政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料室 参加しよう
フィリピン・コーラルベイ・ニッケル製錬事業
日本企業に共同水質調査と効果的な六価クロム汚染対策実施を要請
トグポン川(2011年10月 FoE Japan撮影) トグポン川での水サンプル採取(2011年10月 FoE Japan撮影) |
FoE Japanは2009年から、専門家の協力を得て、フィリピンのパラワン州バタラサ町で継続的な水質調査を行なってきました。この7年間の水質分析の結果では、日本企業が関わる同地域のニッケル製錬所周辺のトグポン川で、日本の「公共用水域の水質汚濁に係る環境基準」のうち、「人の健康の保護に関する環境基準」(0.05 mg/L以下)を超える六価クロム負荷が、雨季にほぼ常時起きていることが明らかとなっています。
このように同河川の汚染状況がなかなか改善されない実態を踏まえ、4月28日、FoE Japanは日本企業に対し、地元住民の健康被害の未然防止と安全の確保という観点から、汚染源の究明を目的としたNGOとの共同水質調査、および、効果的な汚染対策の実施を求める要請書を日本企業に提出しました。
※要請書等は、以下でダウンロードできます。
・要請書「フィリピン・ニッケル製錬事業に係る共同水質調査、および、効果的な汚染対策の実施に関する要請について」
・別添資料:フィリピン・パラワン島コーラルベイ・ニッケル製錬所、および、リオツバ・ニッケル鉱山開発の現場周辺地域における水質調査の結果報告 一式(2009~2015 年)
(全97ページ。10MB)
これまで、日本企業によれば、2012年頃から鉱石置き場のシート掛け、沈砂池の掘削、また、河川につづく沈砂池の出口付近における活性炭の設置など、六価クロムの流出を軽減する対策をとっているとのことでした。
しかし、下表(別添資料p.1)でも明らかなとおり、現場では、2012年以降も日本の上記環境基準を超える六価クロムが検出されています。
表:トグポン川における六価クロム分析結果 7年間の推移 (Unit: mg/L)
(*) 高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)による日本での分析結果。
(**) 六価クロム簡易検知管パックテストによる現場での分析結果
(***) 降雨出水時サンプル。六価クロムは上清、全クロムは濾液。
FoE Japanが行なった直近の2015年雨季(9月)の水質調査結果(別添資料p.87)でも、専門家から、事業者の「汚染対策は効果を発揮していないものと考えざるを得ない。早急に抜本的な対策を講じるべきである。」との指摘がなされています。
トグポン川(左写真)、六価クロム簡易検知管検査(0.1 mg/L)の結果。(2015年 9月16日) |
六価クロムは発がん性、 肝臓障害、皮膚疾患等も指摘される毒性の高い重金属です。日本の関連企業・政府機関は、六価クロムの生成メカニズムの解明と環境負荷実態の解明、また、汚染防止対策の確立など、早急な対応をとるべきです。また、地元政府機関の甘い監視や規制の下、『ダブル・スタンダード』で公害輸出をすることがないよう、国内と同等の基準遵守を積極的に確保していく姿勢が求められています。