を及ぼしておらず、むしろ県政府のとった措置により地域住民はより強固になり、他の地域へのルート移転を求めることを決意しています。それだけでなく、地域住民は説明会等を拒否する署名を集めました。地域住民は2020年にすでに説明会等が実施された時の経験から、5つのナガリで説明会等が行われる必要はないと考え、その結果、ルートの変更を求めてきたからです。(各ナガリの地域住民の声明を添付します)。

したがって、私たち、リマプルコタ有料道路影響住民フォーラム(FORMAT 50 KOTA)は、5つのナガリ慣習法会議(KAN)と共に、以下の事項をお伝えします。

1. JICAに対し、地域住民の社会文化秩序の破壊に影響を及ぼす有料道路事業、特に5つのナガリを通過するルート1への投融資を行わないよう謹んで要請します。なぜなら、当初から住民が異論を唱えてきたにもかかわらず、地方自治体がそれに応じることはなかったからです。

2. JICAは各ルートの距離や移動時間の差異を検討して有料道路の効率や効果を論じていますが、すでに住民が拒否しているルート1の選択を強行する決定的な理由にはなりません。JICAと政府は代替ルート2や代替ルート3を提示していますが、影響を受ける地域住民すでに圧力を受けています。Pusako tinggi(慣習法に基づく共有地)は今日まで維持されている唯一のアイデンティティであり、有料道路が5つのナガリを分断すれば失われる恐れがあります。

3. リマプルコタ県政府が提出し、西スマトラ州知事が転送した村長及びナガリ議会(BAMUS)の意見書は、現場レベルの地域住民の要望を代弁するものではありません。ナガリ慣習法会議(KAN)は、子どもたちや地域住民とともに、居住地、生産性の高い土地、宗教施設、慣習的な場所、慣習法に基づく共有地を通過する有料道路ルートへの拒否/異議を再確認しました。

4. JICAに対し、常に人権を尊重し、インドネシアの地域住民の慣習や文化を尊重する自身の原則や価値観を堅持するよう要請します。なぜなら、コトパンジャン水力発電所の苦い経験が、被害を受けた村で現在も深い傷として残っているからです。そして、このようなことが、現在ルート変更に向けて奮闘する5つのナガリで繰り返されないことを願っています。

5. 5つのナガリの地域住民は、国家戦略計画である有料道路を拒否しているわけでも、JICAの私たちの国への投融資を拒否しているわけでもありません。有料道路のルートを、私たちの村から、居住地を通らず、大きな社会問題を起こさない他の地域に移すことだけを私たちは求めています。

JICAが現場における地域住民の願いや要望に耳を傾けてくれることを期待しています。

ワッサラームアライクム

2023年2月3日

タエ・バルア村にて

(FORMAT 50 KOTA代表及び書記による署名)

(影響を受ける5つのナガリの各KAN代表による署名)

同書簡の写しを以下に提出:

(以下、略)

(翻訳責任:JATAN/FoE Japan)

 

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