福島第一原発事故の賠償負担金と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ開始、2020年10月1日から

9月3日、eシフトより、消費者庁および内閣府消費者委員会への要請を提出しました。
9月4日、FoE Japanより、「電力の小売り営業に関する指針」(改訂案)へのパブリックコメントを提出しました。


2016年から2017年にかけて大きな議論がありながら決まった「福島第一原発事故の賠償費用と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ」がいよいよ10月から始まります。 本来、東京電力および原子力事業者が責任をとり負担すべき費用を消費者が負担するというしくみで、大きな問題があります。

具体的にこの2つです。

●賠償負担金: 事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの不足分の一部2.4兆円が、2020年以降託送料金で回収されることになった。年間約600億円程度が、40年間にわたって回収される。

●廃炉円滑化負担金: 円滑な廃炉を促す環境を整備する観点から、2013年に廃炉に伴って一時的に生じる費用の分割計上を可能とすることを措置し、この分は小売規制料金により費用回収が認められていたが、2020年以降は託送料金で回収することとなった。

主な問題点はこちら(詳しくは、末尾に当時の活動資料をまとめました。)
1.東京電力の経営陣、株主、債権者の責任が問われていない
2.「原発の事故処理・廃炉費用が莫大」が明らかになったいま、まずは政策変更をすべき
3.今後の大事故についても、同様に国民負担にすることができてしまう
4.電力自由化の趣旨に反する
5.国会での議論もない拙速で限定されたプロセスで決められた


具体的な託送料金の変更についてはこちらです。
ここでは低圧供給における託送料金平均単価(東京電力ウェブページより)について、示しています。(このほかに、高圧、特別高圧があります)
2020年10月1日から2つの上乗せが始まりますが、同時にこれまで(2005年~2020年9月まで)行われていた「使用済燃料等既発電費相当額」の上乗せが9月30日で終了し、入れ替わるかたちになります。
そのため、託送料金の「変更額」だけをみれば大きくなく、経産省での確認審議はこの「変更額」に対して行われているのです。
託送料金の値上げになるところと値下げになるところがありますが、値上げの場合でも、コロナの影響により1年間は据え置きされることとなっています。

<託送料金相当額(低圧、税込)と原発関連の費用> 東京電力ウェブサイトなどから作成

 北海道電力エリア東北電力
エリア
東京電力
エリア
中部電力
エリア
北陸電力
エリア
関西電力
エリア
中国電力
エリア
四国電力
エリア
九州電力
エリア
託送料金平均単価
(税込)
9.6410.689.439.918.598.599.129.479.13
電源開発促進税0.420.410.410.410.410.410.430.410.42
使用済燃料等
既発電費相当額(A)
0.050.060.110.080.060.160.060.130.10
今回の変更(B)▲0.010.060.03▲0.03▲0.010.05▲0.010.180.05
賠償負担金+
廃炉円滑化負担金
(=A+B)
0.040.120.140.050.050.210.050.310.15

↑賠償負担金と廃炉円滑化負担金それぞれの内訳は示されていない。

経産省から示されている「変更内容」はこちら。使用済燃料等既発電費相当額との差し引きでの変更額のみが示されています。これだけでは、内容は分かりません。

これまでの経緯

7月17日:各原子力事業者が経済産業省に、賠償負担金と廃炉円滑化負担金について承認申請を提出
7月22日:経済産業省が承認
7月28日:一般送配電事業者から経済産業省に託送供給等約款の変更認可申請(値上げの場合)及び変更届け出(値下げの場合)
7月31日:経済産業大臣から電力・ガス取引監視等委員会および消費者庁の意見を打診。
8月6日:電力ガス取引監視等委員会で審議・回答 8月5日:消費者庁から内閣府消費者委員会に意見を求める。  
8月7日~20日:内閣府消費者委員会のもとに「電力の託送料金に関する調査会」を設置して議論。
8月28日:内閣府消費者委員会より回答。

8月6日~:パブコメー「電力の小売営業に関する指針」(改定案)に対する意見募集について(9/7〆切)
「電気料金に公益性の観点から含まれている負担金額の請求書等への内訳明記」について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620220015&Mode=0
9月末:「電力の小売り営業に関する指針」改定
10月1日~:2つの負担金の上乗せ開始

明らかになった原子力事業の破綻

FoE Japanも含め、多くの環境団体や消費者団体が上記のような問題点を訴えてこの制度に反対をしました。いよいよ、実施を前にした最終段階ですが、現在の議論は「消費者への説明」です。 このような問題があることは、消費者に広く周知されなければなりません。そして私たちも理解し、社会全体として原子力のあり方を見直す必要があります。
賠償負担については、責任主体である原子力事業者だけでは負担しきれない、事後的にでも消費者に負担を求めなければ成り立たないということが改めて明示されています。
2016年の議論で、確保すべき資金の全体像として「21.5兆円」と整理されましたが、そもそもこの金額も不十分で低い見積もりであり、35兆~80兆円にもなりうるという試算もあります。(日本経済研究センター、2017年3月7日



今後、廃炉費用や賠償費用が21.5兆円を超えて必要になった際に、同様にまた託送料金に追加ということにもなりかねません。2016年の議論で経済産業省は、「今回限り」と繰り返していましたが、二度と追加されることがないよう、引き続き監視していかなければなりません。

