※このイベントは終了しました。議事結果概要はページの一番下をご覧下さい。
1、趣旨
現在、世界的に生物多様性の損失が懸念されています。このため、1992年に生物多様性条約が合意され、各国でその保全の取組みがされていますが、十分な効果を上げていません。
このため、2006年の生物多様生物条約締約国会議(COP8)の決議があるように、企業による生物多様性保全への貢献が期待されています。
このような事情を背景として、FoE Japanでは、平成20年度の環境省請負事業として、「企業の生物多様性に関する活動の評価基準作成に関するフィージビリティー調査」を実施しました。この調査では、市民やNGOなどの視点から企業の生物多様性保全活動を評価する基準案を提案しました。
この基準案を審議するために設置した「検討委員会」では、このような企業の自主的取組みのみならず、国や地方自治体の政策を転換すべきであり、そのための政策提言を検討すべきだとの意見が多く出されました。
そこで、今般FoE Japanは、地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)との協働により、生物多様性保全のための政策提言を目的として「生物多様性保全に関する政策研究会」を設置することと致しました。
2、目標
この研究会での提言は、国内法・国際法の改正又は新規立法によって実現を図ることを目標としています。また、2010年に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けて国際的に発信したいと考えています。
3、政策研究会 第1回 意見交換会の開催予定
【日時】 平成21年12月17日(木) 18:30〜20:30
【場所】 国連大学 1階 地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)・ライブラリースペース
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F
【URL】 https://www.geic.or.jp/geic/intro/access.html#geic
【議題】 (案)
1.生物多様性の保全
(1)政策提言案の概要説明 (発表者:宮崎正浩):20分
(2)意見交換 40分
2.生物多様性の構成要素の持続可能な利用等
(1)政策提言案の概要説明 (発表者:籾井まり):20分
(2)意見交換 40分
【資料】 https://www.foejapan.org/forest/biodiversity/pdf/091211_opini_ex.pdf
(※右クリックから「対象をファイルに保存」でダウンロードして下さい。)
【委員】 下表参照(※予定)
【協力】 跡見学園女子大学
【参加申込】 お申込み、参加費等は不要ですので、直接会場までお越し下さいませ。 (※先着20名)
※終了後に懇親会を開催します。(希望者のみ)オブザーバーの方も気兼ねなくご参加下さい。
3、研究会委員一覧 (※予定)
足立 直樹 |
株式会社レスポンスアビリティ
代表取締役 |
市田 則孝 |
バードライフ・アジア 会長 |
上田 恵介 |
立教大学 理学部生命理学科 教授 |
大沼 あゆみ |
慶應義塾大学 経済学部 教授 |
岡本 享二 |
ブレーメン・コンサルティング 株式会社 代表取締役社長 |
亀井 一行 |
アスクル 株式会社 環境マネジメント、品質マネジメント
統括部長 |
河野 磨美子 |
財団法人 地球環境戦略研究機関 エコアクション21中央事務局 |
岸 和幸 |
株式会社 リコー 社会環境本部 環境コミュニケーション推進室 |
木戸 一成 |
積水ハウス株式会社 環境推進部 |
坂本 有希 |
地球・人間環境フォーラム 企画調査部次長 |
佐藤 健一 |
ソーシャル サポーター (元 富士ゼロックスCSR部) |
志村 智子 |
日本自然保護協会 管理部長 |
鈴木 勝男 |
FoE Japan 理事 |
関 健志 |
財団法人 日本生態系協会 事務局長 |
田中 章 |
東京都市大学 環境情報学部 准教授 |
谷口 正次 |
国連大学 ゼロエミッションフォーラム 理事 |
代島 裕世 |
サラヤ 株式会社 営業統括本部広告宣伝部長兼コンシューマー営業部マーケティング担当部長 |
泊 みゆき |
バイオマス産業社会ネットワーク共同代表 |
永石 文明 |
特定非営利活動法人 ヘリテイジ・トラスト 代表理事 |
橋本 務太 |
WWF Japan 森林担当 |
畠山 武道 |
上智大学 地球環境学研究科 教授 |
林 希一郎 |
名古屋大学 エコトピア科学研究所 教授 |
服部 徹 |
生物多様性条約市民ネットワーク (NPO法人 サステナブル・ソリューションズ)
|
日比 保史 |
コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 代表
|
宮崎 正浩 |
FoE Japan 客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部教授 |
