多国籍企業と人権に関する条約、「交渉段階」へ

開発と人権2024.7.24

先月、国連人権委員会で多国籍企業と人権に関する条約の第三回会合が開催されました。
その結果について、FoEインターナショナルも参加する「グローバルキャンペーン」による声明が発表されています。

プレスリリース
多国籍企業と人権に関する条約、「交渉段階」へ (原文はこちら

ジュネーブ、2017年11月1日 ― グローバルキャンペーン(注1)は、今回の会議が、多国籍企業と人権に関する条約作成について、アメリカとEUからの抵抗があったものの、重大な交渉に向けて大きく動いた成功の1週間だったと歓迎した。

2017年10月23日から27日までの国連の政府間ワーキンググループ(注2)の第3回会議の間、100以上の国と、200以上の社会運動や労働組合、市民社会団体の代表者らが、ジュネーブの国連本部に集まった。20以上の国やEU議会の議員(注3)、そして700以上の市民社会団体が、この交渉への強い支援の姿勢を示した。

多国籍企業と人権に関する条約の作成を課された国連のワーキンググループは、10月27日に第3回の会議を終える予定だった。その日、「この条約は、成立に反対した国を拘束しないものとする」という2014年の決議26/9への反対票を投じ、3年間プロセスに参加してこなかったアメリカ合衆国からの代表が、予想外にも重要な会合に参加し、ワーキンググループはこのプロセスを進めるうえで国連人権理事会から新しい委託を得る必要があるだろうと提言した。しかし、人権理事会の事務局は、ワーキンググループに新しい決議は必要なく、条約が交渉に入るまで作業を進めていく、ということを確認した。

ワーキンググループの議長報告者、エクアドル政府常駐国連代表・ギローム・ロング大使の最終勧告では、2018年に開かれる第4回ワーキンググループに向けた交渉プロセスのロードマップと、その先の会議について確認された。

報告書の草案と結論は全会一致で承認され、最終的な承認を得るために2018年3月に国連人権理事会へ提出される予定だ。さらに、エクアドルがこの第3回会議で提案した条約にむけたエレメント・ペーパーは2月末まで更なるコメントを受けつけた状態にし、その時までに、2015年と2016年の会議の成果も踏まえて、2018年の第4回ワーキンググループにむけた条約の草案を発展させるための基礎を作ることで合意した。

「これは、条約作成にむけたプロセスを支持するものたちにとって一つの勝利である。特にEUなど、いくつかのグループからの妨害に打ち勝つために、社会運動やNGO、多国籍企業の人権侵害の被害を受けたコミュニティからの政治的圧力は必要不可欠であった。」と、ビア・カンペシーナのリン・デービスは述べた。

トランスナショナル・インスティチュートの研究者ゴンザロ・ベロンは、「多国籍企業での人権侵害を防ぐために昨今とられている対策は、十分なものではない。多国籍企業が、幅広い投資者の保護メカニズムや国際法の抜け穴から恩恵を受けている一方で、多国籍企業の活動によって生命や生計手段、土地を奪われた人々は、しばしば、繰り返し正義を否定されている。」と述べている。

また、FoEインターナショナルを代表して、カメルーン出身のアポラン・コアーニュ・ズーペは、次のように述べている。「企業の自主規制は不十分だ。ホンジュラスのベルタ・カセレスをはじめとして今週国連で提起された多くの他の事件において、多国籍企業の行為に対し人権保護を訴える者が殺されている。法的拘束力のある条約にむけたこのプロセスは、緊急に必要とされている。これは、多国籍企業の活動によって被害を受けたコミュニティが、政府や国連に訴えているメッセージである。」

最近の3つの会議の間に示されたように、グローバルキャンペーンは、被害を受けたコミュニティや社会運動の経験に基づいた提案をもって、このプロセスへ貢献するよう全力を尽くしている。ワールドマーチオブウーマン・フィリピンの、マリー・アン・マナハンは、「グローバルキャンペーンが示した多国籍企業とそのサプライチェーンの人権に関する条約への提案(注4)は、条約草案にむけた国家間の交渉を進めるうえで非常に重要な文章だ。」とコメントした。

注釈
(注1) このプレスリリースは、人々の主権を主張し、企業の権力を打ち壊すこと、そして企業が刑罰を免れている状態を止めるためのグローバルキャンペーンによるものである。このグローバルキャンペーンは、200以上の社会運動と、特にアフリカやアジア、ラテンアメリカでの土地収奪・鉱山採掘・労働搾取や環境破壊に抵抗し、影響を受けたコミュニティのネットワークである。
> ウェブサイト

(注2)多国籍企業や他の企業と人権に関する自由政府間ワーキンググループ(OEIGWG)は、2014年6月の人権理事会によって承認された決議26/9の結果として生まれたものである。
>国連人権高等弁務官事務所の関連ページ

(注3)多国籍企業と人権に関する国連の条約締結にむけた議会間でのイニシアチブの署名国リストはこちら < http://bindingtreaty.org/ >

(注4) こちらのサイトから提案書にアクセスできます
連絡先
Sol Trumbo Vila(英語、スペイン語)
soltrumbovila@tni.org
+31 610172065

 

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