原発に向き合う世界と私たち
原発はいらない-市民社会からの声が続々
世界中で原発政策・エネルギー政策に大きな変動が生じようとしています。中国政府は、新規原発の審査と承認を一時停止し、稼働中の全原発に対し緊急安全検査を実施することを決めています。ドイツ政府は、原発の運用年数の延長を凍結。スイス政府も、国内の原発の新規建設・建設を当面凍結することを表明しました。マレーシアでも原発反対の声が続々と市民社会から上がってきています。
一方で日本では、現に福島原発周辺で、文字通り生命を危険にさらして活動する人々がおり、退避を余儀なくされた人がおり、さらにじわじわと放射線汚染の悪夢が私たちの生活に迫ってきています。それにも関わらず、産業界や一部の行政関係者、政治家からは、日本の原発推進政策は揺るがないというような発言も聞こえてきています。
今回は、マレーシアの動きの一環として、ペナン消費者協会(CAP)とFoEマレーシアの声明を紹介します。
マレーシアに原子力発電所はいらない (抜粋)
ペナン消費者協会(CAP)
会長 S. M. モハメド・イドリス
2011年3月19日
ペナン消費者協会(CAP)とSahabat Alam Malaysia(FoE マレーシア)は、マレーシアにおける原子力発電所の建設計画に関する政府の見解に非常に失望しています。
エネルギー・グリーンテクノロジー・水相であるピーター・チン・ファークイは、マレーシア内閣は原子力庁からの報告を受けるまで、この件に関して決定を下さない旨述べました。しかし、私たちはこの問題に関していかなるレポートや調査も待つ必要はありません。
問題の核心は、原子力発電所が時限爆弾のようなものであること、この危険な技術を私たちがマレーシアの土地のいかなるところにおいても必要としてはいないということなのです。同様に世界のあらゆる場所においても、原子炉の増加はあってはなりません。地震と津波に続いて起きた福島原子力発電所での壊滅的な放射能漏出と爆発は、原子力によって引き起こされうる大きな破壊への厳格な警告なのです。
チェルノブイリやスリーマイル島、さらに福島での大惨事の経験は私たちがこのような事故によって決定的に壊滅的な影響を受けるかもしれないことを表しています。そしてこの惨事は、生命の喪失や障害、急性かつ慢性的な健康上の問題、収入・生活手段・資源の損失へと繋がり、その回復のために数世代におよぶ時間がかかるでしょう。その間、環境もまた深く汚染されてしまいます。
もう一つの大きな問題は核廃棄物の処理にあります。核廃棄物はどこに埋められ沈められようとも、その貯蔵庫において幾千年ものあいだ安全に維持されることを私たちは保証できません。したがって、未来の世代にそのような物理的かつ環境的な危険をもたらすことは、完全に不道徳的で不合理なことなのです。
日本での原発事故を受けて、多くの国々は新たな原子炉の開発計画を再検討しています。中国政府は安全基準が改定されるまで、原子力発電所の許認可プロセスを停止しました。ドイツ政府は、1980年以前に操業を始めた7つの原子力発電所全てを一時的に停止しています。また、タイ政府内閣総理大臣は5つの原子力発電所の建設計画の見直しと、原子炉に関する緊急対策およびテロリズムの標的としての可能性という2つの問題の詳しい調査を、エネルギー相に要請しています。
これらの動きは称賛に値しますが、十分ではありません。なぜなら既存の原子力発電所の完全撤去と適切な廃用が必要であり、また新たな原子炉は決して建てられてはならないからです。マレーシア政府には、核エネルギーへの計画を放棄することによって良き前例を掲げ、世界中の政府に対しこれに従うよう強く要請する義務があるのです。
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(抜粋・翻訳:駒井英吾)