日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(11)

森林保全2024.7.5

第五回 国富町大字木脇(その3)

 2020年9月25日、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は、宮崎県国富町の民有林のスギを無断で伐採、盗んだとして森林法違反(森林窃盗)の罪に問われた「黒木林産」社長、黒木達也被告の上告を棄却しました。懲役1年、執行猶予4年とした一審、二審の判決が確定しました。2020年1月の一審宮崎地裁判決によると、被告は2018年9月、スギ20本を従業員に伐採させ盗みました。被告は「誤伐」と無罪主張していましたが、二審福岡高裁宮崎支部判決も一審判決を支持していました*1
 今後は、有罪判決を受けた伐採業者が受けていた補助金について、国、自治体がどのような判断を下すのか、注目です。

 今回も、前回に引き続き、「黒木林産」の被害に遭った高野恭司さんの事例を紹介します。
※なお、今回も被害当事者の高野恭司さんのご了承を得て、実名で記述しております。

ついに「黒木林産」社長、黒木達也容疑者逮捕
 2019(R1)年7月11日、ついに黒木林産社長、黒木達也容疑者が逮捕されました。報道によれば、宮崎県内では初めての素材生産業者の逮捕で、また同社は宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会(県素連)の「合法木材供給事業者」に認定され、2016(H28)年度日向市森林整備加速化・林業再生事業(基金)の補助金約1,400万円も受けていました*2。さらに8月5日、黒木容疑者は高野さんの被害林地に隣接するTさんの所有林地のスギ13本を伐採して盗んだとして、森林法違反(森林窃盗)の疑いで再逮捕されました*3。Tさんも宮崎県盗伐被害者の会会員です。

“誠実”という言葉のかけらも感じられない被告と弁護人
 冒頭の説明のとおり、黒木被告の審理は最高裁にまで持ち込まれましたが、最終的に上告棄却となり、執行猶予は付いていますが有罪となりました。伐採業者の有罪判決は宮崎県内では初めてのことです。以下に、黒木被告の審理の経過を整理します。

公判日内容など
一審:宮崎地裁
初公判
(2019(R1)/9/27)
「(他人が所有する木と)知らずに伐採した。窃盗はしていない」と起訴内容を否認、無罪を主張*4
第二回公判
(10/18)
2018(H30)年9月7日、高野さんも同行した高岡警察の現場検証のとき、作業中の黒木被告は手元に地図を持っていたが、公判では「地図は持っていなかった」と発言。
第三回公判
(10/28)
過去20年で約10件の無断伐採が発覚。それについて「誤伐の場合、地権者に相場の2倍を支払うなどした」と説明。誤伐対策をしなかった理由は「経験に基づき、勘に頼って作業する。いちいち図面を見ることはない」*5
第四回公判
(12/13)
論告求刑
第五回公判
判決(2020/1/27)
(2020(R2)年1月27日) 懲役1年、執行猶予4年(求刑懲役1年6月)の有罪判決。裁判官は、被告が事件の約2カ月前、仲介業者から売買契約が未締結であるとの説明を受けていたと認定し、『仲介業者の説明を「失念していた」との被告の供述は、不自然不合理で信用できない』と無罪の主張を退けた。被告は即日控訴*6
二審:福岡高裁宮崎支部
初公判
(4/16)
弁護側は無罪を主張し、検察側は控訴棄却を求めて結審*7
第二回公判
判決(6/18)
懲役1年、執行猶予4年とした一審判決を支持し、控訴を棄却。弁護側は即日上告*8
三審:最高裁
9/25上告棄却*9

(出所)各紙の報道を参考に筆者作成

 高野さんは、被害を受けた後、最初は黒木被告を許してやろうか、と思った時期もあったそうです。被害届が受理されてから黒木被告逮捕までに約半年を要し、前回紹介したとおり各種報道機関から事件が報道されたものの、被害規模は再逮捕後で「20本」、「そんな程度?」との声もささやかれ、県議会の議論でも盗伐業者を擁護するような発言があるような中で、被害者が「被害」を訴え続けることが簡単でない「空気」というか「雰囲気」があったことは、容易に想像がつくところです。
 ところが「黒木は嘘ばかりつく」。裁判における被告や弁護人の主張や態度、受け答えを聞いていて、そうした感覚は一切なくなりました。第四回公判の論告求刑の際、最後に裁判長が黒木被告に発言を求めたとき、被告は「泥棒はしていない。高野さんらには申し訳ない」と、初公判から第四回目で初めて謝罪の言葉があったそうです。高野さんはこの発言について一言、「遅い」。

