化石燃料関連企業による気候変動交渉への悪影響排除を
本日、日本政府に対し、化石燃料産業企業やそのロビイストの国連気候変動交渉参加登録を認めないよう求める要請書を提出しました。
近年、国連の気候変動枠組条約締約国会合における、化石燃料産業の過度な影響力に懸念が高まっています。昨年のCOP28においては、少なくとも2400人以上の化石燃料ロビイストが参加していました1。
昨年、世界は歴史上最も暑い年となりました。グローバル・サウスの国々は気候危機により多大な影響を受けています。グローバル・サウスだけではなく、日本を含むグローバル・ノースの国々でも記録的な熱波、壊滅的な洪水、山火事などが発生し、人命が失われています。
化石燃料産業に従事する人々の意見は、化石燃料の段階的廃止に関する重要な議論に大きな影響を与えています。例えば、日本においては、気候危機対策にとって重要なエネルギー政策のあり方を議論する審議会などの場には、市民や環境保護派よりも重厚長大企業の参加が多く2、気候変動対策に後ろ向きな声が目立ちます。
Kick Big Polluters Out3キャンペーンの分析では、石油・ガス企業及びその業界団体関係者の多くが「政府オーバーフロー」枠だったことが明らかになっています。日本政府のオーバーフロー枠からも、火力発電所設備の導入やCCSなどに携わる三菱重工業株式会社、アンモニア発電技術開発に携わる株式会社IHIなど、80名の化石燃料ビジネスの関係者がCOP28に参加していました。
国連気候変動交渉における利益相反の問題は、長年市民社会団体から指摘が行われてきました。キャンペーンの結果、昨年のCOP28からは、COPの参加者の所属団体が公表されるようになりました。
ですが、化石燃料ロビイストの影響から公共政策立案を守るにはそれ以上の措置が必要です。例えば、2003年、WHOはタバコ規制枠組条約を採択し、業界の利益と公衆衛生当局との間に根本的で解決不可能な対立があることを明確に認め、タバコ業界の不当な影響から公衆衛生政策の決定を守るための指針を示しました。この指針には、タバコ業界のロビイストを国際的なWHO交渉に参加させないことが含まれています。化石燃料産業に対しても、このようなアプローチをとることが重要だと考えています。
詳しくは要請書をご覧ください。PDFはこちら。
- https://kickbigpollutersout.org/articles/release-record-number-fossil-fuel-lobbyists-attend-cop28 ↩︎
- https://climateintegrate.org/wp-content/uploads/2024/04/Policy-making-process-JP.pdf ↩︎
- Kick Big Polluters Outキャンペーンは、化石燃料産業などの高排出産業やその利益を代弁するロビイストが政策決定者に圧力を与え、気候変動対策を遅らせていることを問題視する市民社会団体等のネットワークで、国連気候変動枠組条約における化石燃料ロビイストの参加の制限や透明性フレームワークの設置などを求めている。 ↩︎
日本政府が化石燃料関連企業にCOP29参加資格を付与する件について
2024年11月1日
外務大臣 岩屋毅様
CC:経済産業大臣 武藤容治様
CC:環境大臣 浅尾慶一郎様
私たちは、気候変動に関する政策議論における化石燃料産業の過度な影響力に懸念を抱いており、化石燃料産業企業が気候変動交渉に特別なアクセスを許されないようにする仕組みが必要であると考えています。
昨年、世界は歴史上最も暑い年となりました。グローバル・サウスの国々は気候危機により多大な影響を受けています。グローバル・サウスだけではなく、日本を含むグローバル・ノースの国々でも記録的な熱波、壊滅的な洪水、山火事などが発生し、人命が失われています。気候変動対策を早期に講じていれば、避けられたものもあったでしょう。しかし、現在の化石燃料システムを維持することで利益を得ている人々は、あまりにも長い間、地球温暖化を止めるための行動を阻止し、遅らせ、あるいは骨抜きにしてきました。化石燃料企業による影響力が、気候変動対策を求める市民の声をかき消してきたのです。
化石燃料産業に従事する人々の意見は、化石燃料の段階的廃止に関する重要な議論に大きな影響を与えています。例えば、日本においては、気候危機対策にとって重要なエネルギー政策のあり方を議論する審議会などの場には、市民や環境保護派よりも重厚長大企業の参加が目立ちます。
国連の気候変動交渉においても、化石燃料産業がエネルギー転換を阻止するために莫大な資源を投入していることを目にしています。過去20年以上、巨大化石燃料企業やその業界団体と繋がりや利権を持つ人々が、国連気候変動交渉に少なくとも7200回も出席しています。しかし、化石燃料会社のビジネスモデルは、世界の平均気温の上昇を産業革命前より1.5度未満に抑えるというパリ協定の目標と直接対立しています。にも関わらず、世界の大手化石燃料企業の幹部らは、政府代表団の一部としての気候変動交渉への参加権利を得ています。2023年には、エクソンモービル、BP、エニの幹部らは、EUの代表団バッジでCOPに参加しました。石油・ガス企業及びその業界団体関係者の多くが「政府オーバーフロー」枠だったことがKick Big Polluters Outキャンペーンの分析で明らかになっています。日本政府のオーバーフロー枠からも、火力発電所設備の導入やCCSなどに携わる三菱重工業株式会社、アンモニア発電技術開発に携わる株式会社IHIなど、80名の化石燃料ビジネスの関係者がCOP28に参加していました。
化石燃料企業が対策を遅らせてきたことによる影響は壊滅的です。気象現象はますます極端になり、世界中で混乱が深刻化し、多くの命が失われ、生活手段が破壊されています。
ですが、この深刻な影響を止めるための手段はあります。例えば、世界保健機関(WHO)におけるタバコに関する議論において、喫煙の抑制につながる重要な健康対策に対するタバコ業界のロビイストによる不当な影響のリスクが長らく認識されてきました。2003年、WHOはタバコ規制枠組条約を採択し、業界の利益と公衆衛生当局との間に根本的で解決不可能な対立があることを明確に認め、タバコ業界の不当な影響から公衆衛生政策の決定を守るための指針を示しました。この指針には、タバコ業界のロビイストを国際的なWHO交渉に参加させないことが含まれています。化石燃料産業に対しても、このようなアプローチをとることが重要だと考えています。
私たちは、化石燃料ロビイストの影響から公共政策立案を守る措置を支持することを求めます。そして、その最初の一歩として、国連の気候変動交渉への化石燃料産業企業やロビイストの参加登録を提供しないことを約束いただくよう求めます。
以上、御検討くださいますようお願い致します。
署名団体
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
地球環境市民会議(CASA)
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク