「原発事故以後のエコロジーと地域」しあわせの経済国際フォーラム2019 in 横浜戸塚

福島支援と脱原発2024.7.10

「しあわせの経済国際フォーラム in 横浜戸塚」のA2セッション「原発事故以後のエコロジーと地域」(11月10日)を、FoE Japanでコーディネートしました。

トーク:武藤類子(福島原発告訴団団長
    山田周生(一般社団法人ユナイテッドグリーン代表)
    岩野さおり (高校生、Fridays for Future Tokyo)
    佐藤隆美( 城南信用金庫企業経営サポート部上席調査役)
モデレーター:吉田明子(国際環境NGO FoE Japan(気候変動・エネルギー担当))
企画:国際環境NGO FoE Japan

政治もくらしもエネルギーも、どこか「ひとごと」になっている現在の社会。2011年の福島第一原発事故により、大きな被害とともにその矛盾と問題が明らかになりました。

今年のフォーラムのメインビジュアルは、原発事故で放射能をあびた「山」の気持ちを描いたという間中ムーチョさんの作品です。また10日のクロージングでは、福島県いわき市から東京に避難された歌手のゆかりさんがふるさとへの思いを歌いました。

8年半たっても、原発事故は全く収束していない、そのことをメッセージとして伝えたかった、と辻信一さんは繰り返します。

A2セッションでは、原発事故の現状と各地で起こる市民の取り組み、今年も甚大な被害をもたらしている気候危機をテーマとして話しました。フォーラム開催の直前には、サティシュ・クマールさんも、Fridays For Futureの若者たちを激励るメッセージを寄せてくださっています。

最初に、今秋各地を襲った台風被害について、亡くなった方、今も困難なくらしを続けている方々に心よりお見舞い申し上げます。

武藤類子さんからは、福島県の阿武隈川沿いやいわき市でも、大きな被害があり、知人も被災されたことを伺いました。原発事故からの避難先での二重の被災でつらい思いをしている人がいること、放射性物質の移動や再拡散が懸念されることも報告されました。

山田周生さんも、釜石市の津波被災地にも影響があったとのお話しでした。佐藤隆美さんも、神奈川で知人が被災して他人事と思えないとのことでした。

台風19号の巨大化は、気候変動による海水温上昇に起因すると言われています。

日本の私たちも、気候災害、気候危機が、生活に直接的な脅威となっていることを、実感させられています。

武藤類子さんは、チェルノブイリ原発事故後に、村がすべてなくなってしまうような被害をもたらす原発は使いたくないと、声を上げはじめたそうです。電気も食べ物も自給自足するくらしを目指し、省エネや太陽熱・太陽光利用、山菜やどんぐりを食べるなど、試行錯誤したそうです。しかし、原発事故により、山菜や畑の野菜は食べられなくなり、くらしが一変しました。事故以降は、放射能被害の現状を国や県にうったえるとともに、2014年からは、東電福島原発刑事裁判を提訴し、東電の幹部の意図的な無作為を明らかにしてきました。9月に全員無罪の判決が出されたときのメンバーの悔し涙に、スリーマイル島原発事故の被災者の涙が重なったそうです。「核の悲劇の悲しみは時間と空間を超えて同じように映し出される」とのメッセージを伝えてくださいました。

高校1年生の岩野さおりさんも、原発事故当時は7歳だったそうですが、いとこたちとともに関西に避難をしたそうです。武藤さんのお話しを聞いて、子どもに特に影響をおよぼす原発は気候変動対策として使うべきではないと、改めて感じたと言います。

岩野さんは、ちょうど1年ほど前に、中学校の授業でセバン・スズキさんの国連でのスピーチとグレタ・トゥーンベリさんのスピーチを見て感銘を受け、3月末のイベントからFridays for Future Tokyoに参加し始めました。Fridays For Futureの若者たちが求めるのは気候災害による人権侵害に対する正義=気候正義「Climate Justice」だと話しました。11月29日のグローバル気候マーチへの参加を呼びかけるとともに、東京都に気候非常事態宣言の発表を求める署名活動を通して政治に私たちの声を届けることができるとうったえました。

山田周生さんは、大学在学中からバイクで地球を75周、世界を回りながら環境問題を取材していたそうです。その後天ぷら油のバイオディーゼル車での世界一周を実施、日本にかえってきて、岩手県釜石市にいたときに、3.11に遭遇したそうです。釜石で被災者支援を続けるとともに、バイオディーゼル発電をツールとしたコミュニティづくりも始めます。自宅も、薪ストーブや太陽光発電、バイオディーゼル発電などでオフグリッドを実現しています。米作りをはじめ食料も自給、トイレはもちろんバイオトイレです。仲間の輪がひろがり、釜石で農業者、漁業者とともに自給コミュニティが広がりつつある、と最先端のエココミュニティ、エネルギーのあり方を紹介いただきました。持続可能なくらしは楽しい、そのことで共感を広げ、人が集まっていると山田さんは言います。

城南信用金庫の佐藤隆美さんからは、震災後に脱原発、自然エネルギーへの転換を呼びかける金融機関としての取組についてお話しいただきました。原発事故直後の2011年4月1日、吉原元理事長のトップダウンで、「脱原発宣言」を決めたそうです。東電の債権と株は売却、原発関連には融資しないことを決めるとともに、本店や店舗の節電や太陽光発電設置を進めたそうです。2012年以降「よい仕事おこしフェア」を毎年開催し、全国の信用金庫や企業に参加を呼びかけています。現在はSDGsを経営目標にかかげ、女性役員の積極登用や子ども食堂などの取組みも行っているそうです。社内でも脱原発の方向性は十分に共有され、社員同士でも話をするそうです。

原発事故からコミュニティづくり、気候変動と幅広いテーマについて話をしましたが、問題の原因や解決にむけた動きは共通しています。地道な人々のつながり、取り組みこそがまさに「しあわせの経済」です。それを作り出すのは私たち一人ひとりの声、アクションです。

できることはたくさんあります。フォーラムに参加したみなさんも、このウェブページをご覧くださったみなさんも、今日からの一歩をともに始めましょう!

(FoE Japan 吉田明子)

 

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