「ドラックス社バイオマス発電所、英最大のCO2排出源」英シンクタンクが評価

英・シンクタンクのエンバー(Ember)は、英・再エネ大手のドラックス(Drax)が、2023年のイギリスの最大のCO2排出源であったことを調査によって明らかにしました。エンバーの調査報告については、英・ガーディアン紙をはじめ、多くの海外メディアが報じています。

エンバーは、排出量取引制度(Emissions Trading Scheme)及び企業の年次報告書の公式データに基づき、イギリス国内における2023年の温室効果ガス排出量のランキングを作成しました。イギリスにおける最大の排出源は、バイオマス発電、製鉄、ガス発電であり、また最大の排出源はノースヨークシャーにあるドラックスのバイオマス発電所でした。同発電所は、2012年に石炭火力発電から輸入木質ペレットを燃料とするバイオマス発電所に転換したものです。同発電所の2023年のCO2排出量は1,150万トンで、イギリスの総排出量の2.9%に相当するとのことです。また、次いでCO2排出量の多かった3つの発電事業の合計排出量よりも多く、イギリス最後の石炭火力発電所の排出量の4倍であることが分かっています。

イギリスでは日本と同じく、バイオマス発電は再生可能エネルギーと見なされており、バイオマス発電所は燃焼による排出量を報告する義務はありません。排出量は森林が再生することにより相殺されるとして、公的資金の受給対象となっています。そのため、2002年から2023年の間に、ドラックスは65億ポンド(1兆2953億円程度 [2024年8月換算])を得たとされています。エンバーの調査によると、ドラックスは年間580万トンの輸入木質バイオマスを消費しており、同発電所だけで国内の木質ペレットの年間生産量の20倍近くを消費していることになります。さらに、ドラックスは木質ペレットの生産者でもあるため、ペレットの市場価格が高まれば、燃焼して発電するよりも、燃料を販売する方が利益を得られる可能性があると言われています。実際に、2022年の欧州ガス危機の際に、ドラックス発電所は数週間にわたって運転を停止し、木質ペレットを販売して多額の利益を得たことが、過去にブルームバーグによって報道されました。

エンバーは調査報告書の中で、確証のないバイオマスによる炭素削減効果や、多額の公的資金が必要となる制度、輸入燃料に頼るエネルギー安全保障のリスク、そしてバイオマス燃料生産による気候変動や生態系へのリスクなどを指摘し、バイオマス発電と最大の汚染企業であるドラックスに対する懸念を示しました。

詳しくは、出典元をご覧ください。

出典:
Ember (2024.08.09)  “The largest emitters in the UK: annual review

The Guardian (2024.08.09) “Biomass power station produced four times emissions of UK coal plant, says report

Edie (2024.08.12) “Drax labelled UK’s ‘biggest carbon polluter’ as biomass row rages on

Bloomberg (2023.08.02) “UK Consumers Needed Energy Relief — a Loophole Lost Them Millions

 

関連するプロジェクト