タイガは "無人の森”ではありません。場所によっては、タイガを数百年以上前から生活の場としてきた少数民族の人々がいます。沿海地方のホットスポットの一つ、サマルガ川流域には、ウデゲと呼ばれる少数民族の人々が200人弱暮らす村があり、流域のタイガが彼らの行う狩りや漁にとって欠くことの出来ないものとなっています。現在、ウデゲの人々は沿海地方を中心に人口はわずか2000人程度となっています。彼らの一部は現在都市部での生活を送っていますが、彼らが自分たち本来の生活
− 伝統的な採取狩猟生活 − を営むことの出来る最後の場所がシホテ-アリニ山脈のタイガとなっています。ソビエト時代の同化政策でロシア語の教育を受け、もはや自分たち本来の言葉を話せなくなってしまった彼らにとっては、タイガで狩りをする生活様式が民族としての誇りでありアイデンティティーです。
彼らがこれからどのように生きていくのか − タイガでの暮らしを続けるのか、タイガを捨てて街でロシア人の暮らしをするのか − それを決めるのは彼ら自身です。しかし現実には、彼らの暮らす奥地のタイガに、良質の丸太を求めるロシアの伐採業者が注目していて、ウデゲの人々の意思に反する開発がタイガを破壊する可能性があります。しかしウデゲの人々は奥地で現金収入もなく物資の面でも情報の面でも孤立した状態にあります。
実際に会ったり博物館で資料を見たりすると、ウデゲの人々が独自の文化を持ち、強く楽しく愉快な人々であることが分かります。彼らがこれからどうやって生きていくのか、何を選ぶのか、決めるのは彼ら自身ですが、外部の人間にも彼らを手伝うこと、技術や情報の面で彼らの選択肢の幅を広げることは可能です。
シベリアHOTSPOTプロジェクトはサマルガ川流域のウデゲの人々と交流しながら流域の環境を守っていく方法を模索しています。流域の村の通信事情や電力事情の改善、現金収入の確保などの面で、村の人々との協力を開始しています。彼らのことが日本でも知られ、日本の人々との協力が始まるように、サマルガ川の様子をお伝えしていきます。
<インターネット上の関連情報>
・サマルガ河流域の美しい自然と流域の村の人々の暮らし、FoEジャパンとバーチュアル・ファウンデーションの取り組みを紹介しているページ
https://www.sbpark.com/vfjapan/northpac/asia03j.html