原発事故避難者の住宅問題で復興庁と交渉~「国としての責任」を認めるも…

福島支援と脱原発2024.7.24

今年3月末に原発事故の区域外避難者(自主避難者)への住宅提供が打ち切られました。

福島県の資料によれば、打ち切り対象12,239世帯のうち、住居が確定した人は12,088世帯、未確定は119世帯。しかし、私たちはこれは過小評価ではないかと考えています。

FoE Japanも参加する「避難の協同センター」には、引っ越し先がみつからず、貯金もつきたなど、困窮した避難者からさまざまなSOSが多くよせられています。

4月に「避難は自己責任」などの発言を行った今村大臣が辞任し、新たに復興大臣に就任した吉野正芳氏は、「支援を求める人がいる限り、最後の一人まで支援する」と述べました。

これは果たして実現するのでしょうか?

5月15日、原発事故避難者の住宅問題に関して、復興庁と交渉を行いました。

復興庁の担当者は、「国としての責任を認識している」と明言。

しかし、相変わらず、避難者の状況把握を福島県に任せている復興庁の姿勢が浮き彫りになりました。私たちは、「最後の一人まで支援する、という吉野大臣の発言を具体化してほしい。大臣と避難者の面談、また復興庁による主体的な避難者の状況把握と対策をお願いしたい」と要請しました。

以下、概略を報告します。

170515_復興庁交渉2

避難者の住宅問題に関する復興庁・厚労省・国土交通省との交渉

日時:2017年5月15日16:00~17:30
場所:参議院議員会館102
主催:避難の協同センター
共催:「避難の権利」を求める全国避難者の会、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)、原発被害者訴訟原告団全国連絡会

<復興庁への質問>

Q「避難の協同センター」が4月27日付で、復興大臣宛てに以下の要請を行っていますが、その回答をお願いいたします。

1)「原発事故子ども・被災者支援法」の理念を守り、その実現に力をつくすこと
2)避難者の実状把握を急ぐこと。
①現段階で住まいが確定できていない避難者の把握
②家賃支払いや転居費用などで経済的に困っている避難者の実態把握

3)上記の結果を踏まえて、緊急の避難者対策を行うこと。住宅無償提供打ち切りを撤回し、家賃支援を行うこと。
4)被害者の生活再建や被ばく防護策を含む、原発事故被害者救済のための立法を急ぐこと。
5)復興大臣が早急に避難当事者団体・支援団体からの意見聴取を公開の場で行い、施策に反映させること。

また、「復興庁が、福島県が把握している自主避難者の住居の状況や帰還できない理由などを来月の大型連休明けまでに集計、分析したうえで、対応策を検討する」(今村前大臣の4月18日付発言)ということになっていましたが、その結果についてご教示ください。

<回答>

●避難者の数および実情の把握について
・福島県が行っている調査結果を受けとっている。
・今村大臣4月18日発言「復興庁が、福島県が把握している自主避難者の住居の状況や帰還できない理由などを集計、分析したうえで、対応策を検討する」については、復興庁独自の調査などはやってない。
・福島県が、引っ越し先未確定としているのは119世帯(平成29年4月24日発表の数字)。
・この都道府県別/住宅種別データは復興庁としては把握していない。
(→「福島県はこのデータは持っていると言っていた。きいてほしい」と要請)
・転居先を教えたくない避難者もいるので、把握は困難。

●困窮する避難者への対応について
・全国26か所の生活再建支援拠点を設けており、困った避難者が相談できるようになっている。
・自治体やケアマネージャー、臨床心理士などにつなぐ。

●復興大臣と避難当事者との面談について
・復興庁全体として、避難者と会うなど対処する。
・(重ねて要請し、日程調整を求めると)ご意見として承った。復興大臣にご意見があった旨、報告する。

Q. 避難者のカウントについて:2月の交渉時に「避難者については、東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、避難元に戻る意思がある避難者を調査しており、引き続き同様に行う予定である。引っ越したからといって、避難者に含めないということはない。ただし、災害復興住宅に入居した避難者は除外している」と回答している。

1)区域内避難者も含め、災害(復興)住宅に入居し、結果として「避難者」から除外された人は何人か。

2)自治体によっては、当初の借り上げ住宅からの引っ越しを機に、避難者とカウントしなくなっている。結果、自治体によるばらつきが生じると思われるがいかがか。

3)避難元に戻る意思というのは、どのように把握されるのか。

回答:災害復興住宅に入居した世帯数は5325世帯。

引っ越す場合は、福島県に新たな住所を届けてもらうように自治体として言ってもらっている。社協と連携して避難者の情報の把握に努めている。

<厚生労働省への質問>

Q:雇用促進住宅については、所得要件が厳しく、事実上追い出され、行方がわからなくなっている人もでてきている。また、避難当時、雇用促進住宅に入居した人はその後、自治体の独自指針により、公営住宅の専用枠が作られても、応募ができなかった。こうした事実をまずは認識してほしい。雇用促進住宅を所管しているのはどこか?

回答:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構。
状況については承った。
(生活保護の柔軟な運用を求めると)自分は担当ではないが、担当に確かに伝える。

<国土交通省への質問>

国が子ども・被災者支援法の基本方針にもりこんだ、「公営住宅の入居の円滑化」に ついて、以下について最新の情報を改めてご教示いただきたい。

①公営住宅の確保(県別、住宅種別) ②応募者数、入居決定者数(県別・住宅種別)

回答:公営住宅の入居の円滑化を、「専用枠」「倍率優遇」「その他」で分けている。
3月末時点で、専用枠については、設定1167世帯、応募348世帯、入居256世帯倍率優遇については、応募353世帯、入居28世帯
その他については応募97世帯、入居71世帯。
今後も、ひとりでも多くの避難者の人に利用していただけるため、努力していきたい。

最後に主催者側から、「この場に参加できない避難者の人たちも多くいる。吉野大臣は、最後の一人まで手を差し伸べると言った。これを実現してほしい。国の責任についても認めた。それであるならば、福島県まかせにせずに、国として取り組んでほしい。せめて実態把握を。私たち避難者に会ってほしい」と訴えました。

170515_復興庁交渉

 

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