【KDDIグループと住友商事に要請提出】
ビルマ(ミャンマー)の非合法政権による人権侵害を助長しないでください

開発と人権

#ミャンマー国軍の資金源を断て
#JapanStopODAtoTheTatmadaw #NoMoreBusinessWithTheTatmadaw

ミャンマーの民主化に取組む海外の団体が中心となり、KDDIグループ及び住友商事に対し、公開書簡「ビルマ(ミャンマー)の非合法政権による人権侵害を助長しないでください」(2021年10月18 日付)を提出しました。FoE Japanを含む、国内外の46市民団体及び18個人が賛同しています。

KDDI住友商事は、2021年9月29日付で「ミャンマーにおける通信事業への取り組みについて」を発表しました。しかし、ビジネスパートナーであるミャンマー郵電公社(MPT)が非合法政権の命令に従って通信傍受などに関与している可能性について、両社の取組みが不十分であり、説明責任も十分に果たしているとは言えない状況であることから、以下の3点を要求しています。

● クーデター以降に高まった重大な人権侵害のリスクに照らし、両社が人権デューデリジェンスのメカニズムを向上させてきた過程を公開すること

● MPT のインフラや両社の子会社の資産あるいは共同事業からの利益が、反対の声を取り締まり、重大な人権侵害を犯すことに使われていないかどうかを評価するため、残虐行為を防止するツールを組み込んだ、強化された人権デューデリジェンスを行なうこと

● 両社の調査結果を公開し、MPT の顧客の権利を守る適切な措置を講じること

 詳細は、以下の要請書本文(和訳)をご覧ください。


> 要請書(和訳)PDF版はこちら

(原文は英語。メコン・ウォッチおよびFoE Japanによる和訳。)

2021年10月18日

KDDI 株式会社
代表取締役社長 髙橋 誠 様

住友商事株式会社
代表取締役 社長執行役員 CEO 兵頭 誠之 様

KDDIグループと住友商事は
ビルマの非合法政権による人権侵害を助長しないでください

私たちは、貴社のビジネスパートナーである国営ミャンマー郵電公社(MPT)が、データセンターに通信傍受装置を導入せよという、ビルマの非合法政権の命令に従ったという報道を受け、危機感をお伝えし たく本書簡を送付いたします。法的なセーフガードがまったくない中で、政権がMPT のインフラを使って 2,700 万人を超える顧客のプライバシー権を侵害し、顧客を更なる人権侵害にさらすことを免れないと深く懸念します。

MPT は2014 年から、貴社2 社のシンガポールを拠点とした合弁企業の子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.(以下、KSGM)との共同事業協定の下、通信事業を行ってきました。KDDI と住友商事の両社は、10 年にわたり20 億米ドルを投資すると約束しました。KSGM は現在、MPT スタッフへの研修の他、MPT に対して通信設備をリースしたり、技術面や事業運営面での支援を行ったりしています。

KDDI と住友商事が共同事業において有する利害関係や権限を踏まえれば、貴社は MPT の事業活動によって生じた人権影響に対して責任を有しています。MPT が国軍による監視の取組みに協力しようと準備していたという報道に対し、貴社の弱腰に見える対応、また貴社が総じて透明性を欠いていることは、深く憂慮されます。さらに非常に危惧されるのは、住友商事とKDDI が、現在では政権が軍政に完全に支配されている企業と事業を継続しており、それによって、国軍が莫大な利益を生み出すことを可能にし、ビルマ市民に対する全国規模の恐怖作戦の資金源になりうるという事実です。

2021 年2 月1 日に権力を力づくで掌握して以来、国軍は反対者への大規模な弾圧の一貫として、住民に対するスパイ活動を支援するようサービスプロバイダーに圧力をかける等、通信の監視強化に取り組んでいます。この非合法な政権は、人道に対する罪に相当する組織的な抑圧作戦で、既に1,178 人以上の民間人を殺害し、9,028 人を恣意的に拘束しました。もし軍政が通信インフラに自由にアクセスでき、また共同事業によって利益を得れば、さらに多くの人々が危険にさらされる可能性があります。

