【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。
千葉エコメッセ、早朝のJFE本社前アクション等、東京湾の会の活動にはほぼ休むことなく参加している山崎邦子さん(以下、山崎さん)。子どもの権利に興味があり、普段は子どもの権利に関わるお仕事に携われているそうです。蘇我の石炭火力発電所の建設計画を知ったのは、日頃から一緒に活動している仲間から教えてもらったとのこと。この計画を向き合うに至った背景をお聞きしました。
(山崎さん)
“今回の石炭火力発電所が計画されていることは、日頃からいろいろと中央区で一緒に活動をしている仲間と話している中で知りました。実はその前に、3.11以後の特定廃棄物の処分場が蘇我の東京電力の敷地にできるという問題が持ち上がりまして。そのことが環境問題に関心を持つきっかけになりました。きっかけは産業廃棄物の問題だったんですけれど、環境問題について勉強していくうちに、世界ではみんな石炭は扱わないという流れになっていく中で日本が石炭を推し進めているということも、その時に知ったんです。しかも、その理由が、儲かるからこの事業を展開していくというもので。3.11以降、多くの人が自然とか環境を考えたり一生懸命電気を節約したりしているおかげで、原発を止めているけれど電気が足りないということは起こっていない状況なのに、このような企業の考え方がとても信じられない気持ちでいっぱいでした。企業はこういう皆の、主婦といいますか、一般市民の努力を知らないのかなと。"
企業の論理と生活者の論理。この事業を推し進める企業の言い分の一つとしては、石炭火力発電所を作ることで地域に雇用が生まれ、地域経済が潤うという主張です。このような意見に対して、山崎さんはどのように感じるのか、伺ってみたところ、次のような返答が。
“企業としては地域で雇用が生まれて、そこでの業績を税金として市とかに納めるという言い分をされると思うんですけど、今回のことに関してはそのあたりのことを聞いてみても、はっきりとした答えが出てこない。雇用も実はそんなに増えないんじゃないかなと私は感じています。例えば、フクダ電子アリーナができたときも、その周辺はお店が増えて経済が潤うという話もあったみたいですけれど、そうはなっていないように感じます。アリーナの説明会の時も、地元でどのくらい雇用があって、どのくらい地元に貢献できるのかというのを聞いた方がいらっしゃったのですが、それに対するはっきりとした答えが何もなかったんです。確かに建設のときは沢山の人が雇用されたと思いますけれど、完成したらあとは自動化といいますか、そこで働く人というのはそんなにはいなかったみたいで。この石炭火力の計画も、フクダ電子アリーナのときのように、建設の時はたくさんの方が関わるかもしれないけれど、完成したらまちが潤うというようなことはないと思います。”
(中国電力の前にて。)
そもそも、山崎さんはどうしてこの計画を止めないといけないと考えているのでしょうか?
“やっぱりきれいな環境を子どもやこれからの将来残していきたいというのはとても強く思っています。それにいろんな借金、まあ行政の借金ですけれども、これを本当に残したくない。国の借金、県の借金、市の借金は今でさえたくさんあって、まずはこの借金を減らさなきゃと思うけれど、逆に行政は市債とかを出して債権をどんどん増やしているんです。でもこれって、将来への負担をどんどん増やしているということで、こればかりもう、行政の方々と主婦の家計簿感覚は違うんですよね。そういうのが行政的な考え方というのか、きっと会社的なものなのかわからないですけど、ちょっと主婦的な、家計簿的な考えていうと、借金をどんどん子どもに残すというのは、受け入れかねる部分があるんです。環境に関しても、同じだと思います。なにか綺麗にできる、ちゃんと手立てがあった上での何かであったらいいんですけど、原発もそうですよね、結局最後に、廃棄物をちゃんとキレイにするとか、どういう風に保管するとか何も対策できていないままに進めている。今回の石炭火力にしても、これをすると絶対に身体によくないものが出るというのがわかっているのに進めようとするということに関しては、やっぱりもう絶対止めて、じゃないと、将来がどうなるだろうというのがあります。
将来の世代に残したいものは失われていく方向にある一方、将来世代に残したくないものばかりが増えていく。この状況を、まずは多くの人に知ってほしいと切々とお話しする山崎さん。この問題を知った私達が力になるには、どうすればよいのでしょうか?
“この問題の難しいところでもあるんですけれど、CO2も窒素酸化物とか、目に見えなくてついつい見過ごしがちになってしまうものが温暖化という世界規模の問題につながっているということを、まずは皆さんに知ってもらいたいです。そして、電気はまず足りているということもありますけれども、石炭火力発電所は要らないよということをしっかりとわかってほしいし、一人でも多くの人がその運動に関わってもらえたらなと思います。
この計画の中止というか、見直しをしてもらうためには、市議会とかで意見がどんどん出てくるようになることが望ましいと思います。今の状態では、私たちがそこに直接言うのはなかなか難しいと思いますけれど、やっぱり市民が、たくさんの市民が、例えば署名をするとか、チラシを一緒に配布してくれるとか、市長への手紙とか、意見をどんどん言ってくれるということがあると、何か本当にその一つ一つ、一筆一筆がとても力になる、動かせるって思っています。”
(JFE本社前アクションにて)
山崎さんとお話しすると、いつも温かさを感じます。そして今回お話を伺う中で、山崎さんの言葉の中に、市民の力を信じる強さを感じました。
私たちがほしい未来はどのような未来なのか。また一方で、私たちの望まない未来とは。
私たちが望む未来とは、企業の利益のために命が犠牲となる社会ではなく、そこに生活する人々の命と、これから生まれてくる命が第一に優先される社会なのではないでしょうか。
石炭火力発電所は近隣住民の健康被害につながるほか、温室効果ガスの排出による気候変動の影響を悪化させます。近年では日本でも豪雨の被害が頻繁に起きていますが、気候変動の影響は日本から離れた島嶼国での海面上昇、干ばつからくる農作被害そして農民の自殺、またヒマラヤ山脈付近の国々では氷解による被害等、深刻な被害をもたらし、人々の命が奪われています。
企業の利益ではなく人々の命が中心となる社会。そこには、石炭火力発電所はないはずです。
(高橋英恵)
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