バイオ燃料と森林 「エコ燃料」は「エゴ燃料」?
「エコ燃料」は「エゴ燃料」?|輸入バイオ燃料の問題|適切な利用に向けて
「CO2を排出しない夢の燃料」「バイオ燃料で農業活性化」などと言われ、バイオ燃料が国内外でブームになっています。しかし、その生産の本格化が熱帯雨林の破壊につながり、食料との競合を起こすなど、様々な懸念も伝えられています。バイオ燃料は果たしてポスト化石燃料時代の救世主なのでしょうか?
「エコ燃料」導入で排出削減達成を
地球温暖化対策のため、日本政府が2005年4月に策定した「京都議定書目標達成計画」の中で、経済産業省が掲げたのが2010年にバイオ燃料を50万kl(原油換算:自動車輸送燃料全体の0.6%分)導入するとの目標です。
この目標に基づき、環境省も2005年末から「エコ燃料利用推進会議」を設置。バイオ燃料を「エコ燃料」と称して利用推進を図る検討を半年間かけて行いました。
その結論は、2010年に目標とする50万klのバイオ燃料のうち、9割以上は海外からの輸入に依存せざるを得ないというものです。さらに10年後の2020年には4倍の計200万kl、2030年には8倍の計400万klに拡大しようという、鼻息の荒い目標を掲げていますが、国産の供給力を考えれば、さらなる輸入拡大となるのは明らかです。
温暖化対策としての効果
なぜバイオ燃料は「環境に優しい」のでしょうか?
バイオガソリンを販売する石油業界は次のように説明しています。
“「京都議定書」では、植物を原料とするバイオ燃料を燃焼させた場合には、次の世代の植物が光合成によってそれを吸収して育つため、大気中の二酸化炭素の総量を増加させないという考え方(カーボンニュートラル効果)により、バイオ燃料の燃焼によって排出された二酸化炭素を温室効果ガス排出量として計上しないことにしています”
非常にまわりくどい説明ですが、実際にはバイオ燃料といえども原料生産や製造、輸送時などに、石油が使用されて CO2が排出されています。ガソリンや軽油も同様に精製や輸送時にCO2を排出しますが、これらが日本国内で精製され、そこでの排出は議定書で計上されます。
一方バイオ燃料は、主に生産国で製造されると目されていますが、生産国のブラジルや東南アジアは京都議定書で削減義務がありませんので、現地での排出は計上されず、抜け穴となっています。この他にも、農園の造成で大量の温室効果ガスの排出が伴うこともありますが、これも計算には含まれません。
人間に都合の良い論理だけを並べて「地球に優しい」と言ってみても、実際の排出を大幅に減らさない限り地球温暖化を抑えることはできません。