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インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
インドネシア地裁で住民勝訴も、判決前日にJBICが融資決定
住民・NGOがJBIC/日本企業への異議申立てに緊急来日
「チレボン石炭火力・拡張計画で生活を壊さないで」
2017年5月24日、日本の官民が推進してきた西ジャワ州・チレボン石炭火力発電事業(※1)の拡張計画(1,000 MW。丸紅、JERA出資)について、参議院議員会館(東京都千代田区)にて、議員の立会いの下、住民グループが国際協力銀行(JBIC)に対し、また、NGOが『経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針』日本連絡窓口(NCP)(※2)に対し、それぞれ異議申立書を直接提出しました。
(写真)5月24日、参議院議員会館でJBICに異議申立書を手渡すチレボンの住民。議員の立会いの下、JBIC、日本NCPが申立書を受領するために出席。
>住民グループ RAPEL からJBICに対する異議申立書はこちら(英訳)
>同異議申立書の添付資料はこちら
>同異議申立書の概要(日本語)はこちら
>NGO 2団体から日本NCPに対する問題提起書はこちら(英語)
>同問題提起書の概要(日本語)はこちら
今回、緊急来日を決めた住民グループのメンバー2名、および、彼らを支援してきたNGO、弁護士は、「現地国の法律遵守」や「環境許認可の提出」等を融資事業に求めるJBIC自身の環境社会ガイドライン違反を異議申立書で指摘するとともに、公的融資の貸付をせぬよう要請しました。また、同拡張計画に出資する日本企業が、国内法の遵守等を企業行動の原則とする『OECD多国籍企業行動指針』に違反していることについて、インドネシア環境フォーラム(WALHI)、および、FoE Japanの2団体から日本NCPに対し、問題提起を行ないました。
住民らは来日中、JBIC、財務省、丸紅とそれぞれ個別会合を持った他、JBIC前では抗議アクションも決行。また、記者会見やセミナーで同事業の現状、住民訴訟および地裁判決の要旨、今回の申立てに至った経緯を報告しました。
(写真)JBIC前での抗議アクション(2017年5月25日)
(写真)参議院議員会館での記者会見(2017年5月24日) 都内でのセミナーの様子(2017年5月24日)
同事業では、すでに稼働中の第1発電所(660 MW。丸紅出資)により、小規模な漁業など住民の生計手段に甚大な被害が及ぼされてきました。住民グループRAPEL(ラペル。環境保護民衆)は、自分たちの生活へのさらなる被害を食い止めようと、昨年12月6日、同事業の拡張計画について「不当に環境許認可が発行された」と西ジャワ州政府を提訴。複数の公聴会開催の後、4月19日のバンドゥン地裁での判決で、住民側の訴えが認められ、環境許認可の取消しが命じられました。
一方、JBICは同訴訟の「進捗について認識」していると4月13日に国会で答弁していたにもかかわらず、現地国の司法判断を軽視し、地裁の判決1日前である4月18日に同拡張計画への融資契約に調印していました。被告である州政府が4月21日に控訴の意思表示をしているため、今後、高裁、最高裁での判決が確定するまで、環境許認可が依然有効とされる見通しのなか、事業者が本格着工に踏み切ること、また、JBICが貸付を実行することが懸念されます。
JBICは、事業者やインドネシア政府当局の主張だけでなく、住民側の主張にもしっかりと耳を傾けた上で、同拡張計画の違法性を精査すべきです。日本政府、JBICは、地域住民の権利やインドネシアの司法判断を重視し、分別のない公的融資の貸付等を控えることが求められています。
(※1)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。
2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約21億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を検討してきた(仏民間銀行は気候変動への影響を重視し、2017年3月末に銀行団からの撤退を決定)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2021年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
(※2)各国連絡窓口(NCP:National Contact Points)
『OECD多国籍企業行動指針』の実施に関連して生じた個別の問題解決に寄与し、同指針を効果的にするため、同指針の参加各国に設立。日本NCPは外務省、厚労省、経産省の各担当課で構成。