また廃炉円滑化負担金についても、本来は原子力事業者が負担すべき費用です。原発は消費者が広く負担して支えなければ成り立たない事業だということがここでも示されています。廃炉を円滑に進めやすくするとの名目で導入されたのですから、脱原発の政策決定をしたうえで、現在稼働している原発についても、速やかに廃炉に踏み切るべきです。

エネルギー基本計画の改訂(第6次エネルギー基本計画)が議論されようとしている今、このような原子力事業の限界、矛盾を改めて訴えていく必要があります。「消費者への説明」については、まずはこの制度を導入した国や原子力事業者が、国民・消費者に対して説明をする必要があります。 「電力の小売営業に関する指針」では小売電気事業者(新電力含む)に対して、「電気料金に公益性の観点から含まれている負担金額の請求書等への内訳明記」を望ましい行為として求める方向ですが、「賠償負担金と廃炉円滑化負担金」と具体的に明記し、努力義務にとどまらず表示が徹底される必要があります。

アクション

◯パブコメだそう
パブコメ:「電力の小売営業に関する指針」(改定案)に対する意見募集について(9/7〆切)
「電気料金に公益性の観点から含まれている負担金額の請求書等への内訳明記」について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620220015&Mode=0

ポイント
ー賠償については本来東京電力が責任をとるべき、廃炉費用については原子力事業者が負担すべき費用です。
小売電気事業者からの情報提供は当然必要ですが、小売電気事業者に取り組みを求める以前に、国や東京電力、原子力事業者が、ウェブサイトなど様々な方法で説明することが前提です。また原子力事業の破綻、限界を改めて直視し、原子力事業自体を見直すべきです。
ー「電気料金に公益性の観点から含まれている負担金額」は、「2020年度より託送料金による回収が始まる賠償負担金と廃炉円滑化負担金」として明確に記載すべきです。
ー「発電事業等に係る費用として回収されるべき費用であって、公益性の観点から託送料金又は賦課金により回収するもの」は、「本来東京電力および原子力発電事業者が責任をとって負担すべき費用であって、託送料金により回収する賠償負担金および廃炉円滑化負担金」とすべき。
ー「望ましい行為」として小売電気事業者の努力を求めるのではなく、記載しないことを「望ましくない行為」として義務化すべき。
ー賠償負担金と廃炉円滑化負担金のそれぞれについて、名称、詳細内容、金額を明記すべき。

◯経済産業省や消費者庁、内閣府消費者委員会に意見を送ろう!
経済産業省のウェブサイトで、賠償負担金・廃炉円滑化負担金についてわかりやすく説明するよう求めよう。
こちらから各省庁に意見を提出できます。
https://www.e-gov.go.jp/policy/servlet/Propose
ー賠償については本来東京電力が責任をとるべき、廃炉費用については原子力事業者が負担すべき費用です。
ー賠償費用の上乗せが繰り返されることのないように
ー努力義務として小売電気事業者に任せるのではなく、説明・表示の義務化を。
ー消費者にわかりやすく賠償負担金と廃炉円滑化負担金の内訳と説明の明記を!

◯電力会社の切り替え、パワーシフト!  
最後に、消費者としては、原子力事業を持つ電力会社に対して電気料金そのものを支払わないという意思表示も必要です。
おうちの電気や事業所の電気の支払い先は、2016年度から選べるようになっています。
原発を持つ電力会社にはNoの意思表示、再エネを重視する電力会社を選びましょう!
具体的な電力会社はこちら  ➡http://power-shift.org/

参考資料

・内閣府消費者委員会の「電力託送料金に関する調査会」では、消費者の立場から妥当性や消費者への説明について審議が行われました。
8月7日の会合で示された資料がまとまっています。
 https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/007/shiryou/index.html
8月20日に示された「調査会としての意見案」では、消費者のへのわかりやすく丁寧な情報提供や説明が必要、ということも書きこまれています。
  https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/009/shiryou/index.html
・8/6に電力ガス取引監視等委員会でも審議、資料4の冒頭に経緯と料金の変更額について記載あり。  https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc/286_haifu.html

2016~2017年のFoE Japanやeシフト、パワーシフト・キャンペーンの活動

・FoE Japan声明:事故処理・賠償費用の託送料金への上乗せに反対 東電の責任をあいまいにした国民負担増加は許されない(2016年12月)  https://www.foejapan.org/energy/stop_restart/161209.html
・原発の事故賠償・廃炉費用を託送料金で回収? ~議論のその後(2017年5月)
 https://foejapan.wordpress.com/2017/05/15/hairobaisyo/
・2017年8月のパブコメ呼びかけ(電気事業法施行規則令の改訂時)
  https://foejapan.wordpress.com/2017/08/04/publiccomment-2/
・パブコメの呼びかけ(2016年12月)
  https://publiccomment.wordpress.com/2016/12/20/baisyohairo/
・経済産業省ヒアリング(2017年1月)
  http://e-shift.org/?p=3378  
・新電力に廃炉負担アンケート実施、約30社からの回答(パワーシフト、2016年11月)
  http://power-shift.org/activity_161124/
・声明:「原発コスト安」は嘘だった(パワーシフト、2016年9月) -国民への8.3兆円負担転嫁ではなく、原発政策の転換を
  http://power-shift.org/info/160921/

 

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