【COP26 vol.3】化石燃料は地中に!世界は脱化石燃料に向かって動き出している

気候変動2024.7.5

現在、イギリス・グラスゴーでCOP26が開催中です。気候変動対策で最も重要なものの一つは、化石燃料への依存から脱却することです。世界の温室効果ガスの排出の7割は化石燃料由来で、化石燃料からいかに早く脱却するかが気候危機を止める鍵になります。化石燃料の使用については、COPの議題ではありませんが、脱化石燃料に向けて各国がどのような対策や宣言を行うのかが注目されます。

これまで、エネルギー分野の中でも電力セクターの脱炭素化が急がれており、さらにその中でも最も温室効果ガスを排出する石炭火力からの脱却が急がれていました。

議長国であるイギリスは脱石炭火力を進め(10月31日現在、英国の電力に占める石炭の割合は0パーセント)、今回のCOPでも各国に脱石炭を加速させるよう求めています。COP期間中の11月4日をエネルギー・デーと定め議長国プログラムや英国のパビリオンにおいて、化石燃料関連のさまざまなイベントが予定されています。また、11月4日には各国に脱石炭を求める声明を発表予定で、声明への賛同を募っています。

日本政府の石炭火力政策は国内外で批判の的になっていました。G7諸国の中で唯一国内外で石炭火力発電を推進し続けているからです。

つい先日のワールド・リーダーズ・サミットの岸田首相の声明も、実質的に火力発電を推進する内容でした。スピーチで岸田首相は、水素・アンモニアを解決策の一つとして掲げましたが、これらは気候変動の解決策にはなりません。日本政府は現在、火力発電に水素やアンモニアを混焼して、温室効果ガスの排出量を減らす計画を立てていますが、現在流通している水素・アンモニアはほとんど化石燃料から作られており、かつ輸入に頼らざるをえません。全く解決策にはなっていません。

岸田首相はまた、アジアの「不安定な太陽光発電」を支えるために「火力発電の脱炭素」が必要であると述べ、「Asia Energy Transition Initiativeを通じ、化石火力をアンモニア・水素などのゼロエミッション火力に転換するため1億ドル規模の先導的な事業を展開する」と述べました。しかし、アジアの国々においても、必要なのは既存の火力発電の低炭素化ではなく、人権や地元のコミュニティに配慮した持続可能な再生可能エネルギー中心の社会への移行のための支援です。(詳しくは→https://www.foejapan.org/climate/policy/211102.html

昨年、日本政府は海外への石炭火力発電事業の輸出に原則として公的支援を行わないと発表しました。また今年のG7サミットで、G7各国は海外の石炭火力事業への公的融資を今年末までに停止することを約束しました。それにもかかわらず、日本は今もバングラデシュのマタバリ2石炭火力発電事業とインドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業への融資を計画しています。これは、G7コミュニケで交わされた約束に反するものです。

1200メガワット(MW)のマタバリ2石炭火力発電事業は、有毒な汚染物質の排出が予測されたり、地元の農民や漁師の生活を脅かすことなどから、バングラデシュ国内だけでなく世界中で大きな反対運動が起きています。日本政府は、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電所の1000MWの拡張工事への融資も検討する予定ですが、インドネシア政府が電力供給事業計画(2021〜2030)で認めたとおり、建設地があるジャワ島・バリ島の電力網では電力供給が過剰になっており同事業は不要です。また、事業反対の声をあげる地域住民に対する深刻な人権侵害も起きています。

日本は2050年までにネットゼロ(排出実質ゼロ)を達成する誓約を掲げていますが、国内で石炭火力発電所を段階的に廃止する計画はありません。それどころか日本政府は水素とアンモニアの混焼を使って既存の石炭火力発電所の寿命を延ばす技術を支援しています。日本政府は、褐炭水素やアンモニアをカーボンフリーにするCCS/CCUS技術の商用化を目指していますが、これは火力発電の寿命を延ばすだけです。

英国政府は石炭火力を廃止するだけでなく、石油・ガスに関してもCOP期間中にイニシアチブを発表予定です。英国と欧州投資銀行(EIB)は、すべての化石燃料プロジェクトへの国際的な融資を終わらせることを国や関連機関に呼びかけており、各国政府にもこうした動きへの参加を呼びかけています。またデンマークとコスタリカもBOGA(Beyond Oil and Gas Alliance)を呼びかけ、COPの2週目に正式な立ち上げを予定しています。

先日発表された国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し(WEO)」では、今年から石炭火力発電所の新規建設を中止すること、新規油田・ガス田・炭鉱や炭鉱拡張、新規LNG(液化天然ガス)輸出事業の承認を停止すること、先進国では2035年までに、すべての国では2040年までに電力部門を完全に脱炭素化することなど、化石燃料の段階的な廃止に向けた重要な方向性が示されました。

一方、日本は、すべての化石燃料事業に対して世界第2位の公的資金を提供しており、2018年から2020年までの平均で毎年109億ドルを提供しています。

COP26開催直前の10月29日にも国際協力銀行(JBIC)は、カナダのLNG輸出ターミナルへの融資を決定しました。先住民族ウェットスウェテンは、自分たちの土地・文化・生活を守ろうと事業の中止を求めてきました。しかし、事業者は先住民族ウェットスウェテンの「自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意(FPIC)」を得ないまま、この事業および関連したパイプライン事業を進めており、JBICの環境ガイドラインにも明確に反しています。COP直前のJBICによる融資決定は、全くもって世界の脱化石燃料への流れを無視し、現地の人権をも無視しています。

世界の取り組みが、すでに石炭だけでなく石油・ガス廃止の議論に移っているなか、いまだに国内外の石炭すら完全な停止の道筋を立てられていない日本は、益々世界の脱炭素の流れから取り残されようとしています。日本政府は、現地でも不要とされているインドネシア・インドラマユ石炭火力とバングラデシュ・マタバリ2石炭火力の支援中止を決断するとともに、石油・ガスへの公的支援停止の議論もすぐに始めるべきです。

(深草亜悠美)

 

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