籾井 まり |
FoE Japan 客員研究員、ディープグリーンコンサルティング代表 |
山田 順之 |
鹿島建設(株)環境本部地球環境室 |
(計28名)
4、議事結果概要
1.生物多様性の保全(ノーネットロス政策について)
(1)政策提言案の概要説明(発表者:宮崎正浩)
(2)コメント
- ノーネットロスをどのように定量的に評価するのかについて、HEPなどを想定されているのであろうが、画一的な適用するのではなく、国内でのコンセンサス形成が必要である。日本国内では国が行う公共事業は大規模な開発の時代ではなくなっており、面積で考えると住宅開発が大きいのではないか。人口が減少するので都市が拡大するということではない。ターゲットとすべき分野は変わっていくのではないか。戦略的アセスメントは、大規模な公共事業のほとんどは実施しているし、ガイドラインだからやらないということはない。また、都市では、市街化調整区域の運用が開発の圧力に事実上抗しきれていなかった点もあるが、今後は国がコンパクトシティの推進に実効性が高まれば都市も縮小傾向になり、貢献していけるのではないかと考えている。
- 全体としてはバランスがとれた総合的な観点からの提言だと考える。国内の生物多様性の保護に主眼を置いているのか、世界やアジアの生物多様性保全のために国内で対応するのか、どちらに重点を置くかが明らかではない。ノーネットロスを強調する場合、代償への取組の強化となるが、生態系の専門家でもそれだけを実施してよいのか、ということになる。回避、最小化を優先すべきであり、その後に代償を行うという順番は崩してはいけない。代償措置を強調すると、逆に免罪符のためかと反対が起きる。その意味で、戦略的アセスメントは回避、低減のための効果的な仕組みであるが、SEAをやると何が進むかを明らかにすることが重要ではないか。いろいろな政策の提言をリンクさせるような絵があるとよい。
- 提言2では、IUCNの基準によって、都道府県が指定している生物も考慮するべきである。また、ノーネットロスでは、絶滅危惧種に焦点があたりがちであるが、地域社会や地域個体群の保護が重要である。
- 日本に適したノーネットロス政策の検討となるが、研究レベルで日本にとってのノーネットロスを取り組むのは重要である。市民社会でもノーネットロスを共有することが重要である。生態系の専門家によると、生物多様性の損失を物理的にゼロとすることは無理であると言われている。日本は米国や欧州とは違うということを研究者レベルで提言してもらい、そのたたき台があって、その後で国の政策に結びつきていく可能性があるのではないか。
- 生物多様性のネットロスというのは、物理的なロスのことではなく、生態系の機能(水循環の機能など)であると理解している。欧米では、例えば湿地のノーネットロスでは、以前に湿地であった土地が農地となったところを元の湿地に戻す例が多い。
- 農業政策との関係をどうするのか、耕作放棄地や里山はどうするのかを検討すべき。
- 環境農業の要素が入っていない。環境農業では、農地自体も湿地と同程度の生物多様性がある。湿地を環境農業に変えることも考えられる。
- 自然再生では、うなぎを指標としたところ、うなぎの養殖のようになった事例がある。また、中国の植林では、被植率は増えても、質は低下している。日本でのノーネットロスでは、量だけでなく、質が問われる。基本的には、開発をしないこと、開発してものを自然再生することが真の意味でノーネットロスの実現に近づくのではないか。
- 市街化区域にある里山への課税問題など税制上の問題を含めて、すべての分野で、生物多様性の視点から見直すべきである。
- 都市と地方との関連を明らかにして、都市内での生物多様性保全の意識を高め、生物多様性の保全が収入に結びつき、最終的には都市住民が生物多様性保全の費用を支払うようにすべきではないか。これを意識ですすめるか、制度で進めるかが検討課題であろう。
- ノーネットロスの評価手法は確かに検討課題ではあるが、現状のままでは生物の絶滅が進行するので、社会の選択としてノーネットロス政策の導入を検討すべきではないか。
- ノーネットロス政策ありきではなく、日本的なノーネットロス政策の検討を進めるべきではないか。
2.生物多様性の構成要素の持続可能な利用等
(1)政策提言案の概要説明(発表者:籾井まり):
(2)コメント
- バイオ燃料については、経済産業省での検討会では、生産国(ブラジルなど)の国内法遵守の確認をすることになった。生物多様性についての評価方法は、今後の検討課題である。
- 森林については条約がないので、日本として条約の推進に積極的な役割を果たす、ということをいれられないか。違法伐採材や希少種は、買った人がその権利を放棄すると罰則がないので、これに罰則を課すことにより、現実的に貿易が続かないようなことが盛り込めないか。17ページの政策提言1のDでは、締約国の保全政策の例が保護区の指定等の保護対象に限定されているので、生物多様性全体を保護するようなことが入れられないか。企業の自主的取組みに関する提言のEは、企業だけでなく、農家や漁民も対象となるので、これらの持続的発展の支援とするとよいのではないか。
