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フィリピン・コーラルベイ・ニッケル製錬事業
フィリピン・北スリガオ州のニッケル開発事業周辺地における水質汚染
――2013 年 2 月の水質分析結果(2013年4月)
2013年 4月
タガニート川河口(2013年2月FoE Japan撮影) |
FoE Japanは、2009年から専門家の協力を得て、フィリピンで日系企業が関わるニッケル鉱山開発・製錬事業地の周辺地域において、継続的な水質調査を行なっています。
2月下旬には、ミンダナオ島北スリガオ州クラベル町のニッケル開発・製錬事業周辺地域で、昨年5月に続き2度目となる河川・飲料水の水質調査を行ないました。
その結果、前回とほぼ同レベルの六価クロムによる水質汚染が観測されました。六価クロムは発がん性、
肝臓障害、皮膚疾患等も指摘される毒性の高い重金属です。
まず、同地域のハヤンガボン川とタガニート川の2箇所の河川水では、前回と同様、日本の「公共用水域の水質汚濁に係る環境基準」のうち、「人の健康の保護に関する環境基準」(0.05mg/L 以下)を超える六価クロムが検出されました。
ハヤンガボン川河口(2013年2月FoE Japan撮影) (左) ハヤンガボン川河口における六価クロム簡易検知管による検査結果(0.3mg/L)(2013年2月)(右) |
また、鉱山会社が用意した先住民族のための移転地でコミュニティーが利用している水についても、数種類の水サンプルを分析したところ、 日本の 「人の健康の保護に関する環境基準」や 世界保健機構( WHO )飲料水ガイドラインの基準 ( 0.05mg/L )ぎりぎりの六価クロムが検出されました。
事業者側によれば、これらの水は「生活用水」として供されているとのことですが、FoE Japanの現地での聞き取りからは、「飲料水として利用不可」との説明を受けていない住民もおり、依然として「飲料水」として利用している住民も見られます。継続的な六価クロム汚染の疑いのある水を地元住民が生活用水や飲用として使用している実態が、改めて浮き彫りになってきました。
先住民族の移転地の風景(2013年2月FoE Japan撮影)
(左) 先住民族の移転地前で汲める水(2013年2月FoE Japan撮影) (右) |
さらに、専門家は今回の調査結果について、「(日系企業がニッケル開発・製錬事業を行なっているフィリピンの)パラワン島リオツバ地区において同様の汚染が判明していることと併せて考えると、熱帯域のラテライト層の露天掘りが普遍的に六価クロム汚染を発生させているのではないかという仮説が成り立つ。いずれにしても、パラワン島及びミンダナオ島におけるラテライト鉱山およびニッケル現地精錬プラントにおいて、一刻もはやく対策を立てて実行しなければならない」とコメントしています。
日系企業が関わるニッケル開発事業周辺地域において、地元住民の健康被害等が起きないよう、未然防止の観点からも、日本の関連企業・政府機関が 六価クロムの生成メカニズムの解明と環境負荷実態の解明、また、汚染防止対策の確立など、早急な対応をとることが期待されます。
<参考資料>
> 2013 年 2 月の水質調査に関する専門家による詳細な分析結果とコメントはこちらでご覧になれます。
・大沼淳一氏(金城学院大学講師、元愛知県環境調査センター主任研究員)によるニッケル開発・製錬事業周辺地における水質分析結果 分析結果(現地調査期間:北スリガオ= 2013 年 2 月 25 日~ 26 日)
リンク https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/rt/press/pdf/2013Apr.pdf
・ 添付資料 「北スリガオ州水サンプル採取場所地図( 2013 年 2 月)」
リンク https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/rt/press/pdf/2013Apr_map.pdf