フェアウッド
フェアウッドとは?
世界の森林問題を憂慮する私たち日本のNGOは、コピー用紙や印刷物、包装などの紙製品を利用するすべての企業や行政機関に 対して、持続可能な社会の実現に向けた企業の社会的責任の観点および予防原則に基づき、紙原料生産時の環境・社会影響に 配慮した紙製品の調達・購入を推進するために、古紙などの資源の有効活用を前提に、以下の6つの指針に沿った調達方針および 具体的アクション・プランを作成・公表すること、さらに供給業者に対して同様の取り組みを要求することを求めます。 また、紙製品の生産者、流通・小売業者に対しても、以下の指針に従った紙製品の生産や販売を進めていくことを求めます。
2004年10月6日
提言団体:
グリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
(財)世界自然保護基金ジャパン(WWF Japan)
(財)地球・人間環境フォーラム
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
共同宣言の背景と目的
世界の天然林は、毎年1250万ha(日本の面積の約1/3)の減少を続けており1)、これ以外にも伐採などによる
森林の劣化や植林地への転換が進んでいます。一部で森林再生の努力もされていますが、生物多様性が豊かな
天然生態系に回復するには、数百年という年月が必要であり、回復できない場合もあります。
世界の森林生態系保全のために、今、最も必要なのは、植林増進することよりも、まず森林減少を食い止めることです
私たち日本人は、子供からお年寄りまで、一人当たり毎年240kg以上の紙を消費しています(世界平均の4~5倍)2)。
日本の古紙利用率は世界的にもトップクラスですが、残りのバージンパルプについては、環境面で問題のあるものも多いのが
事実です。 日本の製紙原料の7割は海外からのものであり、毎年2500万m3(日本の木材総需要の3割弱)のチップを輸入して
います。
天然林の伐採に対して大きな需要圧をかけている要因のひとつに、こうした紙の利用があげられます。
この需要圧を減らすために、紙そのものの使用量を節減するとともに古紙、間伐材、製材残材、農業副産物の最大限の利用が
必要なのは言うまでもありません。しかし、現在、日本市場が紙の原料を調達している地域では、ここ数年で天然林そのものが
消失してしまう恐れのあるところもあるのです。法律や規制があっても、それが実践されなかったり、
また、その法律や規制内容が多くの利害関係者からみて不十分であったりする場合もあるのです。
購入・調達する側からの積極的な働きかけや支援があって、初めてこうした問題が取り除かれ森林生態系保全へと向かうことができます。
以下に我々が懸念している問題を簡単に紹介いたします。
【オーストラリア、タスマニア】
タスマニアでは、樹齢数百年にもなるオールドグロス林を含む生態系豊かな温帯雨林という世界的に貴重な森林生態系が
残されていますが、毎年22,000ha(山手線内の面積の3.5倍)もの天然林が伐採されています3)。
用いられている主要な伐採方法は大規模な皆伐で、主に製紙用チップとして産出され、その約9割が日本に向けて
輸出されています。こうした木材チップ用のオールドグロス林の破壊的な伐採は、
オーストラリア国民の80%が反対しています4)。
【カナダ、ブリティッシュコロンビア州】
カナダでは、伐採対象の90%を原生林が占めており5)、伐採量の大部分は大規模な皆伐によるものです6)。
カナダで最も伐採の進む地域のひとつであるブリティッシュコロンビア州では、皆伐や道路建設による土壌浸食や著しい水質汚染の
被害を被っており、サケなどの生物や食物連鎖全体を脅かしています。また、100万人もの先住民族の多くが亜寒帯林や温帯林に住んでいますが、
政府は先住民の土地権に対する主張を解決することなしに木材大企業に伐採認可を与えている例もあります。
【インドネシア】
インドネシアでは、スマトラの低地熱帯雨林が2005年以降すぐに消滅すると予想されています7)。
同国の巨大な製紙産業は原料の多くを天然林の皆伐に依存しており、さらに4割の原料は違法伐採によるとの報告も
されています8)。こうした破壊的な伐採によって、野生動物が生息地を奪われ、非木材林産物の収穫場所が減り、
水資源が枯渇しているだけでなく、土地を奪われて生活手段さえも失った住民もいます。
北米や欧州のビジネス界においては、数多くの企業が森林環境に配慮した紙の調達を進めています。
企業が社会に対する責任であるとの認識から紙の調達方針を設けて、情報用紙から製品の包装用紙まで、
調達する紙がどこの森でどのように伐採された原料で作られているのかを調べ、保護価値の高い森林からの原料を
含まないように供給業者に要求しています。
参考・引用文献
1) FAO, “State of the World's Forests 2001”, 2001.
2) Pulp&Paper International, “PPI Annual Review”, 2002.
3) The Wilderness Society, “Tasmanian forests strategy meeting”, 1999.
4) 1999年7月のQuantum Harrisによる世論調査、1999年12月のMorganによる世論調査など
5) グリーンピース・ジャパン, 「原生林破壊買いますか?」, 1999.
6) グリーンピース・ジャパン, 「原生林破壊買いますか?」, 1999.
7) Holmes, “Deforestation in Indonesia: a view of the situation in 1999”, World Bank, 2000.
8) Christopher Barr, CIFOR, ”Profits on paper: The political-economy of fiber, finance, and debt in Indonesia's pulp and paper Industries”, 2000.
9) FSCによるHCVFの定義:
https://www.fsc.org/keepout/content_areas/77/71/files/FSC_STD_01_001・・・2004_04.PDF
(2004年10月6日現在)の10ページ
アメリカのワイ川連合によるEndangered Forestの定義:
https://www.forestethics.org/pdf/EF.pdf(2004年10月6日現在)
10) TFTウェブサイト, https://www.tropicalforesttrust.com/(2004年10月6日現在)
用語説明
【オールドグロス林】
樹齢200年から1,000年の樹木が大勢を占める、生態系として成熟した森林。原生林とほぼ同じ。
【原生林】
天然(自然)のままで人手が加えられていない森林。
【天然林】
主として天然の力によって作られた森林。原生林と二次林が含まれる。
【森林減少】
森林から他の土地利用への変換、または、長期にわたり樹冠被覆率が10%以下に減少すること。
【森林劣化】
森林の一部が破壊され、生態系としての機能や森林資源の量が低下すること。
【皆伐】
森林内の樹木を全て伐採する方法。その域内の生態系は完全に失われる。
2010年3月10日