- 提言は網羅されているので良いと思う。一般の人にわかりやすくするため、プレーヤーごとに提言することを書き分けたらどうか。政府の役割は国内法の整備ということになろうが、条約やWTOやOECDでの貿易と環境に関する議論や違法伐採であればG8の議論がされているので、それらと整合させて日本がどのように係っていくのか、その中心的な話は盛りこんではどうか。違法伐採対策のEUのような取組みは、バイラテラルな協定なので、インドネシアやマレーシアなどの地域戦略が必要ではないか。違法伐採には貧困が背景にあるので、貧困対策は政府やNGOだけでなく、企業の役割も重要であり、BOPビジネスも有効な取組であるので、これらを取り込んでいき、貧困削減とリンクすると、アクティブな感じになるのではないか。
- 認証には、@認証制度が多く、中には問題のあるものもある。A運用する企業が認証材を1%使ってもあたかも100%使っていると主張することがある、B人々が認証品を買えばよいと思って他のこと(貧困問題など)を考えなくなる、という問題がある。
- 合法的に生物多様性が破壊されていることがままあるため、合法材を買っても生物多様性を破壊している場合がある。このように合法材でも抜け道があるので、生物多様性を配慮していることを確認することが必要である。
- CIの日比さんの意見に関連するが、提言では資源の調達者としての視点だけでなく、開発者として資金を投与する又は開発に参加する企業や政府などの上流の視点を入れて、JICAのガイドラインを守るなど網がかかる提言をしてはどうか。
- 下流(生活者)のことも大事だ。日本の生活者は、生物多様性を食いつくそうと思っている人はいないであろう。上流から下流まで、情報が伝わるようにすることが重要である。しかし、生活者は、コストパフォーマンスを重視するので、生物多様性の価値を生活者に理解してもらい、生活者が自主的に支払うようにすることが大事である。
- 生活者が排出する薬品や窒素などが河川や干潟などの生物多様性へ大きな影響を与えているので、生活者の協力が必要であり、また、社会の仕組を変えていく必要がある。これらのことも提言に入れられないか。
- 国内の話と、国外の話は大きく分けて整理すべき。国内は人口が減少し、農地が余っているなかで取るべき対策と、海外で負荷を与えていることに対する対策は分けて考えるべき。国内の対策の中には思いつきの提言があるのではないか。例えば、透水性の道路は薄くなり下から草が生えて路盤が傷みやすく、生物多様性によい訳がない。
- まず実行可能なプロセス作りにもう少し関心を向けることができないか。例えば、パーム油農園では、現地では主要産業となっており、それを抑えるような話を言っても無理がある。将来像をまず決めて、今年は何をするか、という実行可能な姿を描くことが必要であり、日本人が現地に入ってどういう手順で進めるかを助言するようなプロセス作りが必要ではないか。
- パーム油は大きな問題であるが、貴重な森林を切って植えていくことを避けるべきであり、ノーネットロスというよりもミティゲーションの努力が必要である。日本の消費者ができることとしては、例えばRSPOで2005年以降の森林を破壊したものは認証しないとしており、認証品を買うことが一つのステップになる。提言では、木材以外の信頼できる認証制度などを書いたらどうか。また、消費者の意識が重要である。その中では補助金というのもあるかもしれない。
3.全体について
- 議論で上がってきたすべてのことを挙げると総花的なものになると、何を提言したいかがわからなくなる。光物として訴えることを明らかにすべきではないか。
- 生物多様性に関する資金メカニズムなどの国際的な議論は大雑把であり、どうするかが明確でない。日本人は比較的緻密な議論をするのが得意であるから、それを生かして、さらにフォーカスして検討すれば説得力のある政策提言ができるのではないか。
4.まとめ(議長)
- とりまとめの段階では、総花的なものとならないよう、具体的な提言となるものに絞っていくこととしたい。このため、提言内容の記述が不足しているものについては追加で意見を事務局に出していただき、提言案をまとめてしていきたい。
- 次回は、2010年1月21日に、上智大学の畠山先生をお招きして、国内法の視点からの問題点と提言案に対する意見をいただく予定である。また、この政策提言をどのように実現していくかについても意見交換する予定。
- 2010年1月12日は、国連大学とGEIC共催で生物多様性に関する円卓会議が開催される、国際的な視点からのノーネットロス政策や原料調達における生物多様性配慮などが議論される。
- 本研究会としては、3月19日に最終のシンポジウムを開催する予定。場所は東大駒場で、日本生態学会の大会と同時開催で行う。その結果完成する政策提言は、日英版を作成し、国内外に発信したい。
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