政策提言 個別事業モニタリング 気候変動と開発 資料室 参加しよう
インドネシア・チレボン石炭火力発電事業
「JBIC審査役の調査結果は極めて不十分」
住民異議申立てに関する調査報告に意見書を提出
国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)が融資を供与したインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業(※1)について、昨年11月に影響住民3名が生活悪化等の問題を訴え、JBICに対する異議申立書を提出していた件で、4月6日、JBIC「環境ガイドライン担当審査役」(審査役)が「調査結果等報告書」(3月21日付)を公表しました。同報告書で審査役は、「JBICが環境ガイドラインに沿ってモニタリングを適切に行なった」と結論づけ、「JBICガイドライン違反のために問題が継続している」と指摘した住民側の主張を認めませんでした。
これに対し、4月18日、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワークの3団体は、JBIC総裁宛てに意見書を提出。主に以下の点について、審査役の調査・検証が極めて不十分なものであることを指摘しました。
(1)JBIC融資担当部による確認内容・方法に関する不十分な検証
(JBICが確認したとする事業者の対策は、当該住民らが指摘した問題事項に直接資する対策となっていない点を審査役が検証できていない 等々)
(2)情報収集が不十分なままの調査報告・結論に対する疑問
(さらなる情報収集が可能であるにもかかわらず、報告書作成の期限である3ヶ月を有効活用せず、2ヶ月弱で調査を終えてしまっている 等々)
⇒ NGO意見書の全文はこちら(PDF)
また、同発電所1号機(660MW。丸紅出資)による小漁業・貝採取・製塩・農業といった生計手段への影響について、住民の生計回復は依然図られておらず、住民らが異議申立書で指摘した問題事項がまったく改善・解決されていない実態について懸念を表明しました。
JBICは現在、2号機(1,000 MW。丸紅、JERA出資)の拡張計画に対する融資を検討中ですが、新たな融資を決定する前に、まずは既存の問題の解決が図られるべきです。具体的には、異議申立書で住民らが指摘した1号機による既存の問題事項について、事業者が適切な環境社会対策・措置を行なってきたか再度確認するとともに、当該指摘事項の問題解決が適切かつ実効性のある形で図られるよう、しかるべき対応をとることが求めらています。
(※1)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、現在、JBIC、韓国輸銀、日本・フランスの民間銀行団が融資を検討中。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められている。2020年に運転開始見込み。
詳細はこちら → https://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html
●関連WEBサイト
「JBICの石炭発電融資にNo!」プログラムについて → https://sekitan.jp/jbic/
「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに基づく異議申立手続要綱等」について → https://www.jbic.go.jp/ja/efforts/environment/disagree