森林を取り巻く問題 土地利用の転換
森林を伐採し、伐採跡地を農地や宅地、工場用地などに転換することを土地利用の転換といいます。天然林を伐り開いての人工林化も土地利用の変化です。森林としての利用ではなく、森林であった「空間・土地」を確保することの必要性から行われるものです。
土地利用の転換は、私たちの生存のために不可欠のものであり、社会的、環境的に配慮したうえでなされるべきです。しかしながら、常にそれらに配慮した形で行われているわけではなく、さまざまな問題を生じさせながら土地が転換され、利用に供されています。
①農地転換
昨今、代替燃料として注目されているバイオエタノールやパームオイルなどは、森林を伐採し、その土地を農地化(プランテーション化)することで生産されます。農地化のために土地を追われるなど社会的な問題も引き起こします。トウモロコシやサトウキビがバイオ燃料に供されることで、相対的に食に回る作物や耕作地が減少します。
②開発
産業的用途への転換鉱工業のための開発は、原料採取地と直結する地域が工業地化され、工場建設やそれに伴う地域住民の移転、労働者の移入、操業などを一連の流れとして行います。工場からの大気、河川などに対する廃棄物の排出、流出や投棄などによる公害の発生、地域住民に対する補償不徹底などの社会的な問題も生じています。
③人工林化
FAOのFRA2000によると、世界全体で年間に460万haの人工林が造成されていることになります。そのうちの300万haは天然林からの転換によるものです。天然林を直接人工林にしてしまい、構成樹種数の減少や生物多様性の低下などが伴うことも考えられます。
一度伐採した森林や荒廃した土地を人工林として再生させ、適切な管理下におくことは非常に有意義なことですが、適切な管理、経営のあり方や、土地の選定になどにも配慮して人工林化し、私たちの生活に役立てられるようにしていくことが求められます。
用語解説
バイオエタノール ・・・サトウキビ、トウモロコシなどの植物原料からつくられたエタノール。原油への依存体質を是正するために推進されている。
パームオイル ・・・パームヤシからとれるオイル。マレーシアとインドネシアの二カ国で世界全体の87%を生産している。