バイオ燃料と森林 輸入バイオ燃料の問題
「エコ燃料」は「エゴ燃料」?|輸入バイオ燃料の問題|適切な利用に向けて
問題① 森林や自然生態系ヘの圧力
現在、海外からの輸入バイオ燃料として期待されているのは、東南アジアのパーム油を原料としたBDFと、ブラジルのサトウキビを原料とするエタノールです。いずれにしても、利用していくには様々な懸念があります。
パーム油のプランテーション(農園)開発は、熱帯林減少の最大の要因となっています。世界最大のパーム油生産地であるインドネシアやマレーシアでは、低地林・湿地林の大部分が既に伐採されました。農園造成に伴う違法な火入れによる森林火災は、毎年深刻な大気汚染被害を引き起こしています。さらに、森林の皆伐と泥炭湿地林の乾燥化、森林火災は、蓄積されていた膨大な炭素が大気中に放出されることになります。インドネシアの泥炭湿地からの温室効果ガスの排出は年間20億トンCO2(6億トンは泥炭の分解、14億トンは火災による)となり、これを含めると同国は米国、中国に続く世界第3位のCO2排出国になると報告されています。
ブラジルのサトウキビについてはアマゾン熱帯林を直接開発するようなことにはなっていませんが、アマゾンの南に広がる「セラード」と呼ばれる貴重な草原生態系を有する地帯での農園開発が加速しています。農園開発のためにセラードは「劣化した土地」と区分され、すでにその半分が消失しています。また、サトウキビ生産拡大によるセラード地域への土地需要の増大は、同時に生産が拡大している大豆の栽培地を北上させ、アマゾン森林の大規模な開発と大豆畑への転換を一層押し進めることも懸念されます 。
問題② 食料・土地需要との競合
バイオガソリンで使用されているバイオエタノールはフランスの小麦を原料としたものとされています。アメリカではとうもろこし、ブラジルではサトウキビ、東南アジアではパーム油、いずれも食料や家畜飼料として使用されるものです。世界的に増大する食糧需要との競合が懸念されてきます。
途上国の貧しい家庭では、家計の大部分を食費が占めています。世界的な穀物価格の高騰はそれら家庭の貧困や飢餓を一層悪化させかねません。後発途上国の多くはすでに主要穀物を米国などからの輸入に頼っている状態で、食料価格の上昇に対して非常に弱い立場にあります。実際、米国でのバイオエタノールブームによりトウモロコシを始め穀物の価格は軒並み急騰し、世界各地で貧しい貧困層の不満がデモとなり噴出しました。
一方、バイオ燃料作物の栽培は途上国の農民の新たな収入源になるとの期待もあります。しかし、現実には大企業による燃料作物の生産流通の寡占が進み、土地の集約化と土地価格の上昇を生じ、小規模農家は駆逐される恐れがあります。昨年FoE Japanがインドネシアで行った調査では、パーム農園開発のためと住民から林地をだまし取り、不当に森林を開発しているケースも見られました。