長期脱炭素電源オークション見直しに対する意見を提出しました

気候変動

7月2日から31日まで募集された「電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十八次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集」について、長期脱炭素電源オークションに関わる部分について、意見を提出しました。

電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十八次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集について|e-Govパブリック・コメント

長期脱炭素電源オークションとは|電力広域的運営推進機関ホームページ (occto.or.jp)

長期脱炭素電源オークション部分について

(第18次中間とりまとめ p.15より)

本制度検討作業部会では、昨年 11 月から、本制度の第 2 回入札以降に向けた検討として、次のような具体的な課題について、検討を行った。

➢ 水素・アンモニア:GX 経済移行債を活用した初期支援に加えて、持続的な水素・

アンモニア投資を支えるための制度の在り方

➢ 合成メタン:合成メタンの特性を踏まえた応札条件等の在り方

➢ CCS 付火力:別途検討中の CCS 事業への政府支援策と長期脱炭素電源オークションとの関係や、CCS のコスト構造を踏まえた上限価格の在り方

➢ 原子力:既設原子力の安全対策投資の扱い

➢ 水力:既設水力の在り方

提出意見


1.脱炭素化および再エネ促進とは逆行するため、制度自体廃止すべき(p.15~44)
火力発電を延命する水素・アンモニア混焼やLNG火力等も対象となっており、これらの電源を固定化することは脱炭素化に逆行している。
また、原子力や石炭火力など、大型で柔軟性の低い電源の固定化は、変動性再エネの大量導入の方向とは逆行し、再エネへの大きな転換を妨げる。

また容量市場の類型であることから、新電力およびその消費者への負担増となる。
こうした観点から、制度自体を廃止し、再エネ電源の促進を軸として再検討を行うべきである。

2.既設火力の水素・アンモニア混焼への改修は対象とすべきではない(p.18~20)
既設LNG火力の水素混焼、既設LNG火力のアンモニア混焼が対象となっている。水素・アンモニアは脱炭素燃料とされているが、現状では、発電への混焼は海外で化石燃料から作られた水素・アンモニアの輸入が想定の大部分である。
また、混焼割合も2030年度に20%、2040年度頃に50%、専焼は2040年代と、早期の脱炭素化にはまったく貢献しない。このような混焼への改修を支援することは、本来もっと加速させるべき省エネ・再エネ、産業構造転換を遅らせる恐れがある。

また今回、海外製造・海上輸送の場合の上流側の固定費、すなわち製造設備、海上輸送船、CCS設備等を算入できるようにすることが提案されている。これらは、消費者・国民負担の増加につながるものであり、行うべきではない。

3.既設原発の安全対策投資を対象とすべきではない(p.20~23)

既存原発の安全対策投資については、事業者の責任において行われるべきである。今回、既設原発の安全対策費を対象とする提案が行われた背景には、安全対策費用の増加がある。日本の原発はすでに大半が30年を超えており、今後も安全対策費用はさらに上振れする恐れがある。経年劣化による機器トラブルや事故のリスクも増加する。また、既設原発の安全対策投資についても、オークション上限価格は新設と同じ10万円/kWである。そのような原発を対象とし、消費者・国民負担を増加させることは許されない。

4.CCS付火力は長期脱炭素電源オークションの対象とすべきではない(p.26)

現時点では案件の見通しがないことから対象に入っていないが、今後検討することとされている。CCS付火力については、日本国内での実現が見通しにくく、コスト増は確実である。火力発電の延命となるため対象とすべきではない。火力発電自体からの脱却こそ行うべきであり、CCS付火力を長期脱炭素電源オークションの対象とすべきではない。

5.LNG火力を対象とすべきではない、また追加募集は行うべきでない(p.28~29)
そもそも、LNGは化石燃料であり、CO2を大量に排出する。2023年のCOP28では、LNGも含めた化石燃料からの脱却を合意している。そのLNG火力の新設を支援することは、脱炭素化・カーボンニュートラルとも逆行する。
また、第1回入札において、LNG火力は、2023~2025年度の想定容量600万kWに近い575万kWの応札があり、今回2024年度、2025年度にそれぞれ200万kWの追加募集が提案されている。しかし上記趣旨に鑑み、追加募集は行うべきでない。

6.情報公開

第一回長期脱炭素電源オークション約定結果の公表にあたっては、事業者名、案件名、電源種、落札容量が公表されたが、それぞれの落札価格は非公表である。マルチプライスオークションでそれぞれの落札価格が異なるため、落札価格も含めて公表するべきである。

・第一回長期脱炭素電源オークション約定結果(2024年4月26日)

https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2024/20240426_youryouyakujokekka_kouhyou.html

 

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