『わたり土湯ぽかぽかプロジェクト』を始めたわけ

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「福島ぽかぽかプロジェクトが始まったわけ」 (10分)

「除染がはじまって効果があがるまで、せめて子どもたちを一時避難させて」
こんな切実な声にこたえて、2012年1月~3月、「わたり土湯ぽかぽかプロジェクト」を実施、渡利の親子や妊婦さんに線量の低い土湯温泉での短期保養を支援しました。全国の皆さんからのご寄付のおかげで、延べ1600人以上にご利用いただきました。

対象を福島市、伊達市、伊達郡に広げて、「福島ぽかぽかプロジェクト」として5月より第2期、9月から第3期を実施しました。放射線防護や原発事故被害者支援法案に関するセミナーの開催、他の保養プログラムの紹介など、次の一歩を踏み出すきっかけづくりをお手伝いすることができました。
第1期報告 >第2期報告 >第4期までの報告とお礼[PDF] >第2~4期収支報告[PDF]

プロジェクト開始の背景と経緯

「年20ミリシーベルト」を避難基準として運用する国に対して、市民団体は、幅広く「選択的避難区域」を設定し、住民が避難するかとどまるか選択できる区域を求めてきました。しかし国は頑なに態度をかえず、そのために悲劇が起きています。渡利地区の状況を見てみましょう。

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福島市渡利地区は、福島第一原発からおよそ60kmに位置します。
阿武隈川の対岸に住宅街が広がり、川と山林に挟まれた平地に、6,700世帯、16,000人が暮らしています。
県庁のある中心部まで橋を渡って歩いていける距離にあります。

明らかだった高線量、住民の要求に応えない政府

渡利地区の空間線量 2011年6, 7月(クリックして拡大)


渡利地区の放射能汚染が深刻なことは早い段階から明らかでした。2011年6月、福島市の測定で、平ヶ森、大豆塚などで、毎時3.2~3.8マイクロシーベルトを観測されました(右図)。

6月30日、NGO6団体が政府交渉を実施しこの問題を指摘、「渡利地区を、特定避難勧奨”地域”に即刻指定すべき。少なくとも住民に対する説明会を実施すべき」と要求しました。

しかし、政府は要求に対して 「モニタリングを強化する」と回答しただけでした。7月上旬に文部科学省が実施した自動車サーベイでも、渡利地区に高線量の地域が面的に広がっていることがわかりました。

7月19日、福島で実施した政府交渉でも市民団体側は再びこの問題を指摘。渡利の人々がリスクを正しく理解したうえで、自らの判断で避難できるように説明会を開催すること、避難に対する賠償がきちんと支払われるべきであることを主張しました。しかし、政府側はまたしてもこの要求を無視しました。

7月24日には、福島市は除染モデル事業を実施し、小学校の通学路などを市民を動員して除染しました。しかし結果は芳しいものではありませんでした。福島市が公表した測定結果によると、線量が低減した箇所もありましたが、逆に増加した箇所もあり、除染後も2.0 µSv/h前後の高い値がみられ、除染による空間線量の減少率は、除染直後の福島市の計測ですら、3割弱にとどまりました。

8/18~22、国はようやく、渡利・小倉寺(おぐらじ)を特定避難勧奨地点に指定するか否かを決めるため、詳細調査を実施しました。しかし、この詳細調査は、あらかじめ国が「線量が高い」と判断した一部の地域を対象としただけであり、10分の1ほどの世帯しかカバーしていませんでした。

住民の苦悩、汚染の実態――市民団体による調査

9月に入って、福島老朽原発を考える会とFoE Japanは、渡利の住民を対象に、渡利の放射能汚染の実態や国の避難政策の問題点、低線量被ばくや内部被ばくについて連続勉強会を開催。のべ310名もの住民が参加し、活発な議論が行われました。

勉強会を通じて、渡利の住民の多くが、高い線量に日々不安を抱えながら、仕事や家庭の事情などから避難できずにいるいこと、政府の避難勧告や賠償の保証さえあれば避難に踏み切れたであろう人が多くいるという実態があきらかになってきました。

9月14日、福島老朽原発を考える会とFoE Japanは、神戸大学の山内知也教授に依頼し、渡利における空間線量および土壌汚染調査を実施しました。その結果、空間線量が依然として高い水準にあることのみならず、深刻な土壌汚染の実態(最高で30万ベクレル/kg以上、5箇所中4箇所でチェルノブイリの特別規制ゾーンに相当)が明らかになりました(下図)。

左:渡利地区の空間線量
右:土壌汚染の状況 
どちらも9月14日の調査より
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この状況に危機感を感じた渡利の市民団体「Save Watari Kids」は10月5日、国の現地対策本部と市に対して、①渡利地区を特定避難勧奨「地域」に指定(世帯ごとではなく、地区全体を指定)、②子ども・妊婦のいる世帯には厳しい避難基準の適用――などを求める要望書を提出しました。

動かない国と市、怒る住民

10月8日、事故後7か月にようやく国と市は、渡利・小倉寺地区を対象とした住民説明会を実施しました。しかし、この場には、上記の詳細調査の対象となった10分の1ほどの世帯にしか通知は届きませんでした。

冒頭、国と市は、詳細調査の結果を発表し、国が定めた年20ミリシーベルト基準に該当する毎時3マイクロシーベルトを超える世帯が2世帯あったが、避難を希望しなかったため特定避難勧奨地点指定は見送ったこと、そのほかの世帯は基準を下回ったため、特定避難勧奨地点には指定しないこと、除染を優先的に実施することを述べました。

