【第2回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「気候正義」と聞いてもピンとこない。そんな私が気づいたこと

気候変動2024.7.5

こんにちは〜!
FoE Japan インターンの増田千紗です。
今回は、連続オンラインセミナー、「スクール・オブ・サステナビリティ2」の第2回「気候正義とは?」の内容を報告します!

第2回は、Asian People Movement on Debt and Development の Claire Mirandaさんと、Friends of the Earth International の Sara Shawさんにお越しいただきました。Claireさんからは、主に「気候正義」とは何か、Saraさんからは、世界中に広がっている「気候訴訟」の運動について詳しくお話しいただきました。

「Climate Justice」「気候正義」と聞いてもピンとこない、なんて方も少なくないでしょう。私もその1人でした。なぜ「正義」を求める声があがっているの?私たちは何をすればいいの?そんな疑問を抱えながら、今回のウェビナーに参加しました。このブログでは、わたしが学んだことを少しだけでもみなさんとシェアできたらいいなと思います!

利益と成長のため OR 次世代のため あなたはどっち?

はじめにClaireさんからは、気候変動における南北問題に触れながら、気候正義を考える際の要点を教えていただきました。

気候変動は、主にグローバル・ノース(先進国)の政府や企業により引き起こされていますが、その被害を受けやすいのはグローバル・サウス(途上国)の国々、人々だと言われています。このような国家間の公平性みならず、性別間、世代間の公平性を確保しつつ気候変動に対処することが「Cliamte Justice(気候正義)」の考え方です。

もう一つの重要なキーワードが「共通だが差異ある責任(Common But Differenciated Responsibilities, CBDR)」です。この考え方に基づき、先進国は気候変動の緩和策の実行に加え、賠償(資金や技術の提供)を行うことが求められています。

しかし、COP15(2009年)で約束された毎年1000億ドルの先進国から途上国への支援は、未だその半額ほどにしか達していないのです。一方で、化石燃料に対する融資は増え続けており、全く誤った分野に資金が集中してしまっていることが分かります。三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった見慣れた名前が、「世界で最も化石燃料に融資をする10社」に並んでいるんです。個人的にメインバンクとしてお世話になっている企業だけれど、これからはどうしようかな、とモヤモヤとしてきました。

そして、1番印象的だったのは「日本は偽りの気候変動対策に加担しないで」というClaireさんの訴えでした。先進国の一員である日本は、豊富な資金や技術を持っているのに、なぜこんなにも気候変動に鈍感なのかと思うのと同時に、やはり政治家を選ぶ選挙って大事だなと再確認しました。次回のスクール・オブ・サステナビリティでは、日本の気候変動政策は実際どうなってるの?というところを考えていきたいと思います。

気候訴訟という闘い方

続いてSaraさんからは、環境汚染を引き起こす企業や政府を訴える「気候訴訟」について、オランダの事例とともに教えていただきました。

ここで登場するのがBig Polluters(大規模汚染者)です。Big Pollutersとは、環境汚染に貢献する大企業のことを指します。実際、過去30年間の温室効果ガスの排出量の半分はたった25の企業が占めていて、また排出量の71%は100の企業の責任です。Big Polluters は莫大な資金を利用し、気候政策を妨害してきました。特に、5大石油ガス会社(シェル、BP、エクソン、シェブロン、もう一個なんだっけ?)は、気候変動の誤解を招くようなロビー活動に何十億ドルもの資金を費やしていたのです。

また、大企業は「大きなウソ」をつきます。
大企業の広告や主張にただ流されるだけの消費者になっていないだろうか、彼らは本当に言っていることを実行しているのか、その方法は本当に正しいのか、など我々が意識すること、暴いていかなければならない事が多いのだなと痛感しました。

そんな大企業と「闘う」方法の一つが気候訴訟です。
2021年5月、オランダにて、石油会社シェルに対する気候訴訟で市民側が歴史的な勝利を収めました。この裁判のポイントは3つです。

①市民に対する「人権侵害」を訴え、それが認められた。

②賠償ではなく、「気候変動対策」と「排出への責任」を企業に求めた。

③FoEオランダに加え、1万7千人のオランダ市民、複数の環境団体が原告となり、世界中からは100万人を超える署名が集まった。

これまで、政府に対する気候訴訟では市民側が勝訴するケースが増えてきました。今後は、このシェル訴訟を前例として、企業に対する気候訴訟の世界的な拡がりが見られそうです。英国、スリランカでは政府を相手にした気候訴訟、オーストラリアでも山火事の被害者と共に化石燃料企業に融資している銀行に対しての訴訟が検討されているようですが、海外の事だから…と聞き流すのではなく、署名で意思表示をしたり、国内で同じような事例がないか考えたり、と私たちにも様々なアクションが起こせそうです。

参加者の声

気候正義という概念を学び、SYSTEM CHANGEの重要性を感じる声があがりました。一方で、いざ自国の社会システムが変えられそうになれば自分も反発してしまうかもしれない、利益や成長の追求は抑えられるのか?という不安や疑問も多くありました。そんな中、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・裁判など第三者の声がないとシステムは変えられない。

・GDPの成長率などで評価される仕組み自体が変わらなければならないのではないか。

・企業のnet zero 計画の問題点を多くの人に分かりやすく示し、市民からの圧力を大きくしたい。

・環境問題にも南北格差があることを知り、先進国に住む者としてより責任を感じた。

・日本は資金や技術がある国でもあることを忘れていたので、企業や政府にも期待したくなった。

今までの発展による恩恵を受けてきたからこそ

資本主義の世の中では、絶対的な力を持っている大企業。自国の発展が企業に支えられてきたことは事実です。私たちは彼らの事業による利益を消費してきたかもしれません。でも、その責任のある市民だからこそ、今声をあげることが必要なのではないでしょうか。

また、目先の利益ではなく、本質的な豊かさを求めることもひとつのアクションなのかなと思います。気候正義に則った政策決定を求めるだけでなく、自分の消費行動など身の回りから見直していきたいと思います。

最後に、Claire さんとSaraさんのお二方がスライドに使っていたメッセージです。

“Which side are you on?(あなたはどっち?)”

“Stand with people, not polluters!(汚染者ではなく人々の味方に!)”

(インターン 増田千紗)

▼第2回のプログラム
・途上国の人々が先進国に伝えたい” Climate Justice”とは?(Claire Miranda, Asian People Movement on Debt and Development)

・気候変動への企業の責任〜世界中で広がる気候訴訟〜(Sara Shaw, Friends of the Earth International)


※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。

 

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