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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア・チレボン石炭火力 2号機事業の贈収賄疑惑
現代建設の幹部が容疑者認定。事業者の上級幹部2名も渡航禁止措置 ― JBICは速やかな貸付停止を!
丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資し、国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)が公的融資を注ぎ込んでいる西ジャワ州・チレボン石炭火力発電事業(2号機。100万kW)。同事業の許認可をめぐり、建設工事を請負っている韓国・現代建設(Hyundai Engineering and Construction Co., Ltd.)が地元の前県知事に多額の不正資金を供与していたとされる贈収賄疑惑の件で、11月15日、現代建設の幹部がインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)から容疑者認定されました。
また、丸紅とJERAが出資する現地合弁企業の上級幹部2名も、この11月1日から6ヶ月間、インドネシア国外への渡航禁止措置を受けていることがわかりました。
こうした動きを受け、本日11月18日、日本のNGO 3団体から財務省及びJBICに対し、公的資金の貸付を速やかに一時停止した上で、事実関係について徹底的な調査を行ない、その調査結果について透明性のある形で説明責任を果たすよう求める緊急要請書を提出しました。
詳細は以下の要請書をご覧下さい。 >要請書のPDFはこちら
(写真左)2019年7月 1号機の隣接地で進められている2号機の建設工事。住民の生活の糧である多くの塩田が奪われた。
(写真右)2019年10月 ジャカルタにあるインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)のビル前で、「汚染/汚職にまみれたチレボン石炭火力2号機」「Hyundaiの汚職に関するKPKによる徹底調査を支持する」と書かれた横断幕を持ち、KPKの調査を呼びかける現地グループ
(以下、要請書本文)
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財務大臣 麻生 太郎 様
株式会社国際協力銀行
代表取締役総裁 前田 匡史 様
貸付実行の速やかな一時停止を求める緊急要請書
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
私たちは、国際協力銀行(JBIC)が2017年11月14日以降、貸付を実行しているインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業 拡張計画(2号機。1,000 メガワット)について、本年8月5日及び10月11日付で要請書を提出し、JBICが本拡張計画に対する貸付実行を一時停止した上で、本拡張計画に係る贈収賄疑惑の事実関係に係る徹底的な調査を行ない、同調査結果について透明性のある形で説明責任を果たすよう求めてきました。しかし、JBICは今日まで、本贈収賄疑惑に係る事実関係の確認を事業関係者のみに行なった結果、贈収賄の事実を確認できなかったとして、本拡張計画への貸付実行を依然継続していると理解しています。
今般、前チレボン県知事がチレボン石炭火力・拡張計画も含む複数のマネーロンダリングの件で容疑者認定された(脚注1)ケースに関連して、インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)が11月15日の記者会見で以下の内容を発表したことを受け、私たちは、JBICが本拡張計画に対する公的融資の貸付実行を速やかに一時停止するよう強く要請します。JBICは、貸付実行を停止した上で、本贈収賄疑惑の事実関係に係る徹底的な調査(事業関係者及び第三者への聴取やインドネシアにおける裁判関係書類の入手・検証を含む)を行ない、公的輸出信用機関として同調査結果について透明性のある形で国内外への説明責任を果たすべきです。
・ 本拡張計画の許認可に絡み、前チレボン県知事に対して不正資金約60億4,000万ルピア(約4,600万円)を供与した疑いで、本拡張計画のEPC契約者である韓国企業・現代建設ゼネラルマネージャーのHerry Jungを容疑者認定した。同不正資金は、現代建設とMilades Indah Mandiri社との間で結ばれた本拡張計画のコンサルティング業務に係る偽装の契約書(100億ルピア。約7,600万円)に基づき、数回に分けて仲介者を通じて供与された。 (脚注2)
・ 本拡張計画の事業者チレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)の取締役社長Heru Dewanto氏と取締役Teguh Haryono氏は、本年11月1日から6ヶ月間、インドネシア国外への渡航禁止措置がとられている。 (脚注3)
前回提出した2019年10月11日付の要請書の繰り返しになりますが、チレボン石炭火力・拡張計画に係る許認可は、本拡張計画の初期段階から違法性に係る重大な懸念が示されてきた問題の一つです。JBIC等の銀行団が2017年4月18日に本拡張計画に係る貸付契約を締結した後も、2017年11月14日まで初回貸付を実行できなかった(脚注4)のは、貸付契約締結日の翌日4月19日に出されたバンドン地裁による環境許認可の取消判決が理由であり、同取消判決の根拠は、チレボン県空間計画への違反でした。
JBICはその後、2017年7月17日に発行された新たな環境許認可を『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(以下、ガイドライン)に則り精査の上、ガイドライン適合性が確認できたことから初回貸付を実行したと説明(脚注5)してきました。しかし、現在、上述のとおり、本贈収賄疑惑がチレボン石炭火力・拡張計画の許認可に関連したものである旨をKPKが明言しており、また、前チレボン県知事の別件の贈収賄事件に係る2019年5月22日付の判決文(脚注6)のなかでも、前チレボン県知事がチレボン県議会議長に対し、チレボン県空間計画に関連して資金を供与したことが言及されています。
チレボン石炭火力・拡張計画の許認可に関連した贈収賄疑惑で、前チレボン県知事及びEPC契約者である現代建設の幹部がKPKによってすでに容疑者認定され、また、事業者であるCEPRの上級幹部2名が海外渡航禁止措置を受けていることを重く受け止め、JBICは本拡張計画に対する貸付実行を可及的速やかに一時停止するべきです。また、「公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会勧告」(2006年12月)(脚注7)に基づき、JBICは「通常よりも厳格なデューデリジェンスを実施する」(脚注8)べきです。日本の公的支援事業に対する国民及び国際社会の信頼を失わないためにも、JBICが本拡張計画に対する貸付実行をこれ以上継続する前に、本拡張計画に係る許認可のガイドライン適合性の再精査を含む、本贈収賄疑惑の徹底的な調査を行ない、同調査結果について透明性のある形で国内外への説明責任を果たすよう、財務省及びJBICの賢明な判断と対応を求めます。
以上
Cc: 経済産業大臣 梶山 弘志 様
株式会社 日本貿易保険 代表取締役社長 黒田 篤郎 様
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 三毛 兼承 様
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 太田 純 様
株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役社長 坂井 辰史 様
【連絡先】 国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江・杉浦)
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
(脚注1)https://m.cnnindonesia.com/nasional/20191004215727-12-436901/kpk-sebut-duit-korupsi-bupati-sunjaya-diduga-mengalir-ke-pdip ; https://m.detik.com/news/berita/4734206/rincian-sumber-rp-51-m-di-kasus-eks-bupati-cirebon-ada-terkait-pltu
(脚注2)https://www.cnnindonesia.com/nasional/20191115175529-12-448780/kpk-tetapkan-bos-hyundai-tersangka-suap-mantan-bupati-cirebon
(脚注3)https://nasional.tempo.co/read/1272783/kasus-eks-bupati-cirebon-kpk-cegah-heru-dewanto-ke-luar-negeri
(脚注4)https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2017/1114-58532.html
(脚注5)脚注4を参照
(脚注6)https://putusan.mahkamahagung.go.id/putusan/6395081793cc605eddda4c2add7e7545 。現地NGOは同ページでの判決文の公開を2019年7月22日に確認。
(脚注7)https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=td/ecg(2006)24&doclanguage=en
(脚注8)https://www.jbic.go.jp/ja/support-menu/export/prevention.html
(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が始まっている。2022年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/