【COP25 vol.6】市民の警鐘は会場に響くか? 参加権利剥奪を伴った大規模抗議
12月11日14時40分、各国閣僚が交渉を実施する会場の前で、笛の音が響き渡りました。この合図の下、気候正義を求める市民団体、若者グループ、女性団体、先住民族団体、労働組合等の多くの市民団体と人々が連帯し、先進国に対して野心の引き上げ、気候危機に対しての行動を求める大規模なアクションを起こしました。
一週間以上にわたったこれまでの交渉では、重要な議題にほぼ進展はありませんでした。重要な議題に中には、歴史的に気候変動の原因を作り続けてきた先進国や企業に求められている、すでに深刻化しつつある損失と被害を受けているコミュニティへの資金提供も含まれます。その代わりに交渉の場から聞こえてくるのは、交渉のグリーンウォッシュ化、間違った気候変動対策、そして抜け穴だらけの市場メカニズム等、気候危機をさらに加速させるような内容です。
さらに、先進国は人権保護メカニズム、ジェンダーアクションプランを市場メカニズムから取り除こうとしています。このような状況に危機感を覚えた市民社会がアクションを企画。当初、参加者は会場内でスピーチを試みましたが、会場の警備の強い指示の下、外へ移動。
広げた瞬間に取り上げられたバナー
外に出てもなお、人々の口から発せられたのは、気候危機の回避に欠かせない社会公正実現の必要性、女性への不公正や妹(姉)が受けた暴力への怒りと悲しみ、先住民族が先祖代々管理してきた土地・森林・水を利益のために奪われつつある現状、未来への危機感、そしてそれでも立ち上がるという市民の歌。このように、スピーチをした気候正義のためにたたかっている人々は皆、口を揃えて「ここで発せられている言葉は抗議の場に集まった人々たちのものだけではなく、自分は世界で苦しむ何百万もの人々を代表している」と訴えました。
当初、参加者らは交渉会場の前で、 “cacerolazo(カスロラゾ)”という、本来の開催国であったチリを含む南米等で頻繁に採用される、鍋やフライパン、その他の道具を叩いて注意を引く抗議スタイルに倣い、手もちのカップやCOP会場で配られたカトラリーを使って音を鳴らしながら、最後の交渉に向かう各国大臣たちに、パリ協定下での市場メカニズム導入への反対、損失と被害への資金援助の強化、そして人権尊重を訴える予定でした。
同時に、交渉会場の外で開催されていた市民サミットに参加していた人々も、交渉会場の入り口まで押し寄せ、会場内でのアクションと同時のメッセージを発信すべく、手持ちの道具を使って音を鳴らしていたそうです。
総参加者数は約320人。しかし、アクションに参加したしていないにも関わらず、イエローバッヂ(交渉の傍聴団体)の参加者は、この日の会場の出入りを禁じられることになりました。
行動の実施が伴わないスピーチが続いてきた25年間。
すでに途上国の何十億人もの人々は、気候危機によって荒廃した生活をすでに目にしています。
市民社会はそのような空虚な言葉へのあきれを通り越して、必死になって「Climate Justice(気候正義)」の実現を、各国政府に訴えています。
交渉の場に叫ばれた人々の声、先進国が行動を起こさないことに対する市民からの警鐘とも言えるカセロラゾの音が、各国代表に届いていることを望みます。
「どんなに虐げられたとしても、私たちは立ち上がる」
(高橋英恵)