「開発協力大綱」改定に関する要請書を提出ーーODAの軍事利用禁止、人権侵害の加担回避、不適切な迅速化の回避等を要請

 外務省は9月9日、政府開発援助(ODA)の基本的な考え方を示す「開発協力大綱」の改定を行うことを発表し、すでに9月16日に「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」の第1回会合を開催しました。9月15日にFoE Japanを含む市民団体から「開発協力大綱の改定プロセスに関する要請書」を提出しましたが、「有識者懇談会」の位置づけや機能に関して十分な説明がなされないまま、また市民からの意見を十分に反映するプロセスが確保されないまま、改定プロセスが始まってしまった形となっています。
 これに対し、本日、FoE Japan、メコン・ウォッチ、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は、外務省に対して、改定プロセスに関する強い懸念を改めて表明するとともに、ミャンマーやフィリピンにおける「過去のODA事業の問題事例」を示しつつ、①ODAの軍事利用の禁止、②深刻な人権侵害がみられる国・地域への支援の回避を原則に明記すること、③案件形成などの不適切な迅速化の回避、④大綱を遵守するための確認事項の明文化ーーの4点を新大綱に反映させるよう求める要請書を提出しました。要請書には、16のNGOが賛同しています。

要請書の本文は、以下の通りです。(PDFはこちら

2022年9月29日

外務大臣 林 芳正 様外務大臣 林 芳正 様

「開発協力大綱」改定に関する要請

 私たちは、環境、開発、人権などの分野で活動するNGOとして、政府開発援助(ODA)など公的資金の使途に強い関心を持っています。これまで、日本の公的資金の支援を受けた事業等により、人権侵害や環境破壊が引き起こされる、または援助対象国の軍事体制の資金源になりうる事例がみられることから、公的資金の使途や支援のあり方に関して、さまざまな提言を行ってきました。

 外務省は9月9日、ODAの基本的な考え方を示す「開発協力大綱」の改定を行うことを発表し、すでに9月16日に「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」の第1回会合を開催しています。私どもは9月15日付「開発協力大綱の改定プロセスに関する要請書」でプロセスの問題を指摘しましたが、改定のための「有識者懇談会」の位置づけや機能に関して、十分な説明がなされないまま会合が開催されたことは大変残念です。また、すでに全4回の有識者懇談会の会合日程は決まり、2ヶ月ほどの大変短い間に提言が取りまとめられるとされていることから、市民からの意見が十分に反映されず、かつ、有識者も十分に議論を尽くせない状況で提言が取りまとめられてしまうことに、強い懸念を表明いたします。更に、9月15日付の要請内容について、再度検討をお願いいたします。

 ここにあらためて、これまでの問題点を整理し、改定について要請いたします。

過去のODA事業の問題事例 

・ミャンマー
 ミャンマーでは、2021年2月1日のクーデター以降、同国軍による市民への弾圧が激化しています。日本政府はミャンマーの民主化に資するためとして通信・交通・エネルギー・経済特別区開発等、幅広いインフラ事業に対し、ODAを供与しています。しかし国軍の指揮する治安部隊の暴力により2千名以上の市民が虐殺され、掃討作戦等の影響でおよそ100万人の国内避難民がクーデター以降に発生している中、民主化プロセス復帰への道筋は全く見えていない状況です。現状では、日本の提供しているインフラが、国軍の軍事作戦に利用される可能性も少なくありません。何より、ODAが国軍の資金源となり紛争を助長していないか、ミャンマーでは特に、国軍系企業がODAのサプライチェーンに入っていないかまで検証する必要があります。
 また、9年に及ぶ民主化支援にも関わらず、クーデターが発生したことを踏まえ、日本の援助がどのように民主化に貢献し得たのか、その効果と限界を冷静に検証すべきです。更にミャンマーでは、ODA等公的資金を呼び水として、多くの日本企業の投資を呼び込んでいます。ミャンマーの政治的混乱は、日本企業の損失にも繋がっています。官民連携で経済的利益が重視されている中、政治や人権上のリスクの分析が不十分であったという観点からも、ミャンマーの事例は検証されるべきです。

