【声明】3.11から11年――平和で、原発も核もない社会に向けて、世界の人々とともに

原発

東日本大震災および東京電力福島第一原発事故の発生から11年が経過した。

国や電力会社がそれまで「絶対に安全」としていた原発が相次いで爆発。「5重の壁」で閉じ込められていたはずの放射性物質が、海へ、陸へと拡散し、長く続く放射能汚染を引き起こした。

忘れてはならないのは、社会全体が、電気の大量生産・大量消費を当然のこととして、原発を正当化する国や電力会社の宣伝を無意識に受け入れてきたことだ。福島の原発で発電された電気が福島ではなく、首都圏で使われてきたこと、原発を動かすために多くの作業員が被ばくを強いられてきた理不尽さは認識されてこなかった。この歪んだ構造は現在も続いている。

原発事故は生じるはずのないものであった。このため、被害者救済のための法制度や環境中の放射性物質に関する規制は存在しなかった。2011年当時、政府が、一般人に適用される被ばく限度の20倍もの値を避難の基準と定める中、避難すべきか、とどまるべきか、多くの人たちが苦悩した。賠償も支援もない中、少なからぬ人が避難を強いられた。

原発事故は終わってはいない。今もなお、少なくとも3万人以上の人たちが避難生活を継続している。しかし、住宅提供をはじめ公的な支援はすでに打ち切られ、避難者の中には家賃の支払いに苦しみ、孤独の中に取り残される人もいる。

相次いで避難指示が解除され、避難者への支援が打ち切られても、帰還はなかなか進まない。若い世代が帰還せず、高齢者の1~2人世帯が点在する地域が多くなっている。

また、放射性物質の人為的な再拡散が行われている。国は除染で生じた汚染土や放射性廃棄物を、安全に保管する道はとらず、再利用する方針だ。大量の処理汚染水の海洋投棄も、放射性物質の拡散を引き起こすものだ。この水には、トリチウムのみならず、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留する。東電は二次処理を行うとしているが、最終的にどのような放射性物質がどのくらい残留するか説明していない。

政府は「風評被害の防止」という名目で、放射性物質を危険でないものに見せかける巧妙な宣伝に膨大な国税を費やしている。しかし、放射性物質の拡散は実際の「被害」である。「風評被害」という表現は、政府や東電という実際の加害者がいるのにもかかわらず、その責任を曖昧にし、被ばく・汚染のリスクを指摘する側が、あたかも加害者のようにみせかけるものだ。

事故後、東京電力・東北電力が有する原発はすべて停止し、東日本では「原発ゼロ」の状況がすでに11年間継続している。全国的にみても、2013年9月に関西電力の大飯原発3・4号機が停止して以来、ほぼ2年間、全国の原発が停止し、原発ゼロの期間が続いた。いったん再稼働した原発についても、テロ対策施設の建設の遅れ、裁判所による運転差し止め判断、配管のひび割れなどのトラブルによって停止が相次いだ。原発の建設費や安全対策費は急上昇し、もはや原発は「安定した電源」でも、「安価な電源」でもなくなった。

現在、ロシアがウクライナに軍事侵攻し、多くの犠牲者が生じている。ロシア軍は次々にウクライナの原発を攻撃、制圧している。いうまでもなく、戦争は最大の環境破壊であり人権侵害であり、決して許されない。また、原発への攻撃は、放射性物質を拡散することになりかねず、人々のいのちや健康を長期にわたって危険にさらすことになる。いままで原発が攻撃のターゲットとなるリスクは指摘されてきてはいたが、残念ながらその悪夢が現実のものとして示されてしまった。

私たちは、被害者とともに立ち、平和を願う世界中の人たちと連帯して、原発も核もない平和な世界を実現させる決意を新たに、歩みを進めていきたい。

 

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