原発に向き合う世界と私たち
子ども年20ミリシーベルト問題
5月2日政府交渉を踏まえた質問に対する原子力安全委員会等からの回答へのコメント
2011年5月13日
やはり、4月19日の安全委員会の助言決定は、正式な決定ではない
5月2日に参議院議員会館で行われた政府交渉後、交渉の中で改めて回答を求めた点について、厚生労働省、文部科学省、原子力安全委員会から、福島みずほ議員に5月6日付で回答があった。下記は、回答のいくつかのポイントに対する交渉主催4団体のコメントである。なお、政府側の回答全文も公表する。
※5月2日政府交渉で 明らかになった事実および市民側からの質問はこちら
>厚生労働省回答
>文部科学省回答
>原子力安全委員会回答
●原子力安全委員会が4月19日に決定した助言は「正式な決定」か
(原子力安全委員会への質問3・4の回答について)
原子力安全委員会の4月19日会合には、斑目委員長をはじめ4名の委員が出席していた。5月2日の交渉で、その会合で決定した助言=子ども20ミリシーベルト基準について「差し支えなし」は、正式な決定だと述べていた。
安全委員会の今回の回答では、「正式な決定」について、2段構えとなっている。(1)4月19日の会合は法律に基づく正式な決定、(2)他方、「緊急でやむを得ない場合」などは法令などに基づかない異例の会合が許され、4月19日の会合はそれにあたる、というものだ。
1.4月19日の助言を決定した会合は、下記により「原子力委員会及び原子力安全委員会設置法」8条に基づく正式な会合とは言えない。
(1)委員長が会合に出席しているのに、委員長が会合を招集していない。実質的には事務方の都筑環境管理課長が仕切っている。[設置法8条に違反]
(2)4月19日の会合は正式な安全委員会としての通し番号もない。[議事運営規則第2条1項に違反]
安全委員会として正式な会合は下記のとおり。
4月18日 第23回臨時会議
4月20日 第24回臨時会議
(3)4月19日の会合は議事録も存在しない。仮に4月19日の会合が非公開であっても速記録は存在しなければならないがそれもない。[議事運営規則第6条第1項に違反]
2.「4月19日の会合は異例の会合」という見解について。そのような異例の会合で子どもに年20ミリシーベルトという重要な決定を出す必要などない。そもそも、「異例の会合」に正当性があるのか。
回答では、「緊急でやむを得ない場合」「原子力安全委員の時間確保が困難な場合」には、設置法や議事運営規則に基づかなくとも会議を開催できることを、地震発生当日の3月11日の安全委員会で決定したという(設置法施行令第5条・第9条準用)。しかし、この3月11日委員会は、配布資料も議事録も一切存在せず、そのような決定をしたという根拠を示すものは何もない。
(1)4月19日の助言決定の会合は、子どもに年20ミリシーベルトという基準に対する判断する重要なものである。このように重要な問題を「異例の会合」で決定することそのものに大きな問題がある。
(2)さらに、実態からすれば、委員長を含む4名の委員(5名中4名が出席)が集まっており、安全委員の時間は確保されていた。さらに、原子力対策本部から14時頃に助言要請を受け、15時頃から検討を開始し、実質1時間の検討で16時頃に助言を出す等の猛スピードで結論を出したが、そのようにあわてて結論を出すべきではなかった。将来を担う子どもたちの健康に関する問題からして、慎重な議論が行われるべきだ。
(3)そもそも、「異例の会合」を認めたという3月11日の安全委員会の議事録も存在しない状況では、自らの責任逃れのために、つじつま合わせをしていると言わざるを得ない。
●内部被ばくの問題について
文部科学省への質問8では、内部被ばくが「全体の被ばく量の2%程度」という交渉当日の発言について、その根拠となるデータ(セシウムを含む)や測定方法をたずねていた。しかし文科省の回答では、計算による一般的な推定手法を記しているだけで、基にしたデータ等は一切示していない。
また、内部被ばくの問題について安全委員会は、質問11の回答として、文科省の手法である計算ではなく、ダストサンプリングによる評価を行うべきだと述べている。
●放射線管理区域と同レベルの汚染場所で子どもが遊ぶことについて
保育所を管轄下に置く厚生労働省への質問1では、18才未満の労働が禁止されている放射線管理区域と同レベルの汚染場所で子どもが遊ぶことについての見解をたずねている。文科省は、この質問に対する回答を避け、18才未満の問題は「労働者の保護を図る観点から設けている」とだけ述べている。
そして最後に、「福島県内の保育所の子どもたちの安全・安心の確保に向け、・・・地元の意向も踏まえながら、適切に対応してまいりたい」と付け加えている。福島県内の父母達の声を聞くべきだ。
●判断の根拠としているICRPの国内法への取り入れについて
5月2日の交渉では、その前に行った4月21日交渉での確認・質問事項についても回答を求めていた。4月21日交渉後の質問では、子ども20ミリシーベルト基準の判断根拠としている、ICRPの3月21日声明や、2007年勧告をいつ政府見解として取り入れたのを問うているが、この点についてはいまだ回答がない。
2011年5月13日
グリーン・アクション、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)、国際環境 NGO FoE Japan