・フィリピン
 フィリピンではこれまで、超法規的殺害(Extrajudicial Killings)等の深刻な人権侵害が指摘されています。2020年に国連人権理事会へ提出された報告書では、テロと違法薬物の取締りにおける系統的な人権侵害、殺害、恣意的拘禁、一貫した不処罰などの問題が取り上げられました。また2016年7月から2020年4月の期間に「違法薬物取締りキャンペーン」の下、警察官等によって殺害された市民は、フィリピン政府機関のデータで8,663人、人権団体はその3倍に上ると報告しています。
 さらに人権団体によれば、前ドゥテルテ政権下の2016年7月から2021年12月までに、427人が超法規的殺害の犠牲となり、不当に勾留されている市民は1,161人に上っています。こうした弾圧の対象となっているのは、国家の政策や事業等から土地や環境を守ろうと声をあげてきた先住民族や農民のリーダー、人権・環境擁護活動家などで、そうした人々への「テロリスト」等のレッテル貼りも顕著です。
 日本はフィリピンに対し、治安・テロ対策や安全保障分野における協力を積極的に行なっており、フィリピン国軍や国家警察への経済的・技術的・人的支援が、こうした深刻な人権侵害に加担している可能性について検証がなされるべきです。また日本は、非自発的住民移転を伴う多くのインフラ整備など大規模開発事業への援助を行っていますが、フィリピンの現在の人権状況下では、JICAの環境社会配慮ガイドラインで求められている「地域社会の社会的合意」や「適切な住民参加」等を確保する素地が損なわれており、援助の適正な実施が可能であるか検証が必要です。

新大綱に反映させるべき点

1.ODAの軍事利用の禁止
 これまでの大綱に定められているように、開発協力の軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避するとの原則を大綱に明記し、また遵守することを求めます。国際紛争のみならず、国内紛争などへの使途の回避についても、大綱に明記してください。

2.深刻な人権侵害がみられる国・地域への支援の回避を原則に明記すること
 深刻な人権侵害が起きている国や地域への支援は、人道援助を除き、人権侵害を容認・助長するおそれがあるため回避することを求めます。人権状況については、国連等の発行する報告書を参照し、確認することを大綱に明記するべきです。

3.案件形成などの不適切な迅速化の回避
 公開されている改訂の方向性では、「民間セクターのニーズに応じた開発協力のあり方や迅速化」という言葉が見られますが、例えば環境アセスメントの情報公開期間の短縮や、その他のプロセスの簡素化は、ステークホルダーの参加の機会を狭め第三者の意見を聞く機会を阻害し、結果として環境破壊、人権侵害などのリスクを高めることになります。これは、中長期的にはODA事業に参画する民間の利益にもなりません。ODA事業のあらゆるプロセスにおいて、不適切な迅速化は避けるべきです。

4.大綱を遵守するための確認事項の明文化
 ODAの非軍事利用、人権侵害の回避などの大綱の遵守のための確認プロセスについて、大綱で明文化することが必要です。

【呼びかけ3団体、賛同16団体】

呼びかけ団体
メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

賛同団体
特定非営利活動法人APLA
特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク
特定非営利活動法人アジア女性資料センター
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)
公益財団法人アジア保健研修所(AHI)
アトゥトゥミャンマー支援(Atutu Japan)
インドネシア民主化支援ネットワーク
国際人権監視NGO Stop the Attacks Campaign
在日ビルマ市民労働組合
高木仁三郎市民科学基金
地球の木
日本国際ボランティアセンター(JVC)
日本ビルマ救援センター
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
ふぇみん婦人民主新聞
公益財団法人民際センター

本件に関する連絡先:
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F
Tel: 03-3832-5034 Fax: 03-3832-5039
info@mekongwatch.org

 

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