森林を取り巻く問題 失われる生物多様性
森林が減少・劣化によって動植物の生息場所が失われたり(※)、生物多様性が低下したりするなどの自然環境に対する影響も生じます。
また生物多様性の減少と関連して外来種による在来種の駆逐という事態も生じています。生物多様性は、G8会合で議題にあがったり、生物多様性条約の締結などその関心が高まっています。
では、「生物多様性」とは何でしょう?
生物多様性条約の定義にはこうあります。
「陸上、海洋およびその他の水中生態系を含め、あらゆる起源をもつ生物、およびそれらからなる生態的複合体の多様性。これには生物種内、種間および生態系間における多様性」
・・・地球上にはたくさんの個別の生物が、それぞれに関連性を有しながら生息しているということです。
生物多様性には、次の3つのレベルがあるといわれています。
①遺伝的多様性-同種内で遺伝子が多様であること(個体ごとの差異)
②種多様性-種が多様であること
③生態系多様性-生物、環境などにより成立している生態系が豊富に存在していること
森林と野生動植物
現在、地球上には300万~1,000万という種が存在し、うち75%は熱帯林に生息すると言われています。熱帯林は、その構成樹種の豊富さ、そこを生息場所にする生物の豊富さで生物多様性を育み、また維持するうえで重要な役割を果たしています。熱帯だけでなく固有種の割合が高いマダガスカル、小笠原などの島々の生物を保護することも生物多様性を保全するうえで重要です。
ですが、熱帯林の消失、減少により野生生物の生存が脅かされています。マダガスカルではキツネザルが絶滅の危機に瀕し、インドネシアのスマトラサイ、スマトラゾウなどがコーヒー農園のために絶滅に瀕しています。
森林を生息する動物は、他の動物や植物と密接な関係を築いており、その空間を提供している樹木の消失は、他の生物との繋がりを断ち切ることになります。また、希少であるために狩猟され密輸の対象になります。哺乳類や鳥類など目につきやすい動物の絶滅などは大々的にいわれますが、動物と同様に昆虫や樹木なども一目につかず絶滅に瀕し、絶滅している種も相当数存在しているはずです。
用語解説
外来種 ・・・本来の生息場所でない地域に人為的に持ち込まれた種。また、過失による移入種。(ブラックバス、マングース、セイヨウタンポポなど)