森林を取り巻く問題
違法伐採(2)違法伐採と闘う国際社会
92年リオデジャネイロでの地球サミット以降、持続可能な森林管理の必要性が叫ばれました。世界の森林の減少が止まらないからです。とりわけ、森林減少が著しい東南アジアや極東ロシア、南米などでは、違法伐採が横行しており、まず違法伐採に対処することが必要との認識が生まれてきました。
1997~ 国際的コンセンサスの形成
97年、米・デンバーでのG8サミットで、「G8森林行動プログラム」作成が合意され、98年の英・バーミンガムサミットで発表された行動プログラムに違法伐採への取組みが盛り込まれました。2000年九州沖縄サミットでは「違法伐採との闘い」がコミットされ、違法伐採問題に対して国際的に取り組むことへのコンセンサスづくりが始まりました。
沖縄サミットの結果を受け、「森林法の施行に関する東アジア閣僚会合(FLEG)」が2001年インドネシアで開催されました。インドネシア、中国、タイ、フィリピン、ラオス、ベトナム、カンボジア、G8から日、米、英、独、EU、その他豪州の代表と、世銀、ITTO、FAOなど国際機関、環境NGOが参加し、違法伐採問題に積極的に取り組む旨の閣僚宣言が採択され、以下の項目が確認されました。
(1) 違法伐採問題に輸出入国双方が取組む。2国間・多国間協議,協力が必要
(2) 違法材の輸出入を排除する方策追求
(3) 政策決定に利害関係者の参加促進と透明性を高める
(4) 持続可能森林経営のため森林資源に依存する人々の経済面を改善
(5) 森林資源のモニタリングと評価の取組
(6) NGO、企業等にアドバイス要請
(7) G8諸国等へ支援や問題への取組み要請
(8) WSSD等で違法伐採問題等が扱われるよう努力
2002年になると違法伐採問題は様々な国際会議で話し合われました。3月の国連森林フォーラム(UNFF)で、持続可能森林経営を推進し、森林法規の実行や林産物貿易へ対処することが閣僚メッセージとして発表され、同様の項目が9月のヨハネスブルク地球サミット(WSSD)の実施計画でも確認されました。カナダでのG8サミットでは、森林行動プログラムの最終報告が発表され、違法伐採排除のための支援、輸出入排除の検討、法規実行や行政の取組み支援に今後も取り組む旨が確認されました。
2002~ 具体的対策へ向けての国際協力体制作り
FLEGでの成果から、02年は二国間・多国間での具体的協力体制も構築されるようになりました。英国-インドネシア、ノルウェー-インドネシア、中国‐インドネシア間で、法律の実行体制や取引の監視体制強化、合法木材の識別などを目指し、各国間での協力支援体制が構築されました。日本とインドネシア間でも同様の2国間協定締結とアクションプランの準備が進められました。
また、多国間でも取り組みが進みました。02年のWSSDの際に発表された「アジア森林パートナーシップ(AFP)」。これは、日本とインドネシアが主導し、アジア・欧米の関係国と国際機関、NGO、産業界のパートナーシップにより、違法伐採の抑制と森林火災の抑制、および荒廃地の復旧を目的とするものです。具体的活動へ向けて準備が進められました。
需要面での違法伐採対策に欠かせないのは、政府による公的な調達方針の策定です。調達の基本方針を示し、購入可能/不可の線引きをすることで、調達側、供給側の対応も具体的になり、議論を前進させる効果がありました。97年にオランダがいち早く策定したのに次いで、2000年にイギリス、01年にデンマーク、04年フランス、06年ベルギー、07年ドイツと続きました。こうした動きから欧州地域横断的な取組みとして2003年5月、EU-FLEGT行動計画が策定されたのです。
アメリカにも動き――水際対策の法制化
国際社会の要望や欧州の取組みを受け、アメリカでも動きが見られるようになりました。既存のレイシー法(Lacey Act)を改正することで、違法に生産・取引等された木材製品の取引や不正な記録改ざんやラベリングを禁止する水際対策を法制化しました。
レイシー法(1900年制定、1981年改正)はアメリカで最も古い野生生物保護法で、野生生物・魚類・植物の違法な売買を禁止する法です。違法伐採対策として、レイシー法の対象範囲が木材・木材製品へ拡大されました(08年12月改正、09年4月施行)。しかしここでは、合法性についての基準や指標は策定されておらず、米国税関がどこまで輸入申告の不正を見抜けるのか、実態の注視が必要です。
日本でできること
違法伐採を止めるには、生産国、消費国の双方の取り組みが不可欠です。伐採・流通に関わる住民、行政、企業、専門家、環境団体などが協力し、木材生産・取引の透明性を高め、持続可能な森林管理、そして生産地への正当な利益の分配が実現へ。消費国・日本でできることは間接的な「違法伐採抑制」であると認識した上で、私たちNGOはネットワーク活動を通じて取り組みます。