KDDI グループと住友商事は日本に本社を置いていることから、両社の海外事業は OECD 多国籍企業行動指針に従うべきです。この指針の下では、事業活動は人権への悪影響を引き起こすまたは一因となることを避けるべきであり、取引関係によって生じる事業活動、製品又はサービスに直接結び付く人権への悪影響を防止又は緩和するための措置をとるべきです。また、両社は人権デューデリジェンスを事業の性質や文脈に合わせて実施すべきです。これには事業による人権への実際の及び潜在的な影響の評価、調査結果のとりまとめ及びそれへの働きかけ、対応についての追跡調査、並びにどのように影響が対処されたかについての伝達が含まれます。

このような原則は国連ビジネスと人権に関する指導原則にも反映されています。KDDI グループは、「差別をはじめ人権侵害に直接的に関与しないよう努め」、「人権に関し、万が一、負の影響を引き起こした場合には、適切に対応する」と表明しています。住友商事は国連ビジネスと人権に関する指導原則に則って活動していると述べています。住友商事はビジネスの原則を規定する国連グローバル・コンパクトの加入企業で、よって人権侵害に加担しないよう担保すると誓約しています。

2021 年9 月29 日、KDDI と住友商事は「(法律に基づく)通信傍受」[訳注:()内は訳者による補足。 本両社の声明の英文では”lawful interception”とあるが、和文では必ずしも”lawful”が明記されていない。本レター英文では”lawful interception”を引用している]に係るビルマの状況に関して深い懸念を示しましたが、KSGM は「通信傍受につき、規制当局から直接指示を受けるものではない」と特筆しています。両社は、両社が MPT に対し、「ミャンマーの人々の基本的人権に負の影響がないように、個別事案ごとの適正なプロセスが確保され、かつ KSGM が提供してきた有形無形の資産が」KDDI 及び住友商事の人権方針に「反する事態に使われることのないように要請しております」と述べました。

このような中途半端な措置がMPT の顧客の権利を守ることはほぼないでしょう。この政権は、反対の声を取り締まるために使用可能なあらゆる手段を使うと明示してきており、現在、MPT とビルマの司法の両方を完全に支配下に置いています。このような状況下で、「適正なプロセス」を要求するだけでは、最低限の措置とも言えず、適切な対応として認めることは断じてできません。

2021 年5 月12 日、国連のビジネスと人権作業部会の副委員長が、クーデター以降、重大な人権侵害のリスクが大幅に高まったため、企業や投資家による人権デューデリジェンスをそれに合わせて迅速に高める必要があると宣言しました。私たちは、KDDI グループと住友商事がこれに従ってそれぞれの人権デューデリジェンスのメカニズムを強化するために必要な対応をとった証拠をいまだに提供していないことを懸念しています。

また、両社が「ミャンマーの人々の生活や経済活動に欠かせない通信サービスを技術・営業面から支援する観点のみならず、人権尊重を図るという観点でも、プラスの影響がある」という口実の下、軍政に支配されたMPT との取引関係を停止する予定がないことを示唆したことを、強く非難します。このような立場は、同社が遵守していると主張する原則と矛盾しており、軍政による残虐性のある罪への加担に相当する可能性があります。

以上のことから、私たちはKDDI グループと住友商事にMPT との共同事業協定を撤回し、国軍、またはあらゆる国有企業との事業活動を停止するよう求めます。これらの措置を講じない場合には、最低限でも以下を行なうべきです:

● クーデター以降に高まった重大な人権侵害のリスクに照らし、貴社が人権デューデリジェンスのメカニズムを向上させてきた過程を公開すること
● MPT のインフラやKSGM の資産あるいは共同事業からの利益が、反対の声を取り締まり、重大な人権侵害を犯すことに使われていないかどうかを評価するため、残虐行為を防止するツールを組み込んだ、強化された人権デューデリジェンスを行なうこと
● 貴社の調査結果を公開し、MPT の顧客の権利を守る適切な措置を講じること

以上

署名者一覧
(※匿名を含めた46 の団体および18 人の個人。英語原文https://altsean.org/signed-statements.htmlもしくはhttp://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20211018_Eng.pdf を参照ください。)

 

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