 ようやく上告棄却により刑が確定したため、今後、高野さんとしては民事での損害賠償を黒木達也被告に求めていくことも検討しているそうです。

被害林地のその後: 台風による二次被害
 2018(H30)年9月初旬に盗伐された林地は、9月30日の台風24号の豪雨によって土砂崩れを起こしました。その土砂と林地残材は不運にも被害エリアに隣接する高野さんの水田にも及びました。盗伐への対応もあり、水田はその後しばらく放置されていましたが、田植えの時期を控え、隣接する水田を所有する農家などからの依頼もあり、高野さんは木脇土地改良区にも相談し、国富町役場が音頭を取る形で2019(R1)年4月20日、地域の公民館にて黒木林産を交えた話し合いが持たれました。その結果、黒木林産が土砂をせき止める土留めの設置と残材の撤去を60万円で引き受けることとなりました。支払いは崩れた林地の所有者と木脇土地改良区とで折半となりました。
 高野さんの水田については、2019年は結局使用できず、「今年(2020年)はやろう」と仕事帰りに田んぼに通い、復旧に着手したのですが、スギの伐根や残材などが水田に埋まっていて、その撤去と焼却にしばらくかかったそうです。

最後に
 今回の国富町木脇の盗伐被害現場は、その後、隣接する水田への影響はないながらも、豪雨のたびに土砂が崩れ、元の状態に戻すには相当なコストを要する状態です。
 高野さんは、黒木林産の盗伐行為に関して「大胆不敵、そしてめちゃくちゃな伐り方。あんなところを伐るとは。急斜面で山のプロならずれるのがわかるだろう」と、プロの仕事とは思えない行為に、ある意味驚いています。また、人の良い老人を騙す「ごめんなさい詐欺」ともいえる盗伐行為は「絶対に許せない」と憤ります。「盗伐業者らは、高齢者を完全になめており、『“ごめんなさい”と詫びて、わずかなお金をつかませればだいたいは大丈夫』、と考えていて、今回の事件についてもまさか被害者が警察を呼ぶとは思っていなかっただろう」。
 こうした状況を打破するためには、「警察がこれまで盗伐を繰り返してきた業者すべてを一覧にして公表し、反省させるべきであり、業者らはきちんと罪を償ってほしい」と高野さんは考えています。
 
 なお、今回の現場でさらに驚かされることとして、黒木林産が伐採した約5[ha]のすぐ奥で、ほぼ同面積の伐採が別の業者、H林業によって行われていることです。このH林業とは、本ブログ「第二回宮崎市高岡町花見字山口」で紹介した川越静子さんの盗伐事件の犯人です。H林業が伐採したエリアについて、今のところ声を上げる被害者は特定されていないため、「盗伐」と断定することはできません。しかし今回の黒木林産が伐採した5[ha]が30筆もの小さな林地の集合体であったことからも、H林業の伐採地も、多くの筆数からなる林地だと推察され、それらすべての所有者が適切な手続きを経てH林業に立木を売却したとは考えにくいです。

 ’90年代前半から続く、スギ丸太生産量日本一の宮崎県。その陰で盗伐被害に遭い、そして泣き寝入りを強いられてきた森林所有者は相当な数だと考えられます。その全貌が明らかになるよう、引き続きこの根深い「盗伐」問題に取り組んでいきます。(三柴淳一)

*1 毎日新聞2020年10月4日 地域面
*2 旬刊宮崎1670号(2019(令和元)年10月5日), 1面
*3 宮崎日日新聞2020年8月6日 紙面
*4 宮崎日日新聞2019年9月28日 社会面 27ページ
*5 宮崎日日新聞2019年10月29日 社会面 25ページ
*6 宮崎日日新聞2020年1月28日 社会面 27ページ
*7 宮崎日日新聞2020年4月17日 紙面
*8 宮崎日日新聞2020年6月19日 紙面
*9 *1に同じ

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)

 

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