バイオマス発電の7つの不都合な真実
➀バイオマス発電は火力発電
バイオマス発電は、木材や農作物残さなどの生物由来の燃料※を燃やす、もしくはガス化して電気をつくる「火力発電」です。再生可能エネルギーの一つとされていますが、実は大量のCO2を出し続けています。
※主な燃料:木質ペレット、木質チップ、パーム油、パーム椰子殻(PKS)
②「炭素の貯蔵庫」である森林を破壊
森林とその土壌には、たくさんの炭素が蓄えられています。森林を守れば、炭素貯蔵量は増え続け、生物多様性も守られます。しかし、バイオマス発電の燃料生産のために、森林が伐採されると、長年貯蔵されてきた炭素がCO2となって大気中に放たれてしまうのです。天然林を伐採し、再び木を植えて人工的に森林を再生したとしても、成長には長い年月がかかる上に、元の天然林より炭素貯蔵量が減ってしまうことも。失われた生物多様性は、二度と元には戻りません。
燃料生産の現場で何が起きている?
③脅かされる地域住民の暮らしと健康
深刻な影響を受けているのは、生態系だけではありません。パーム油を作るアブラヤシ農園の開発にあたっては、先住民族のコミュニティが先祖代々使ってきた森が、合意がないまま開発されてしまうなどの人権侵害も起きています。また、木質ペレット工場の粉じんや騒音によって、地域住民の健康や暮らしが脅かされています。日本では、バイオマス発電所の建設に対して、生活環境や健康への影響を危惧する住民から反対運動も起きています。
④輸入燃料が急増!輸入に頼るバイオマス発電
日本のバイオマス発電に使われる燃料の多くは、輸入に頼っています。パーム油とPKSは100%輸入で、主にインドネシアとマレーシアで生産されています。木質ペレットの輸入量は、急増しています。主にベトナムとカナダから輸入していますが、今後は、カナダとアメリカからの輸入量が増える見込みです。燃料生産地の生態系を破壊するだけでなく、遠い国からの輸送に伴うCO2排出量も多く、環境負荷がとても高いのです。
⑤「カーボンニュートラル」の嘘
バイオマス発電は、燃料を燃やす時に排出されるCO2が、伐採された森林の再生・成長時に吸収されることから「カーボンニュートラル」と言われています。しかし、実際には…
・元の森林が再生されないこともある
・元の森林が再生されたとしても、伐採されなかった場合に森林や土壌が蓄える
ことができた炭素量には及ばない
・森林の再生には長い年月がかかり、それまで大気中の CO2 は増加したまま
・伐採や加工、輸送など、燃料を燃やす以外の工程でも多くの CO2 を排出する
⑥エコじゃないバイオマス発電を認定する FIT 制度
私たちのお金が環境破壊に使われているかもしれません。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)は、再エネを普及し、環境負荷を低減するために2012年に導入された制度です。私たちが払う電気料金の一部を使って、FIT制度が認定した再エネ事業を支えています。しかし、認定されたバイオマス発電の中には、気候変動を加速させ、生物多様性を失うリスクが高い事業もあります。
⑦石炭火力の延命に使われるバイオマス
石炭火力発電所の中には、バイオマス燃料を混焼させているケースがあります。気候変動の観点から、効率の悪い石炭火力発電所を段階的に廃止していく方針を政府が示す中、バイオマスを混ぜて燃やすと「高効率」とみなされる実態があるためです。「エコ」の仮面を被った石炭火力発電所は、今後さらに増える見込みです。また、一部の石炭火力発電所はFIT制度で認定されています。バイオマスが、石炭火力の延命手段となっているのです。