原発に向き合う世界と私たち
“欧州原子力共同体(Euratom)を廃止せよ!”、欧州市民の要求
福島第一原発事故は、世界の原発政策を揺るがそうとしています。
欧州連合(EU)は、福島第1原発の事故を受け、EU共通の原発安全基準を設定し、域内14カ国で稼働している143基すべての原子炉に対して早期に安全検査を実施することになりました。一方で、原発政策の見直しを求める市民の声が続々と上がっています。ドイツ各地で26日、国内にある全原発の廃炉を求める大規模なデモが行われ、約25万人が参加しました。
EUでは、原子力エネルギーの開発や市場開拓、資金提供などを担う欧州原子力共同体(Euratom)の廃止を求める要請書に、780団体、63万人もの市民の署名が集められ、欧州エネルギー委員長に手渡されました。Euratom廃止に向けた運動では、FoEヨーロッパも中核を担っています。
“欧州原子力共同体(Euratom)を廃止せよ!”、欧州市民の要求
核条約締結50周年記念に、ピエバルクス氏は多くの署名入りギフトボックスを受理
2011年3月23日 ブリュッセル
核開発を支持する欧州原子力共同体条約(注1)とEUの50周年記念に先立って、780団体と63万人の人々が欧州原子力共同体(Euratom)の廃止とヨーロッパ中の原子力発電の段階的撤去を要請しています。本日、欧州エネルギー委員長ピエルバルグス氏は、署名が数多く詰められた誕生日ギフトを受け取りました。また、このキャンペーンに取り組んでいる人々は、EU加盟国に対して、原子力条約からの脱退とその法的手段を考慮するよう促しました。
欧州エネルギー委員長 アンドリス・ピエバルクグス氏は、請願書を受理した後次のように述べました。“私たちには再生可能なエネルギーやエネルギー効率の推進に関しては、意見が一致しています。そして、この目的のために協力する必要があります。欧州原子力共同体や原子力発電への反対を示すこれらの要請書の数は印象的です。これらの欧州市民の声は、確実に考慮されるでしょう。
欧州反原子力キャンペーンのフランク・ヴァン・シャイク氏は、次のように述べています。“過去50年間、欧州原子力共同体条約は、原子力発電に対し不当で非民主的な財政支援を優先的に行なってきました。ヨーロッパ中の人々は、この条約が廃止されることを求めています。仮に廃止が行なわれないのであれば、加盟国はその主権を行使し一方的に撤退すべきです。また、この時代遅れの原子力への資金援助をやめるべきです。”
ドイツとオーストリアにおける国際法の専門家による幾つかの最新の研究は、EU加盟国が欧州原子力共同体から自主的に撤退することは法律上可能であると結論付けました。さらに、この撤退が、EUにおけるこれら加盟国の立場に影響を与えずに行なうことが可能であると述べています(注2)。
要請書では、欧州委員会、欧州議会および全てのEU加盟国に対し以下を求めています。
1.EU内において新たな原子力発電所や原子力施設の建設を停止または防止すること。
2.EU内の原子力発電を放棄するための計画に着手すること。
3.省エネルギーや再生可能エネルギーに対し大規模な投資を行なうこと。
4.ヨーロッパの公的資金によって原子力発電の支援を大規模に行なっている欧州原子力共同体を廃止すること。
最新の欧州世論調査(ユーロバロメーター)によると、EU市民の61%は、核廃棄物や事故の危険性による懸念から原子力発電の割合は減らしていくべきだと考えています(注3)。この要請書は、この報告をさらに強調するものです。
ピエバルクス氏は、27個の“おめでたくない誕生日ギフトボックスにつまった63万4千686の個人による署名と782の団体署名を”受け取りました。また、フランスとベルギーの反核活動家はこのギフトボックスを手渡しするために、リールからブリュッセルまでデモ行進を行ないました。活動家たちは放射能防護服にパーティー用の帽子をかぶり、ピエバルクス氏は署名のギフトを受け取った後、‘原子力反対誕生日ケーキ’を送られました。
欧州反原子力キャンペーン(注4)は、原子力がいまだに危険なものであり、核廃棄物という放射能の遺産を残すこと、さらに原子力は気候変動への解決策ではあり得ないことを強調しています。原子力の生産過程において、相当量の二酸化炭素が排出されるからです。さらに原子力発電には莫大な費用がかかるため、新たな発電所を建設することは経済的に大きなリスクを伴い、また公的資金の巨額の投入に常に依存しているのです。
“膨大な数のEU市民が原子力を欲していません。原子力事故は悲惨な状況をもたらし、放射性廃棄物は数千年ものあいだ残存します。私たちは、法外な原子力発電に多額の投資を行なう代わりに、再生可能で効率の高いエネルギーに投資をすることで私たちの気候を守るのです”と、ヴァン・シャイク氏は結論付けています。
注1) [↑戻る]
欧州原子力共同体は、1957年からEUの三設立条約の一つです。 欧州原子力共同体を通じて、EUは原子力発電に対する資金提供を優先的に行なっています。他の設立条約は、過去50年間において更新されていますが、欧州原子力共同体は1957年以来変更されていません。
詳細は次を参照:
https://www.foeeurope.org/activities/Nuclear/Advance_Briefing_Euratom.pdf
注2) [↑戻る]
たとえば、エアランゲンニュルンベルク大学の教授ベルンハルト・ウェゲナーによる。
https://www.gruene-bundestag.de/cms/publikationen/dokbin/170/170871.pdf (ドイツ語)
報告書の英語の要約は次を参照:
https://www.greens-efa.org/cms/default/dokbin/172/172224.summary_denunciation_of_the_treaty_estab@en.pdf
注3) [↑戻る]
https://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/280&format=HTML
注4) [↑戻る]
欧州反原子力請願キャンペーンは次の団体による連合です。atomstopp(オーストリア)、FoE ヨーロッパ(EU/ブリュッセル)、グローバル2000(オーストリア)、Réseau Sortir du Nucléaire(フランス)、ワイズ - 世界エネルギー情報サービス(オランダ)、原子力発電に反対する女性達(フィンランド)。
(翻訳:駒井英吾)
詳細はこちらから >https://www.million-against-nuclear.net/