市民の力で、「汚染土再利用実証事業」を撃退!~二本松より
9月1日、二本松にて、「みんなでつくる二本松・市政の会(以下みんなの会)」「救援復興二本松市民共同センター」の主催で、環境省計画の「汚染土壌再利用実証事業」ストップの市民報告集会がありました。環境省が全国で展開しようとしている除染土の再利用の実証事業を、市民の力で撃退した、その経緯を総括した集会でした。この件をウォッチ・サポートし続けている政野淳子さんとともにお招きいただきました。
この事業は二本松市原セ才木地区で200メートルくらいの農道を掘削し、近くの仮置き場に積まれた除染土500袋を、袋から出して路床材として埋め、50cm程度の覆土を行うというものです。
(写真上、実証事業が行われようとしていた農道 2018年7月27日 撮影:満田)
計画が持ち上がったのは昨年末の12月。当初、ごくごく限られた範囲の住民にしか知らされていませんでした。あとから知った二本松の市民が説明会のやり直しを求め、環境省福島事務所に事業の白紙撤回を求める申し入れを行いました。これをNHK福島が大きく報道。市議会でも取り上げられました。
3月には、政野淳子さんを講師にした学習会と意見交換会が開かれました。
3月末には環境省が業者と契約しましたが、「みんなの会」は「ふるさとを汚すな!STOP!汚染土再利用」のノボリ旗を100本設置。
「白紙撤回を求めます」のチラシを市内全域各戸に配布。
4月18日には、環境省がより広い範囲の住民も参加できる説明会をやり直しました。ここで反対意見が相次ぎ、「地元は反対している」と認めざるをえない状況となりました。
4月26日には、福島農民連による環境省交渉が行われ、「みんなの会」も参加。
5月になり、近くの家畜用飼料を手掛ける生産組合への取引見直しの動きがでるという「実害」が発生していることが明らかに。
市民たちは、三保市長にも「環境省に全市民対象の説明会を実施ように要請すること」を求めました。
6月11日、FoE Japan主催の環境省交渉に「みんなの会」からも参加。
6月25日、ついに環境省は二本松市長に対して、「風評被害への懸念など多数のご意見をいただいたことを踏まえ、請負業者との契約解除に向け調整することとしたい」「事業計画を再検討することとした」と伝えました。実質撤回です。
三保市長はこの席で環境省に対して、「重ねて慎重な判断を求めるとともに、併せて中間貯蔵施設への早期輸送を」要請したといいます。
詳しくは、「市民の会」の報告データをご覧ください
>汚染土壌実証事業ストップみんなの会の経過報告(2018年9月1日)
報告集会では、冒頭、みんなの会の佐藤代表が、「実証事業を止めた喜びをわかちあいたい」「放射性廃棄物は一か所にあつめて厳重管理すべき」と挨拶。
続けて、みんなの会事務局長の菅野さんが、経過報告をしました。
そのあと、住民のみなさんから、以下のような報告がありました。
- 原発事故は止めることができなかったが、今回のことは止めなくてはならないこと。地元の人たちが声をあげたことによって止まったことに感謝したい。
- 推進していた人に「あんたらが勝ったねー」と言われたが、勝ち負けではないと思う。1時間半かけて話をした。
- 最初の説明会では、私ともう一人くらいが反対。あとの人は無言。小さくなっていた。そのあと、学習会に参加して、多くの人たちが同じことを考えていることを知った。「ああ、反対してもいいんだな」と思った。
- ネット署名に取り組んだ。はじめての経験だった。多くの反響。コメント欄に「絶対に許してはいけない」「これはみんなの問題」と。その後、中止となったことを署名をしてくれた人たちに伝えた。「私たちのところは止められました。次はあなたのところに行くかもしれない」と。
- 5月17日の説明会で、環境省に「(袋の中の土壌を)はかったんですか?」ときいたら「はかっていない」と。袋の上から空間線量をはかる測定器をあてて、推定しているだけだった。「ああ、これはだめだな」と思った。
- 原セ才木地区の21戸の中で9戸しか参加していない中で、説明会が開催され、「地元了解」ということにされてしまった。これは問題だ。
- いまある除染土の仮置き場は、地元住民のたいへんな葛藤の中で決まった。”中間貯蔵施設に運ぶ”という約束であった。実証事業は、その約束違反になる。
- 実証事業は、800億円をかけて除染した土を、また3億5,000万円かけてもとに戻すもの。(同じ距離の農道を舗装するのならば)260万円ですむ。
- このようなやり方は、地域住民を分断する。
- NHKは報道したが、福島民友・福島民報はとりあげなかった。新たな風評被害が起こることを恐れた?
- これは風評ではなく実害だ。
(写真上:9月1日に二本松市で開かれた報告集会 撮影:満田)
続いて、政野淳子さんから、「環境省はまだあきらめていない」という報告がありました。なぜならば、2200万m3もの除染土を減らすことを至上命題にしているからであると。また、飯舘村長泥地区での実証事業や、栃木県那須町の状況について、および環境省が放射能汚染対処特別措置法の実施規則を策定しようとしていることを紹介。
満田からは、放射能汚染対処特別措置法により、8,000ベクレル/kg以下の放射能ごみが全国各地にばらまかれようとしている実態について、またそれに対抗しようとしている取り組みなどについて報告しました。また、ALPS処理水の海中放出の問題点についても言及し、全国レベルで公聴会を開くことを求めていくことが必要であると発言させていただきました。
環境省による除染土の再利用を正当化するための実証事業を、地域の住民が勇気をふるって声をあげ、結集し、知恵と行動力で退けました。二本松の市民のみなさんに、心から感謝します。
繰り返しになりますが、これは、全国の問題です。
除染土再利用に関しては、ALPS処理水放出と根っこは同じ問題です。環境中に放出するか、集中管理を行うか…。しかし、放射性物質は、他の有害物質と同様、集中管理することが大前提でしょう。
環境省は、再利用方針をこのまま進めるのであれば、全国で、「説明・公聴会」を開き、国民の声をきくべきでしょう。
近く、東京でもこの問題に関する報告集会を企画できればと考えています。(満田夏花)
(みんなの会ニュース No.6)