マーシャル諸島での気候変動に関する取り組み
南太平洋の国々は気候変動の影響に対して最も脆弱であるということはすで既知の事実です。単純に考えても、海抜が低いのだから地球温暖化で海面が上昇したり、高波などを誘発する異常気象がより頻繁に発生するようになれば、国家の存亡がかかってきます。それゆえに実際に南太平洋の国々に住んでいる人たちにとっては死活問題であることは容易に想像できるでしょう。
南太平洋地域には環境対策を包括的に取りまとめているSPREP(スプレップ;南太平洋地域環境計画)という機関があります。ここでは、生物多様性保護から廃棄物処理、気候変動まで幅広く環境問題の解決をめざして取り組みが行われています。この中で気候変動に関しては、UNDP(国連開発計画)の主導でPICCAPという取り組みが行われており、主に参加国の温暖化の影響に適応するためや国連気候変動枠組み条約の遵守体制を強化するためのキャパシティービルディングに焦点が当てられています。
「保健環境省」の中にある「環境保護局」。ここで気候変動問題を担当するのはユミエ・クリソストモさん。彼女は前述したPICCAPの技術顧問として職務に従事しています。
その他の気候変動に関する取り組みとしては今後予測される海面上昇や気温、水温、気圧などの変化をデータベース化するため、SEAFRAME(シーフレーム)という設備を使って測定しています。これは「南太平洋海水面気候モニタリングプロジェクト」を通じて行われていて、オーストラリア国際開発局(AusAID)の管轄下で行われています。 マーシャル諸島もこのプロジェクトに参加しており、国内ではウェザーサービスという気象観測を行っている機関で実施されています。
ユミエさんと環境保護局長であるブンギタック氏のお話です。
ユミエさん
「気候変動の影響は、健康、生物多様性、国の経済を支えている漁業、沿岸へのダメージ、そして、サンゴ礁などに及びます。最も恐れている影響は私たちの国がなくなってしまうことです。海面上昇によって海水に沈んでしまうのです。」
ブンギタック氏
「今年の初め、大きな波がマジュロを襲い、道路などにゴミが散乱しました。それだけでなく、いくつかの民家が破壊されてしまったのです。」
ユミエさん
「(マーシャル諸島の)みんなは何が起こっているかなんて知らないのです。
気候変動の事なんか知らないのです。みんなただその日その日を暮らしてきただけなのですから。
国が沈むなんて、どうやってみんなに伝えたらよいのでしょうか?
これはとても感情的な問題なのです。恐怖心を与えないように伝えていかなければなりません。
子供からお年寄りまで様々な人たちにどう伝えるのか、とても気を使わなければならないのです。
罪のない私たちの国を助けてください。
私たちのような小さな島国はほとんど温室効果ガスを排出していないのです。
私たちの願いは、ただ国が存続することです。みんなこの国にくらしていたいと思っています。
気候変動が引き起こす影響は、私たちにとっては、人生を左右する問題です。
人々の人生や生活の基盤を奪ってしまうことになるのです。
この島は私たちの先祖から受け継いできたものです。
私たちは自らを島の一部と考えます。なぜなら、私たちの先祖がこの島に眠っているからです。
ここには私たちの歴史があり、文化があります。
誰だって島から移住したいとは思いません。
もし私が他のどこかで生まれていたとしても、マーシャル諸島は私のふるさとです。
それは、私の母がこの国の人だから。
家族というものの良いところは、買えるべき家があり、土地があり、家族がいるということです。
そして、気候変動は私たちの人生や生活を奪ってしまうのです。」
みなさんはこれを聞いてどう思いますか?
温暖化によるマーシャルへの影響
(海面上昇による影響、気温上昇による影響、異常気象による影響)
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