当然、出席した住民たちは怒りました。あとから、渡利に住む方が、「おとなしい福島の住民たちがあれだけ怒ったのにはびっくりした」と言っていたほどです。

住民たちが主張したのは、次のようなことでした。
――詳細調査は、一部地域のみ。全世帯を調べてほしい
――南相馬市は子どもや妊婦のいる世帯は、2.0 µSv/h以上を特定避難勧奨地点に指定している。なぜ福島市では指定しないのか
――10µSv/h以上で、線量計が振り切れる箇所があちこちにある

――除染はいつになったらできるのか
――除染が済むまで、子どもたちを一時的に避難させてほしい
――避難したい世帯は避難し、避難費用は賠償するべき。残る人は残る人で高い線量にさらされることに対する補償をするといった措置をとってほしい
――特定避難勧奨に関して、地区指定を行ってほしい
――全世帯むけの説明会を、再度開催してほしい

しかし、国も市も、住民たちの要請や疑問に明確に答えませんでした。
10/8激論5時間:渡利での住民説明会の模様[PDF]

10月28日には、怒った住民たちが、東京にきて、参議院議員会館で、国の原子力災害対策本部や文科省、原子力安全委員会と直接交渉を行いました。政府側は、「誠意をもって検討する」と答えたものの、結局のところ、住民の要求に答えることはしませんでした。
10/28政府交渉報告[PDF]

国や市は、「徹底的に除染を行う」としています。しかし、除染しても山から土や水が流れ込む渡利の地形的な特質から、除染の効果は限定的です。何よりも除染がいつから開始できるのか、どの程度時間がかかるのか、現在のところめどがたっていません。

被ばくし続ける住民を放置してはならない――子どもたちの一時避難を!

除染を言い訳に、子どもも妊婦も高い線量に縛り付けるような国の政策は、人道上の罪といっても過言ではありません。いまこのときにも、渡利の子どもたちは高い放射線量の中で通学し、遊び、生活しています。せめて除染の効果がでるまで、子どもたちの避難・疎開・保養を進めることが重要です。

「わたり土湯ぽかぽかプロジェクト」は、そんな渡利の状況から発足しました。Save Watari Kids, 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、福島老朽原発を考える会、FoE Japanの4団体で運営します。活動を行ってきた渡利を中心に、大波・南向台・小倉寺も対象にしています。

さまざまな理由で渡利に生活の基盤を置かざるをえない家族の子どもでも空間線量をなるべく下げるために、近隣の線量が低い土湯温泉に、子どもたちの一時避難を実現させます。うまくいけば、対象地を他の線量の高い福島市の地区にも広げていきます。

プロジェクトを進めると同時に、引き続き、国の避難政策の問題を訴えていきます。避難基準の年20ミリシーベルトは、厳格な放射線管理が行われている放射線管理区域の4倍近く。基準そのものの見直しが必要です。

これは渡利だけの問題ではありません。福島の、そして日本全体の問題です。
渡利の子どもたちを守るために、みなさまのご支援をお願いします。

関連情報:
「なぜ避難勧奨地点にならないのか!? 苦悩する福島市渡利地区」(12/8 朝日ニュースター)

<参考>渡利問題これまでの動き

2011/6/17・20市の測定: 
平ヶ森 公務員アパート1号棟・2号棟間公園:3.30μSv/h
平ヶ森 市住1号棟・2号棟間公園:3.83μSv/h
大豆塚 ゴミ集積場側溝枡:3.56μSv/hなど
7/5~7/8国の測定:
自動車サーベイ 平ヶ森:3.17μSv/h、来迎山:3.32μSv/h、弁天山:3.11μSv/h
7/24除染モデル事業
8/18~22国による詳細調査(一部世帯のみ)。詳細調査を行われた世帯のうち、渡利で162世帯、小倉寺で118世帯、南向台で29世帯で、50cm高2μSv/h以上を計測。
9/14福島老朽原発を考える会、FoE Japanが、山内知也・神戸大教授に依頼し渡利地区の放射能汚染調査を実施。薬師町水路で1m高3.87μSv/h、50cm高5.30μSv/h、渡利小学校モデル除染地区の通学路で、測定した10箇所中、4箇所において、50cm高2.0μSv/hを超える。また、高い土壌汚染レベルが明らかに:町内の水路307,565Bq/kg、神社157,274 Bq/kgなど。5か所中4箇所でチェルノブイリのもっとも厳しい規制ゾーンに相当するセシウム量。
避難区域外の「福島」で今、生じていること ~大波・渡利・小倉寺における情勢~
福島市渡利地区における土壌中の放射能調査(概要)
放射能汚染レベル調査結果報告書~渡利における土壌汚染レベル
参考資料:福島市渡利地区における放射線量調査結果<空間線量>(概要)
10/5渡利住民有志、市および現地対策本部に要望書提出、避難区域指定を求める。
10/8説明会(一部世帯のみ)  >動画ダイジェスト
市・国 ・・・「特定避難勧奨地点に指定する世帯はない」
住民側・・・「避難区域指定を」 「詳細調査のやり直しを」 「説明会の仕切り直しを」
「子ども・妊婦の配慮基準が、南相馬市と福島市とで違うのはおかしい」
10/28政府交渉/要望書の提出  >報告はこちら
住民側「避難区域指定を」「詳細調査のやり直しを」「説明会の仕切り直しを」「除染が効果を発揮するまで、子ども妊婦の一時避難を」
政府側は住民の要望に応えず。
11/28薬師町の民家宅で、市の測定で1メートル高で2.95マイクロシーベルト/時、50cm高5.45マイクロシーベルト/時を記録
12/8同民家宅の祖父、市と国に対して、地域一体の避難区域指定を要望 >詳細

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