【プレスリリース】環境NGOグループ、大規模バイオマス発電の中止を求める共同声明発表「生物多様性を脅かし、気候変動を加速させる」

木質ペレット生産のために皆伐された湿地林(米南東部) 写真:Dogwood Alliance

本日、国際環境NGO FoE Japanなど国内外34の環境NGOが共同声明を発表し、燃料を輸入する大規模バイオマス発電について、「生物多様性を脅かし、気候変動を加速させる」として、中止を求めました。

声明では、近年、海外からの木質ペレットなどのバイオマス燃料が急増していること、またその生産地において、天然林の伐採などが生じ、生態系に大きな影響を与えているばかりか、森林や土壌が蓄えている炭素ストックの減少をもたらしていることを指摘。さらに海外からの燃料輸入は、輸送距離が長いため、大量の温室効果ガス(GHG)を排出しているとし、「GHG排出の削減が見込めないような事業、森林の減少・劣化を伴うような事業は、すでに認定されているものも含めて、FITの対象から除外するべき」としています。

「生産国では、長い年月をかけて形成された湿地林などが、輸出向けのバイオマス燃料生産のために伐採されてしまう事例が報告されています。『環境にやさしい』とされるバイオマス発電のために、どこかで森林破壊が生じている――これは大きな矛盾です。」と国際環境NGO FoE Japanの満田夏花事務局長は批判しています。「このままいけば、木質ペレットの輸入量は数年間でさらに数百万トン増加し、このために森林減少や劣化が加速するおそれがあります」。

「私たちの再エネ賦課金で、森林減少や温室効果ガスの排出増加につながるようなバイオマス発電事業が推進されていることは大きな問題です」と気候ネットワークの東京事務所長の桃井貴子さんは指摘しています。

「日本に運ばれた燃料は、発電所で燃焼時に、実際にCO2が発生しますが、これは電気を使う日本の排出量としてはカウントされないのです。国際的な炭素勘定の“抜け穴”となるおそれがあります」と熱帯林行動ネットワークの川上豊幸さんはコメントしています。

財務省貿易統計によれば、木質ペレットの輸入量は2012年の約7.2万トンから2019年には約161万トンと20倍以上に急増しています。

NGOグループは、経済産業省や林野庁に、現在の再エネFITガイドラインの見直しを求めていく予定です。共同声明の全文は、以下をご覧ください。


2020年12月3日
声明PDF

NGO共同声明:大規模な燃料輸入を伴うバイオマス発電は中止すべき

 先日、菅首相が、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという方針を示しました。私たちは、再生可能エネルギーの促進は重要だと考えています。しかし、燃料輸入を前提とした大型バイオマス発電を促進することは、生物多様性を脅かし、気候変動をかえって加速させる恐れがあることを懸念しています。

 バイオマス発電は「環境にやさしい」として、私たちの電気料金に上乗せされている賦課金を使い、FIT(再生エネルギー固定価格買取制度)で促進されています。しかし、近年、海外からの燃料輸入を前提とし、大規模なバイオマス発電所の建設が増え、結果的に木質ペレットやPKS(パーム椰子殻)などの燃料輸入が急増しています。

 特に、木質ペレットの輸入量は2012年の約7.2万トンから2019年には約161万トンと20倍以上に急増しています(注1)。数年後には、北米からの輸入を中心に急増し、300万トンを超えることが予想されます。しかし、アメリカやカナダなどでは、輸出用の木質ペレット生産の急増に伴い、湿地林などの天然林などが皆伐され、生態系に大きな影響を与えていることが報告されています(注2)。カナダでは、木質ペレット生産のための森林伐採が、カリブー(トナカイ)の生息地や先住民族にも影響を与えていることが指摘されています(注3)。ペレット生産にあたっては、原料として製材所の端材を使っていると説明されることもありますが、実際には、輸出向けのペレット生産の拡大に伴い、原料として丸太も使われています。また、伐採量も拡大し、本来なら経済的な理由で伐採が入っていない湿地林なども伐採されている状況です。

