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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア・チレボン石炭火力 2号機事業の贈収賄疑惑
― JBICに貸付停止と事実関係の徹底確認を要請
2019年8月5日
丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資し、国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)が公的融資を注ぎ込んでいる西ジャワ州・チレボン石炭火力発電事業(2号機。100万kW)。建設工事を請負っている韓国・現代建設(Hyundai)が地元の県知事(当時)に多額の不正資金を供与していたとされる贈収賄の件について、より詳細な情報が公になったことを受け、8月5日、日本のNGO3団体からJBICに対し、事実関係の徹底確認、および、贈収賄がないことについて透明性のある形で説明責任を果たすまで貸付実行を停止するよう求める要請書を提出しました。
詳細は以下の要請書をご覧下さい。 >要請書のPDFはこちら
(写真左)2019年7月 1号機の隣接地で進められている2号機の建設工事。住民の生活の糧である多くの塩田が奪われた。
(写真右)2017年5月 来日したチレボン住民・現地NGOらによるJBIC前での抗議アクション
(以下、要請書本文)
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2019年8月5日
株式会社国際協力銀行
代表取締役総裁 前田 匡史 様
インドネシア・チレボン石炭火力発電事業 拡張計画
関係者の不正行為に関するJBICによる説明責任と貸付実行停止を求める要請書
関係者の不正行為に関するJBICによる説明責任と貸付実行停止を求める要請書
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
貴行が2017年11月14日以降、貸付を実行しているインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業 拡張計画(2号機。1,000 メガワット)については、すでに稼働中の1号機(660 メガワット)により、小規模な漁業など住民の生計手段に甚大な被害が及ぼされてきたため、住民から強い反対の声があげられてきました。2017年5月には、住民グループが貴行に対して『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』の違反を指摘する異議申立書を提出している他、現地でも、本拡張計画に対する環境許認可の違法性を問う現地住民・NGOの訴訟が依然続いています。
本年4月からは、本拡張計画のEPC契約者である韓国企業の現代建設が前チレボン県知事に対して多額の不正資金を提供したとの複数の報道がインドネシアおよび韓国においてなされていることを踏まえ、本拡張計画に係る関係者の贈収賄疑惑についても、私たちはこれまで複数回にわたり貴行との意見交換を行なってきました。今般、本贈収賄の件に関し、以下で示すような新たな看過できない情報が公になったことを受け、私たちは、貴行が当該事実関係に係る徹底的な確認を行なうとともに、本拡張計画に係る贈収賄等の不正行為がないことについて透明性のある形で説明責任を果たすまで、本拡張計画に対する貸付実行を停止するよう要請します。
前チレボン県知事については複数の贈収賄の容疑で昨年10月に逮捕され、本年5月22日に本石炭火力・拡張計画ではない別件に係る贈収賄事件において、5年の実刑判決がすでに言い渡されていましたが、先日、公開された同贈収賄事件に係る判決文(2019年5月22日付)(現地NGOは同ページでの判決文の公開を2019年7月22日に確認。)では、チレボン石炭火力・拡張計画に係る贈収賄のケースについても、これまでの報道より詳細な情報が記載されています。主な内容としては、以下のような点が挙げられます。
① 本拡張計画の事業者チレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)の幹部であるHeru Dewanto氏やTeguh氏による贈賄への関与が名指しで言及されている。(50億ルピアを供与する約束をしたとの言及等)
② 現代建設のHerry Jung氏による贈賄への関与が名指しで言及されている。(前チレボン県知事に対して5億ルピアを供与済みであるとの言及等)
③ 現代建設と現地企業PT Milades Indah Mandiri(チレボン県ブブル郡長Rita Susana Supriyanti氏の義理の息子Muhamad Subhan氏が経営)との間に100億ルピアの架空の契約が結ばれ、後者の銀行口座に2017年6月(9億7,000万)、2018年1月(10億)、2018年2月(8億4,000万)、2018年3月(19億4,000万)、2018年10月(16億1,998万5,000)の計5回にわたり、計63億6,998万5,000ルピアが振込済みであることが言及されている。
④ 上記③で振込まれた不正資金は、ブブル郡長Rita Susana Supriyanti氏がPT Milades Indah MandiriのMuhamad Subhan氏より受領し、前チレボン県知事の専属スタッフであるAndri氏やDeni Syafrudin氏に手渡したことが言及されている。また、そのうち2018年1月および2018年10月の不正資金については、前チレボン県知事が他者の氏名を使って作らせた銀行口座(口座番号にも言及)にDeni Syafrudin氏が振込んだことが言及されている。
⑤ 前チレボン県知事が、チレボン県議会議長(5億ルピア)、チレボン県警察トップ(4億ルピア)、チレボン県軍部トップ(2億ルピア)、チレボン県検察トップ(1億ルピア)に対して各々資金を供与したことが言及されている。また、そのうちチレボン県議会議長への資金供与については、チレボン県空間計画に関連しての資金供与であったことが言及されている。
また、この同判決文の公開に先んじて、以下のような報道もインドネシア現地でなされております。
① 2019年6月13日 Tempo.Co
「インドネシア汚職撲滅委員会、チレボン石炭火力2号機事業から前県知事への贈賄疑惑に関して依然追跡中」
② 2019年6月21日 Pojok Jabar.com( https://jabar.pojoksatu.id/cirebon/2019/06/21/nama-nama-pimpinan-dprd-kabupaten-cirebon-garapan-kpk/ )
「インドネシア汚職撲滅委員会、チレボン県議会トップらの名前に言及」
本拡張計画に係る不正行為に関し、上記のようにインドネシアの裁判による判決文で本拡張計画の事業者やEPC契約者の関与が明記され、また、その手口についても詳細な内容が記載されていることは、日本の公的支援事業において看過され得るものではないと私たちは考えます。そして、現在もインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)による調査が続けられていることからも、貴行は本贈収賄のケースを重く受け止め、より厳格なデューデリジェンスを実施すべきです。その際、貴行は、CEPRや現代建設からの情報のみに依存するのではなく、KPKなど第三者への聴取や当該裁判に係る関係書類の入手も含め、徹底的な事実関係の確認を行なうべきです。
さらに、貴行が関わるいかなる支援事業も、不正行為がない状態で適正に実施される必要があることは言うまでもありません。日本の公的輸出信用機関である貴行の支援事業において、贈収賄等の不正行為が認められる場合、日本の公的支援事業に対する国民および国際社会の信頼を失うリスクもあります。したがって、私たちは、貴行が本拡張計画に対する貸付実行をこれ以上継続する前に、本拡張計画に係る贈収賄等の不正行為がないことについて、透明性のある形で国内外への説明責任を果たすことを強く要求します。
以上
Cc: 財務大臣 麻生 太郎 様
【連絡先】
国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江)
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が始まっている。2022年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/