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気候変動対策支援
国連気候変動カンクン会合(COP16)報告
FoEインターナショナルサイドイベント「クライメートファイナンス-善、悪、醜悪」
2010年11月30日(火)
カンクンメッセ
気候資金に関する交渉は、公平で公正なルールを決められるのでしょうか?
FoEインターナショナルは、カンクン会合の2日目夜、途上国に効果的に資金提供するため、そして付属書Ⅰ国の気候負債(Climate debt)を返済するため、パネリストたちが原則・情報源・ガバナンスについて話し合うサイドイベントを開催しました。FoEインターナショナルは気候変動資金に関するサイドイベントを開催しました。
気候資金を提供する原資として炭素取引が世界中で多く行われていますが、FoEインターナショナルは「炭素取引は本質的な解決策ではない」と考えます。こうした立場も含め、現在交渉で出てきている約束事項と提案が、諸問題を解決するためにどれくらい現実味があるものなのか、提示しました。
FoEアメリカのカレン・オレンスタインからは以下の提言がありました。
「戦争のために毎年費やされている数十億ドルと比べてみると、今提案されている1千億ドルという数字は漠然としていて、全く具体的なものにはなっていません。
もしかしたら世界気候基金は、ここカンクンで設立が決まるかもしれません…でも、アメリカは設立を阻止しようとしています。世界気候基金は、完全にUNFCCCの権限のもとにおかれるものであるべきです。そして、独立したものであるべきです。世界銀行には、いかなる役割も与えてはなりません。世界銀行の下で設立された気候投資ファンドは一体どうなってしまったのでしょう?」
ジュビリー・サウスのリディ・ナピルは以下のプレゼンテーションを行いました。
「気候(金融)負債は、気候資金を専門とする南のアナリスト達の多くにとって、出発点であり、権利概念に基づいています。
気候変動を引き起こし、「公平な分配」よりも多くの温室効果ガスを大気中に排出している人々や国がいるわけです。そうした人々に対し、財政上の賠償と排出量の大幅な削減を求めるという考え方です。気候負債(climate debt)は、支援ではありません。賠償なのです。
世界銀行を気候変動銀行にしようとしている政府の動きは、とんでもないものです。世界銀行の素性を見ればわかるように、気候資金を扱うにはふさわしくない組織です。世界銀行は、以前にも増して化石燃料プロジェクトに資金を拠出しています。」
groundWork(FOE南アフリカ)のシジウェ・カニィリからは以下の発言がありました。
「世界銀行は、南アフリカのエスコム石炭火力発電プラントに資金を拠出し、37億5千万$もの融資が承認されています。そのうち再生エネルギーのためのプロジェクトへ拠出されたのはわずか1%でした。
世界銀行が低炭素経済への移行を主張することは、ナンセンスなのです。
南アフリカでは、世界で4番目に大きな石炭火力発電プラントの建設が始まっています。プラントは、南アフリカのエネルギーの貧困をより深刻なものにするでしょう。多くの鉱山事業や関連産業は特別金利の補助金が提供される一方で、貧しい人々はKwH当たり大企業の4倍もの電気料金の支払いを余儀なくされます。また融資に対する返済のコスト負担によって、経済が圧迫されることになります。
発電プラントは水不足が深刻な地域に建設され、多くの人々に住み慣れた土地や家から移住することをを強いています。さらに2,500万トンのCO2が、毎年大気中に排出されるとが予想されています。
このプロジェクトに反対するキャンペーンが広く注目されれば、こうした性質のプロジェクトへの世界銀行の拠出が減少するかもしれません。」
CED(FOEカメルーン)のサミュエル・ナ・ンドベは、REDDに関連した気候資金の問題について報告しました。
「森林は、気候変動に取り組む割安な手段と見なされています。REDDの議論は2005年から始まりましたが、気候変動に取り組むという視点から離れ、汚染をし続け、「今までどおりのビジネス(Business as Usual)」を続けることができるような資金・取引メカニズムとなりつつあります。
コンゴ盆地には、アマゾンに次ぐ世界で2番目に大きい熱帯雨林が存在します。この森林は、先住民族の居住地でもあります。
世界銀行は、チャド・カメルーン間の石油パイプラインを支援していました。予想される環境的な課題へ対応するとして、政府は建設予定地を国立公園として指定し、先住民コミュニティを移住させたのです。コミュニティの活動家は森林を伐採しません。森林破壊の原因を突き詰めていくと、以下の原因によって引き起こされていることが明らかになりました。
1、伐採事業者
2、鉱山事業者
3、森林をプランテーション植林に変換する事業者
コミュニティの人々は主に狩猟採集民であり、森林を維持する役割を持っていたのです。」
左:サラ・クリフトン(FoE英国) 右:ニモ・バッセイ(FoEI 代表) |
FoE英国のサラ・クリフトンは以下のように発言しました。
「オフセット?いいえ。途上国との取引は認められません。なぜなら、それは先進工業国が自分の責任を回避するために使う逃げ道だからです。炭素市場で最も利益を得ているのは、途上国ではなく、北の炭素取引業界です。
炭素市場の投資家は、利益を求めているのです。炭素市場があれば、気候資金への拠出が期待できると考えることは、的外れです。なぜなら、いくつかのプロジェクトは大きなコスト負担が予想されるからです。
気候資金には、きちんとした代替財源が必要なのです。」
サイドイベントの開催は夜でしたが、会場には120人以上もの人々が集まり、この問題に対する関心の高さがうかがえました。
◎FoEインターナショナル 気候資金に関するレポートはこちら(英語、PDF)
◎FoEインターナショナル REDDに関するレポートはこちら(英語、PDF)
●11月29日~12月10日までメキシコ・カンクンでCOP16、CMP6が開催されています。
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