 大規模なバイオマス燃料生産は、生産地の森林減少・劣化を引き起こし、生物多様性に大きな打撃を与えると同時に、気候変動をも加速させます。現在、バイオマス発電は「カーボン・ニュートラル」とされ、自動的にFITの対象になっています。しかし、バイオマス燃料生産により森林減少・劣化が生じる場合、森林や土壌が蓄えている炭素ストックが減少し、その分の二酸化炭素が大気中に放出されます。たとえ、森林が回復したとしても、それまでの数十年、何百年以上もの間、大気中にCO2が増加した状態が続きます。日本に運ばれた燃料は、発電所で燃焼時に、CO2が発生しますが、これは日本の排出量としてはカウントされません。

また、海外からの燃料輸入は、輸送距離が長いため、当然、大量のGHGを排出します。たとえば、日本は、カナダから多くの木質ペレットを輸入していますが、その輸送にかかるGHG排出量は膨大で17.2g- CO2/MJにも及び、ライフサイクル全体でのGHG排出の7割以上を占めます(注4)。このようにバイオマス発電は、決してカーボン・ニュートラルではありません。森林減少・劣化、加工、輸送、燃焼を含めたライフサイクルにわたるGHG排出について評価し、考慮に入れるべきです。

 現在のFITの事業計画策定ガイドラインには、バイオマス発電事業のライフサイクルを通じたGHG排出評価は盛り込まれていません。また、森林バイオマス燃料に関する持続可能性の評価についての記述はあいまいであり、事業者まかせになっています。甚だしい場合は天然林が皆伐される等の森林生態系への悪影響を防ぐことはできません。GHG排出の削減が見込めないような事業、森林の減少・劣化を伴うような事業は、すでに認定されているものも含めて、FITの対象から除外するべきです。

 私たちは、バイオマス発電は、小規模分散型で、燃料の地産地消およびカスケード利用を原則とし、熱電併給を行うことが望ましいと考えています。輸入燃料を前提とした大型バイオマス発電所は、生物多様性や気候の危機をさらに加速させるため、中止すべきだと考えます。

なお、非効率な石炭火力発電所でバイオマス燃料を混焼することによって、「高効率」とみなすという動きも報じられていますが(注5)、これは石炭火力発電所の延命の為のトリックに過ぎず、認めるべきではありません。

(注)
1)財務省「貿易統計」 より算出
2)Stand. Earth. “Investigation – Canada’s growing wood pellet export industry threatens forests, wildlife and our climate.” Apr. 2020.
Partnership for Policy Integrity and Dogwood Alliance. “Carbon Emissions and Climate Change Disclosure by the Wood Pellet Industry – A Report to the SEC on Enviva Partners LP.” Mar. 2016.
3)Stand. Earth. “Investigation – Canada’s growing wood pellet export industry threatens forests, wildlife and our climate.” Apr. 2020.
4)経済産業省委託・三菱UFJリサーチ&コンサルティング「バイオマス燃料の安定調達・持続可能性等に係る調査」(平成31年2月)p.108より算出
5)2020年10月9日付日経新聞朝刊「脱石炭で電力が奇策」

(連名団体)
国際環境NGO FoE Japan、気候ネットワーク、環境エネルギー政策研究所、「環境・持続社会」研究センター、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、国際環境NGO 350.org Japan、バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)、一般財団法人 地球人間環境フォーラム、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワーク、全国ご当地エネルギー協会、おらってにいがた市民エネルギー協議会、ARA、Australian Forests and Climate Alliance、Biofuelwatch、Dogwood Alliance、Estonian Forest Aid (Eesti Metsa Abiks)、Fern、Friends of the Earth International、Friends of the Earth United States、Global Justice Ecology Project、Healthy Forest Coalition Nova Scotia、Leefmilieu、Mighty Earth、NOAH Friends of the Earth Denmark、NRDC (Natural Resources Defense Council)、Partnership for Policy Integrity、Pivot Point、Rainforest Action Network、Rettet den Regenwald e.V.、Save Estonian Forests、Solutions For Our Climate (SFOC)、Southern Environmental Law Center、WOLF Forest Protection Movement、Wild Europe

【関連動画】

【関連資料】
見解:バイオマス発電は「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」ではない
「バイオマス発電をめぐる要請書 FIT法の目的である『環境負荷の低減』の実現を」
「バイオマス発電に関する共同提言」
何が問題? H.I.S.のパーム油発電Q&A
声明:FITバイオマス発電に温室効果ガス(GHG)排出評価を!――学識者ら276人

 

関連するプロジェクト