- 砂漠化の基礎知識
- 内モンゴルの砂漠化
内モンゴルの砂漠化
草原の砂漠化
内モンゴルでは、1960年頃から砂漠化が急速に進行しています。内モンゴル自治区の使用可能な草原の面積は、1960年の82万k㎡から、1999年には38万k㎡に減少しました。
右図は中国の砂漠分布図です。(緑部分が内モンゴル自治区。出典:徳岡正三著「砂漠化と戦う植物たち」)
青のラインは年間降水量400mmの等値線。降水量が東南ほど多く西北へいくほど少なくなります。
400mmは、木が大きく育つかどうかの境目といわれ、砂漠や沙地がこのラインより西北に分布していることがわかります。
「砂漠」と「沙地」
中国では、乾燥など厳しい気候条件下で自然に形成されたものは「砂漠」と呼び、人間の活動で砂漠に似た状態になったものを「沙地」と呼んで区別しています。
図をみると、西側に砂漠、東側に沙地が広がっているのがわかります。4つの沙地は、気候的には草原が広がるはずのところなのです。
砂漠化の原因
流動砂丘が連なる 豊かな森が残る自然保護区 |
要因Ⅰ-社会背景
1949年に成立した新中国は、定着型の農耕と牧畜を進めました。やがて食糧増産の必要から、内モンゴルへの漢民族の移住が始まり、人口は爆発的に増加しました(1k㎡当り:'53年5.0人→'83年16.3人)。
そして、社会変化に伴う生活形態の変化や人口増加は、過剰な土地利用を生み出しました。
要因Ⅱ-自然条件
中国北方はかつて海や湖があったことから、草原の下には砂が堆積しています。そのため植生が破壊し表土が剥がれると、砂の層が表出します。土地は保水力を失い乾燥し、地域特有の強風に砂が流されます。砂丘が形成され流動がおこり、砂漠化が加速する―これがこの地域の砂漠化のしくみです。
こうして内モンゴルでは、土地の再生能力を超えた過剰な開墾・放牧を原因に、砂漠化が進んでいます。
一方、開発から守られた自然保護区では、今も豊かな森が残されています。このことからも、砂漠化が人間の活動を背景に引き起こされたものだとわかります。
緑化の可能性
かつては豊かな草原地帯だったことから、この地域では10mも掘れば良質の地下水が得られ、草木を養う潜在能力を十分期待できます。適切な回復手段が講じられれば、緑化再生が可能です。
しかし、今も草原退化は進んでいます。砂漠化対策が遅れると、再生にはより多くの時間がかかるため、早急な対策・効果的な緑化手法の普及が必要です。