原発に向き合う世界と私たち
福島原発事故における作業員の被曝に関する声明
2011年3月25日
2011年3月24日、福島第一原子力発電所で、東京電力の協力企業の作業員の方々3人が被曝しました。東京電力によれば、作業員から約170ミリシーベルト以上の線量を確認。そのうちの2名について、両足の皮膚に汚染を確認し、ベータ線熱傷の可能性があると判断されました。
原発事故以降、多くの作業員の方が過酷な条件下で生命や健康を脅かされながら作業を続け、負傷等により病院に搬送された方々もいます(注1)。事故の収拾のため被曝した作業員の方々に対して心よりお見舞い申し上げます。
このような事態を引き起こした東京電力および国等の関係者は、二重の意味でその責任を問われるべきでしょう。一つには原発事故そのものについての責任、二つ目は被曝についての責任です。
厚生労働省は先週、福島第1原発での緊急作業に限って、労働者が受ける放射線量の限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げました。この基準引き上げは、作業員が被曝したとき、東京電力が基準を順守していることを主張し、作業員による補償の受け取りを困難にする傍ら、作業員の生命・健康にリスクをもたらす可能性も否定できません(注2)。
今回の被曝の際の状況について、詳細は発表されていませんが、二人の作業員が長靴を着用していなかったなど、作業員の安全が守られていたのかどうかに疑問が生じます。
情報公開にも問題があります。東京電力による一連の情報では、負傷や被曝した作業員の所属が、東京電力の「協力企業」とのみ書かれており、今回の原発事故に伴う数々の負傷や被曝の状況や、その後の経緯については、一切報道されていません。
このような事故が繰り返されることがあってはなりません。FoE Japanは、日本政府と東京電力に対し、作業員の健康・安全を守ることを徹底すること、また一連の負傷や被曝に関して、その後の経緯も含めた情報公開を行うこと、そしてその負傷、被爆に対して十分な補償を約束することを求めます。
国際環境NGO FoE Japan スタッフ有志
注1) [↑戻る]
東京電力によれば、今回の事故に関連した作業員の負傷等は下記の通り(3月25日現在)。
・ 地震発生当初、発電所構内において協力企業作業員2名に負傷が発生し、病院に搬送
・ 東電社員1名が左胸を押さえて立てない状態であったため、病院へ搬送(3月12日)
・ 1号機付近で大きな音があり白煙が発生した際に4名が負傷し、病院へ搬送(3月12日)
・ 免震重要棟近傍にいた協力企業作業員1名の意識がないため、病院へ搬送(3月12日発生)
・ 原子炉建屋内で作業していた東電社員1名の線量が100mSvを超過し、病院へ搬送(3月12 日発生)
・ 東電社員2名が1、2号機中央制御室での全面マスク着用作業中に不調を訴え、福島第二原子力発電所へ搬送(3月13日発生)
・ 3号機付近で大きな音があり白煙が発生した際に11名が負傷し、福島第二原子力発電所等へ搬送。そのうちの1名を病院へ搬送(3月14日発生)
・ 3月22日午後10時頃、共用プールで仮設電源盤設置作業中の作業員1名が負傷し、産業医のいる福島第二原子力発電所へ搬送
・ 3月23日午前1時30分頃、共用プールで仮設電源盤搬送作業中の作業員1名が負傷し、産業医のいる福島第二原子力発電所へ搬送
注2) [↑戻る]
これに関連し、フランス・パリ大学のポール・ジョバン准教授(日本社会学)は、24日付ル・モンド紙のインタビューで「日本の放射線防護政策は、何より原子力産業の保護を優先する」として、原発作業員が白血病などを発症しても、めったに労災と認定されないと批判しています。
また、厚生労働省が今回の事故対策に限り、被ばく線量の上限を引き上げたことについて「この緊急措置は、作業員が死亡することになっても(東京電力が)補償請求を免れるための方便である可能性がある」と指弾しています。(2011年3月24日付産経ニュース「現場に踏みとどまる原発作業員に「死の危険」仏専門家が増援呼び掛け」)