【プレスリリース】旧・日系バナナ事業社スミフルは 行政指導に従い、速やかに労働者の復職の実現を!

日本に輸入されるバナナの一大拠点であるフィリピン・ミンダナオ島コンポステラ・バレー州の日系企業スミフルフィリピン(以下、スミフル(※))が経営する農園・梱包工場で、正規雇用や団体交渉権等を求めている労働者への深刻な人権侵害(殺傷を含む銃撃、放火等を含む)が相次いで起きています。
この件に関し、8月7日(日本バナナ輸入組合が制定した #バナナの日 )、エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会との連名で、スミフル・グループの日本支社であるスミフルジャパン社ならびにイオングループを含むスミフル社の大手取引先へ要請書を送付しました。

■本件に関する問題は写真と合わせ、こちらの緊急報告をご覧下さい
■また、本件の問題の概要や詳細な経緯等は、エシカルバナナキャンペーン・特設ウェブサイトをご覧下さい。

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2019年8月7日

報道関係者 各位
プレスリリース

旧・日系バナナ事業社スミフルは 行政指導に従い、速やかに労働者の復職の実現を!

エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会
国際環境NGO FoE Japan

日本に輸入されるバナナの一大拠点であるフィリピン・ミンダナオ島コンポステラ・バレー州の旧・日系企業スミフルフィリピン(以下、スミフル)社が経営する農園・梱包工場で、正規雇用や団体交渉権等を求めてストライキに参加した労働組合員が一斉に解雇されるという事態が発生しました。それに対して、フィリピン労働雇用省は解雇が不当解雇にあたると控訴を認めない最終判断を5月25日に行ない、その旨を当該組合及び経営層に通達しました。しかし、通達後も不当解雇された組合員らは復職されなかったため、7月22日付で、執行令状にて行政指導を行ない、組合員らの速やかな復職(担当者の受領日から10営業日以内)を命じました。

ところがスミフル側はその行政指導をも拒み、労働雇用省に対して行政指導の破棄を求める要請書を7月31日付で提出していることが昨日発覚しました。スミフル社は同要請書で、そもそも認められない控訴を根拠に、行政指導の執行拒否と指導そのものの破棄が求めています。そのことによって、8月6日、組合員は復職を求め、国家労使関係委員会の担当者とともにスミフルに復職の意思を伝えに行きましたが、スミフル側のこの要請をもって、復職は今も実現せぬままとなっています。

現在はスミフル社要請に対する労働雇用省の返答を待っている状況にありますが、要請書に書かれているスミフル社側の主張については、すでに労働雇用省が再三の検証を行なっており、解雇が不当解雇であるとの結論はゆるぎないものです。現在のスミフル社の主張は、不必要に労働争議を引き延ばし、経済的に優位な立場にある会社側にとって事態が有利に働くことを期待しているものにほかなりません。

なお、そもそもスミフル社と当該組合員らが長期にわたる争議に至った背景にはスミフル社がフィリピンの最高裁判決を無視し、組合員の待遇改善と団体交渉を実現しなかったことに起因しています。

スミフル社が速やかに行政指導に従い、組合員の復職を実現することを強く求めます。
さらに、復職を求めて8月6日に出勤した約500名に対して、スミフル社は警察の出動を伴う監視行動に出ました。これは労働権、結社の自由と表現の自由を侵害する重大な人権侵害であると言わざるを得ません。

組合員の安全と自由な活動を保障することをスミフル社に強く求めます。

※本リリース署名団体らは連名で、本日8月7日、日本バナナ輸入組合が制定する「バナナの日」にこれら要請事項をスミフル・グループ日本支社ならびにイオングループを含むスミフル社の大手取引先へ送付しました。

経緯

【2008年】スミフル社の前身Fresh Banana Agricultural Corporation(FBAC)における労働慣習が「偽装請負」にあたるとし、労働者らがFBAC社の「請負事業者」ではなくFBAC社での直接雇用と団体交渉権を求めて組合設立手続きを行なうも会社側は組合の設立を拒否。フィリピン労働雇用省は組合員らの主張を認めて組合を正規の組合と認めるもののFBAC社を吸収合併しスミフルフィリピンとなった新法人は異議申し立てを行なう

【2010年】労働雇用省の仲裁・調停人は組合員らの主張を認め、会社による異議申し立てを棄却

【2012年】控訴審は組合員の主張および労働雇用省の判断を支持し、会社側による控訴を棄却

【2017年6月7日】フィリピン最高裁は控訴審を支持し、会社側による控訴を棄却、組合員らの正規雇用化も義務付ける

【2018年9月】最高裁判決後も一向に組合員らの正規雇用化も団体交渉も実現しないことを受けて組合はストライキを満場一致で決定

【2018年10月】ストライキを決行するも、数日後にはスト破りのチンピラが組合員らに殴る・蹴るなどの暴行を働く。会社側はストライキへの参加を事由として当該組合員ら749名を一斉解雇

【2019年1月30日】労働雇用省の仲裁・調停人が一斉解雇を不当解雇とする報告書を作成

【2019年3月25日】労働雇用省国家労使関係委員会は委員会決議として1月30日の仲裁・調停人による調査の内容を追認する

【2019年5月25日】労働省国家労使関係委員会は3月25日付委員会決議に対する申し立てを検討した結果、組合員らの解雇が不当であったことを控訴不能な最終決定とする

【2019年7月22日】フィリピン労働雇用省は5月25日判断を受けてもなお当該組合員の復職が実現しないことを受けて再雇用を命じる行政命令を発令

【2019年7月31日】スミフル社は本来認められないはずの控訴中であることを主張し、行政命令に従うことを拒否

【2019年8月6日】不当解雇状態にあった約500名が再雇用を求めて、出勤するも復職されず。スミフル社は出勤を求める組合員に対して警察も含んだ監視行動を実施。組合代表者との会合にてスミフル社は7月31日付で要請書を送付していることを組合に開示し、要請書に対する労働雇用省判断が出るまでの最大15営業日の間は組合員の復職を認めないものの、賃金相当額の支払いを保障

※この間にスト参加の労働者らのもとを、しばしば武装した男たちが訪問し組合活動を辞めるように圧力かけてくる事例が相次いでいる

本件に関するお問合せ先

特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター(PARC) 担当:田中
(TEL:03-5209-3450、Fax:03-5209-3453、E-mail:office@parc-jp.org)

※スミフルとは
旧称「住商フルーツ」。本社はシンガポールのSumifru Singapore Pte Ltd。ただし、住友商事は2019年9月までに持ち株分すべてを売却することを表明。スミフルフィリピンはシンガポール本社の100%子会社。

 

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