電力自由化から2年、パワーシフトは進んだか?

福島支援と脱原発2024.7.24

20164月の電力小売全面自由化から丸2年が経ちました。

低圧分野での大手電力から新電力のスイッチングは全国で8.2%、東電エリアで11.7%、関電エリアで10.9%201711月時点)となりました(*1)。

ただ、切り替え先の上位はガス会社系や携帯電話会社系、石油会社系などの大手新電力が占めています

一方販売電力量でみると、新電力のシェア(低圧・高圧全体)は全面自由化前の約5%から201711月時点で約12%まで高まっており、これは当初の想定(経済産業省は2020年時点の新電力シェアを10%と仮定していた)より高いということができます。

しかし再生可能エネルギーや地域貢献の視点で選択したい消費者にとってはどうでしょうか。

再生可能エネルギーを重視する事業者や地域の事業者も、当初は家庭向け販売を開始しているところは多くはありませんでした。2年経ってその状況は変化しています。これから出てくる地域電力会社や自治体電力会社も複数もあり、具体的な選択肢が増えてきています。

一方で、大手電力会社の巻き返しが大きいのが現状です。高圧分野での新電力のシェアは20177月に15%台に達しましたがその後停滞しています。すでに2016年度から、自治体電力調達への入札にも大手電力が参加して低価格で契約をとる事例が各地で相次ぎ、大手企業や大口顧客については、新電力への申込をした数日後に大手電力からさらに安い見積もりが届くということも、新電力から多数報告されています。

パワーシフト・キャンペーンでは年に2回程度、再エネ供給を目指す新電力との意見交換を実施していますが、再エネ紹介している新電力も例外ではありません。いまだに厳しい状況が続いていますので、少し見てみましょう。

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1)再エネ新電力の苦労:再エネのアピールだけで売るのはなかなか難しい

意見交換のなかで再エネ新電力のみなさんが口々に言うのは、広く一般に対して、再エネのアピールだけで販売することは難しいということです。

生協系の電力会社であっても、当初の目標より契約が下回ったり、価格重視のプランと二種類がある場合には再エネプランの契約が予想より伸びていないなどの難しさがあると言います。配達を担当するスタッフは通常でもお知らせする情報が多い中、複雑な電力契約について丁寧に説明することに少しハードルがあるとのお話しも聞きました。

地域のガス会社等もやはり、再エネに関心を持つ消費者に出会うのは容易ではないようです。例えば個別訪問やイベント開催をしても、それだけでは関心を持つ人は少数といいます。

そのためパワーシフト・キャンペーンでは、運営団体や賛同団体の周辺に環境やエネルギー問題に関心のある消費者や市民が少なからずいるので、そのような関心のある人たちに情報共有し、具体的な行動にどうつなげることができるか、試行錯誤しています。

2)選択肢は増えたものの、情報は減った

2016年の小売全面自由化開始当初は、多くの新聞、テレビ、雑誌などで特集が組まれ、その中で再エネ新電力を選ぶ可能性についても触れられました。

しかし当初は、再エネ新電力を選びたくても、実際に申し込みできるところは少数しかなく、「少し待ってから」もしくはとりあえず「再エネでなくても別の新電力に」という状況でした。

2016年度の後半から2017年度にかけてようやく、各地の生協や各地の再エネを重視する新電力が実際に販売を開始し、現在ようやく東電管内や関電管内、九電管内などを中心に、複数の選択肢がでてきたところです。(中国電力管内や北陸電力管内では、もともとの電気代が安価だったことがあり新電力の進出はまだまだ遅れています。)

一方で、電力切り替えに関する情報はだいぶ少なくなってしまっています。

「とりあえず様子を見ていた」
「再エネ新電力がもう少し出てくるのを待っていた」
「忙しくてそのままになってしまっていた」
という方も多いのではないでしょうか(*2)?

3)大手電力の巻き返し

冒頭に書いたように、高圧分野や大口顧客に対する大手電力の巻き返しに加え、低圧分野でも巻き返しが起こってきています。例えば関西電力は、原発の再稼働を理由に20178月、さらに2018年の夏にも再値下げをすると発表しています。このような値下げは「原発の電気は安い」と錯覚させるためのパフォーマンスであると考えられますが、特に小規模の再エネを重視する新電力が追従できるものではなく、相対的に高く見えることでさらに状況が厳しくなっています。

東京電力や東北電力は、「アクアエナジー100(東京電力)」など水力発電の電気を中心とした「クリーンな」プランを打ち出したり、別途電力小売の子会社を設立したりしています。そうしたところへの切り替えは、結局は大手電力をささえるのと本質的に変わりません。パワーシフト・キャンペーンではそのため、大手電力会社の水力プランや子会社は紹介していません。

4)再エネ調達の困難

再エネ100%を供給する電力会社はあるのか、ということはよく聞かれます。確かにいくつかの新電力では、「再エネ100%」のプランを打ち出しています。その多くは、グリーン電力証書やJクレジット、非化石価値取引証書などを使って「再エネ100%」としているものです。

生協系の電力会社などは、自社で調達するFIT電気を高い割合で調達しているところも多数あります。

一方で、地域のLPガス会社などで、再エネやFIT電気の割合が現状ではまだ必ずしも高くないところもあります。こうした会社は、自社開発や自社の顧客などのつながりで地域の太陽光発電の電気を調達したりしていますが、やはり量でいうとまだまだ小さく、今後の開発も容易ではありません。

都市部ではそもそも太陽光発電などの立地に限りがありますし、小水力発電等の開発には、場所選定から送電線への接続に至るまで、手続きや調整に多くの時間と費用がかかります。

「再エネ供給を目指す電力会社」といっても、どのような形でそこに向かっていくかは各社それぞれです。各社の特徴や理念を見て、ぜひ応援したい電力会社を選んでいただけたら幸いです。

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このように、小売り全面自由化から2年経った現在も、再エネ供給を目指す新電力が多くの顧客を得て安定していくためには、市民や消費者、理解ある企業や事業所の後押しがまだまだ必要です。

その後押しとは、実際の切り替えと、口コミなどによる情報普及です。

 今からでも遅くありません。
まだの方はこれを機にぜひ、電力切り替えをご検討ください。

http://power-shift.org/choice/

そして、周りのかたにもお伝えしてみてください。小さな規模でも、勉強会やセミナーの開催、環境イベントなどでの情報共有も有効です。その際のチラシや電力会社一覧などのツールは、パワーシフトのウェブサイトからダウンロードしていただくこともできますし、郵送などもしていますので、ぜひお気軽に事務局までお問合せください。

http://power-shift.org/

2018年度はさらに、自治体系の新電力や生協系電力、地域に根差した電力会社など、まだまだ紹介候補の電力会社があります。パワーシフトとしても引き続き注目し、紹介を予定しています。
エネルギー政策への働きかけとともに、市民・消費者としてできること。
ぜひ一緒に広げていきましょう!  (吉田 明子)


*1
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(第8回)
資料3-1「電力小売全面自由化の進捗状況」

*2 パワーシフトで20179月に実施したアンケート
「電力自由化から1年半『おうちの電気、もう切り替えた?』アンケート結果」

http://power-shift.org/survey_171114/

 

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